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もしかして、雪菜の目的は

「どうして、最初から言わなかったの」


「さっきも言いましたけど、私がお慕いしたのは雪菜様がステラ姫だった、一周目のラムド様です。今の姫様ラブなラムド様には、何の興味も示しません」


「な……っ! わ、私の事なんて、ラブでも何でも無いわよ、きっと! っていうか、私がそもそもラブじゃないから」


「……雪菜様くらい素直だったら、今のラムド様って多分報われたんでしょうね」


 と、ライラが苦笑する。


「何よ、私だって素直な性格よ、充分!」


『どこがやろ』


「ついに、ポンさんにまで突っ込まれてしまいましたね、姫様」


 凄い意地悪な笑いをするライラ。

 何よ、二人して。


「私の事は良いの! ライラは、一周目のラムド様の事が好きになってしまって、雪菜って子の恋愛イベントの邪魔をしてしまった。それで、どうなったの?」


「……ラムド様は、雪菜様との待ち合わせ場所で待っていましたが、彼女がなかなか現れない事でイベントが起きないまま、結局ノーマルエンドになってしまったんです」


「え、羨ましい」


『おい、このシリアスな場面で、ステラ様が今羨ましいって言うたで?』


「姫様の言葉は、いつもの事なんで気にしないで下さい」


 ポンボは、納得していない様子だ。

 ノーマルエンドって、そんなに良い事なんか? と、ぶつぶつ言っている。


「けど、雪菜って子もラウール様との話を切り上げて、ラムド様の所にすぐ戻っちゃえばイベント間に合ったんじゃない?」


「そこは、まぁ……私がラウール様に頼み込んで、ラムド様が諦めるまで雪菜様と話してもらったので」


「結構最低よね、あんた」


「……言い訳は、しません」


 そこまでして、雪菜の恋を邪魔したかったって事は、彼をそれほどまでに。


「ラムド様の事、本気で好きだったの?」


「雪菜様の事を、次第に好きになっていかれるラムド様を見ていて……あの方の純粋な気持ちに憧れました。私は、天使ですから……人間の恋愛というものは知らなかったけれど、これほどまでに楽しいものなのかと思えたんです。気付いたら、あの方に恋をしてしまった。雪菜様のサポート役でありながら、彼女の恋が実らなければ良いのに、と毎日願っている自分がいました」


「雪菜さんは、あんたの気持ちに気付いていたの?」


「ラムド様の恋愛イベントが始まらないので、私に理由を訊ねられて、私が説明しました。雪菜様は、当然怒って……」


 そりゃそうだろう。

 お邪魔キャラじゃなくて、ゲームのサポート役が攻略を妨げていたなんて、前代未聞だ。


「私は、雪菜様にお伝えしました。ラムド様との関係は、最後のイベントが起きなかったが為に、ノーマルエンドになる、と。しかし、他の攻略対象者との好感度も高いので、今からなら違う方とエンディングを迎えられます、と」


「ライラ……あんた、それ本気で言ってたの?」


『姉ちゃん……アホすぎる』


 二人で、ライラのセリフにドン引きした。

 だが、肝心の本人は何を言われているのか、まるで分かっていない様子だ。


 何故鳩に恋愛を理解出来るのかは置いといて、天使なんだから、人の気持ちなんて分かるわけがないか。

 だとしても、果たして雪菜がそんな考えに至っただろうか。

 もう少しで、ラムド様と結ばれる事になるはずだったのに、寸前で邪魔をされて。

 相思相愛だったのなら、尚更悔しいに決まっている。


 いや、それどころかライラに対して恨みの気持ちだってあったかもしれない。


「もしかして、雪菜さんが邪魔してるかもっていうのは……」


「確実に、その事を恨んでだと思います。雪菜様がラムド様と結ばれるイベントを、私が邪魔した件については、天界の長からかなりお叱りを受けまして。雪菜様に謝罪と、ある事をお伝えしたのです」


「ある事って?」


「再度ゲームをする権利です。今度は、ラムド様の好感度をMAXにして」


「それって……」


 今、私にライラが設定しているやつじゃない。


「しかし、雪菜様は断られました。その代わり、ゲームマスターをやらせて欲しいと。何故そうおっしゃったのかは分かりません。けれど、2周目の物語を姫様にやらせて、雪菜様が裏で暗躍するのが目的だとすれば……」


「彼女のやりたい事は、多分自分がやられたのと同じ様に、ゲームの邪魔をする事ってわけね」


『それは分かるんやけど、ステラ様って何やっけ……ノーマルエンドってやつを目指してんやろ? 邪魔しても意味ない様な気する』


「確かにそうね……」


 多分、ラムド様と私が相思相愛になりかけたら躊躇なく邪魔したいんだろうけど、肝心の主人公が誰にもなびかないので、雪菜も戸惑っているのかもしれないわね。


「雪菜様がどのように考えておられるのか、私には分かりません。姫様に接触してくる可能性もありますし、くれぐれもご注意下さい」


「分かったわよ。どう注意したら良いのか分からないけどね」


 ライラは、深々と一礼した。


「……ごめんなさい、姫様。本当に」


「何よ、気持ち悪いわね」


「いえ……とりあえず、私はアップデートのため天界に帰ります。また後で」


 と言い残して、彼女の姿は一瞬にして消えてしまった。

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