とりあえず暇だから
ライラが去ってしまったので、雪菜の話はしばらく聞けそうにない。
あのバカ執事がした真実を聞いて、戸惑っているのは私だけでは無いらしい。
アップデートの中でも動ける鳩は、何かを考えているのか、沈黙したままだ。
部屋には、少しの間だけ静かな時間が流れた。
『……あのさ、ステラ様』
「何?」
その沈黙を最初に破ったのは、ポンボの方だ。
『思ってんけど、ラムドの好感度をMAXにしたのって、雪菜ってやつの贖罪やないやろか? 最後ライラ姉ちゃん、ステラ様に謝ってたし』
「うん、多分……。私、ずっと不思議だったの。どうしてラムド様だけ、最初から好感度MAXにしたのか、って。ライラは、攻略しやすいようにって言ってたけど、別にラウール様でも良かったわけだし」
それに、ゲームをクリアすればノーマルエンドでも構わないはず。
なのに、ライラはノーマルエンドにするのを嫌がってた様な気がする。
『それに、いくら贖罪でも雪菜をゲームマスターにする意味も不明やな。オレの生きてる世界が、二周目なんて言われてもよう分からんけど、二回目をする必要がどこにあるんや?』
「そう……よね、確かに」
雪菜が二周目をやりたいって言ったからだろうけど、違う世界の主人公に再度転生させる事も出来たはず。
だって、私にクリアしたら再度転生できる権利が与えられるって、あの時ライラはそう言ったんだから。
「それくらい雪菜さんって、ライラへの恨みが凄いのかもね」
『いやそうやなくて、天界が雪菜をゲームマスターにするか否か決めれるんやったら、やめた方がトラブル少ないやろ? オレやったら、ライラ姉ちゃんと恋愛で揉めたんなら、またトラブルにならんように雪菜の希望は呑まんけどなぁ』
「そりゃそうかもしれないけど、そこは雪菜さんに対してお詫びのつもりがあったんじゃない?」
『やとしたら、担当変えへん? ライラ姉ちゃん以外にも、サポート役おるやろ。もうこの際、ライラ姉ちゃんって天使やったんか、って言うツッコミやめるけど。天使って、他にもおらんの?』
「ポンボって、何でそんな頭キレるの?」
ただの鳩のくせに、と付け加えるのを忘れない。
ステラ様、鳩に何か恨みでもあるん? と言う、彼の疑問は軽く無視する。
ポンボの疑問は、確かに謎ではある。
けれど、キレキレの推理をする名探偵でもない、一般人の私には、分からないと思う事しか出来ない。
「とにかく、ライラが帰ってくるまで暇なのは確かね」
『ラムドに通信も出来ひんからか? そりゃ確かに暇やんな』
「ポンボまで……どうして私が、ラムド様の事好きだなんて皆思うの?」
『好きとか言うてへんし、逆に好きじゃない要素ってどこにあるん?』
「ポンボって、鳩のくせにムカつくわよね」
『鳩のくせに、って使いたいだけやろ!?』
けれど、本当に暇だ。
部屋で何をするってわけでもないし。
よく考えたら、この世界って娯楽が無い。
テレビも無いし、ネットも無いし。
私、今までよく耐えられたわよね。
元の世界だったら、ネットが無いなんて発狂してたかも。
携帯なんて使う暇が無いほど、この世界での毎日は刺激的って事なのかな。
とか考えている場合ではない。
とにかく、暇な今を何とかしなくては。
「……よし、出かけるわよ」
『え、ラムドもいないのに?』
「別にラムド様がいなくたって、関係ないでしょ。可愛い服とか沢山買いたいのよねー」
『沢山買いたいって、ステラ様お金持っとるんか?』
「……」
あれ?
そういえば、私ってお金持ってないような。
「多分、後でライラが払ってくれると思うわ。だから、ツケでいきましょう」
『ツケとか無いから。買わずに持って帰ったら、泥棒と一緒やからな』
「だったらどうするのよ」
『仕方ないから、散歩やな』
「……それしか無さそうね」
ため息をついて、とりあえず城から出る事にする。
思えば、ライラがいない外出って初めてかも。
『ステラ様、ちょいストップや』
「ポンボ?」
外に出て、しばらく歩いた所でポンボに呼び止められる。
いきなりだったので、驚いて思わず歩みを止める。
『ステラ様、あれを見てみい』
ポンボが羽を指す方向を見ると、兵士達が一列になって歩いている。数は結構多い。
さすが、ゲームの世界。
日本じゃ、帯刀してる兵士なんて見たことない。
「あれが、どうかした?」
『ステラ様、忘れたんか? 忘れんの早すぎやろ。オレら以外は、誰も動けないはずや』
「あ、そうね。ってか、それで行くと服屋さんだって
空いてないかも」
『兵士達が動いてるって事は、もしかしたら服屋もおるかもしらんけど、問題はそこやない。こんな沢山おるっちゅーのは、何か起きるって事や』
「何かって、何が?」
『……』
すると、急に黙るポンボ。
私から目を逸らして、どうやら言いにくい事らしい。
「ちょっと、早く言ってよ。気になるじゃない」
『それは……』
「……戦い、が起きるのですよステラ姫様」
突如、背後から声がかかった。
驚いて振り向くと、黒と白を基調としたゴスロリ少女が微笑んでいる。




