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ポンボに悩みを打ち明ける


 



 

 ラウール様の店で、ポンボを購入した翌日。


 朝自室のベッドで目覚めてから、私は一体何度ため息をついたんだろう。


 気分を変える為に、部屋にある巨大な窓まで歩いていき、外を眺める。

 

 ここの所雲一つ無い快晴で、適度に風もあり心地良い気候だ。

 日本と違って湿気も多くないし、海外ってこんな感じなのかもしれない。

 行った事ないけど。


 そういえば、この世界はゲームだけど四季はどうなってるんだろう。

 転生してから、真夏日とか真冬とかを経験していない。外に生えている木が、桜になる事も無い。

 いつ見ても、緑の葉っぱを付けている。


『ステラ様、何朝っぱらから黄昏れてるん。それより、ここ窮屈やから出してくれへん?』


「……あぁ、おはようポンボ。貴方の家が無いと困ると思って、急いでライラに言って作らせたんだけど、何か不便があった?」


『見ただけで分からんのやとしたら、ステラ様の目は節穴やと思うで? これ、明らかに犬小屋やん』


 ポンボが入っている家は、三角の赤い屋根が付いた小さな小屋で、中には鎖も設置されている。

 確かに、犬小屋と言われたらそうかもしれない。


『いや、どこからどう見ても犬小屋しかないから。そうかもしれない、とかじゃなくて見たら分かるから』


「うん、ごめんね。犬小屋だよなぁって知ってた。けど、ライラが頑張って作ってくれてたから、何だか突っ込みにくくて」


『やとしても、この鎖は何なん? これ、オレのどこに装着するつもりやったん?』


「鎖だし……犬小屋だし……首?」


『酷すぎるやろ! ストレスで、禿げるわ!』


「ほんとごめん! キャットタワー出来るまで、そこで我慢して」


『……ステラ様、ちょっとボケる事楽しんでるやろ?』


 ふふふ、バレたか。

 と、私が舌を出して笑うと、ポンボは呆れ顔だ。


『鎖で繋がれるよりは、かなりマシやけどな。まぁオレの事は、今はどうでも良いんやけど。それより、ステラ様何か心配ごとでもあるんか。鳩の胸で良かったら、貸すで?』


「鳩の胸……肉……じゅるり」


『なんで、じゅるり!? なんで、ヨダレ!?』


「ふふ、冗談よ。ポンボを食べたりしないわ」


 あまりからかってばかりもダメだなぁ、と反省する。

 私を想って本気で心配してくれてるのが分かるし、そんな子を失望させるのは良くないよね。


 むしろ、こういう時は相談した方が相手に不快を与えないと思う。


「……ちょっとさ、話聞いてもらって良い?」


『おうよ』


「私ね、詳しくは言えないけれどライラにある任務を言い渡されていて、それが特定の人達との好感度を上げないってやつなのよね。あ、好感度ってのは、私の事を好きになる度合いなんだけど」


『よう分からんけど、つまりその特定の人間が、ステラ様を好きにならんようにしたいわけか?』


「そうそう! さすが、ポンボ。あなたって、鳩のくせに頭良いのね」


『鳩のくせに、ってのは余計やけどな』


 と言いながらも、ポンボが照れたのが分かった。


『それで、その特定の人ってのは誰なん?』


「……何人いるかは分からないの。ただ、今のところ判明してるのは、ラムド様とラウール様と、私の弟」


『ラウール!?』


 ポンボは、盛大に噴き出した。

 まぁラウール様は、彼の知り合いだしね。

 この反応は、正常だけどあまりの衝撃発言に、レイに対するツッコミは忘れられている。


「そう、ラウール様。昨日、誕生日パーティーに誘われたでしょ? もし、パーティーでラウール様に気に入られてしまったら、絶対好感度が上がってしまうの。だから、どうやったら好感度を下げられるか、絶賛悩み中なわけ」


『ラウールはダンスに誘ってたんやし、ベタな展開やけどめっちゃ下手な踊りをして、会場をドン引きさせるとかしかないんちゃうん。それより、ラムド様って……ステラ様が愛してやまない電話の相手やん』


「あ、愛なんて絶対に無い!」


『いや、隠せて無いし。鳩でも分かるし。ステラ様が、ラムドの事を大好きなんは』


「ち、違うから。ラムド様とは、ただの友人だから」


『いつまで言えるんやろ、その友人ってワード。ってか、ラムドはともかく、ステラ様が兄ちゃんを好きになってしもうたら、どうなるんや?』


「その場合は、私の願いは無かった事にされてしまうの」


『ふーん。願いって?』


「まぁそれは秘密よ。秘密にした方が、ミステリアスなお姫様で素敵でしょ」


『なんや事情がありそうやし、あまり詮索はせんとくけどなぁ』


 ポンボの配慮に、私は感謝する。

 この世界が乙女ゲームで、私はステラ姫に転生していて。クリアのご褒美は、良い人生を約束された再転生だなんて、言っても分からないだろうしね。


『けど、それでいくと……もうステラ様の願いは無理なんちゃうか?』


「なんで?」


『なんでって……だって、ラウールはともかく、ラムドの兄ちゃんとは、既に相思相愛やん』


「だからっ! 相思相愛なんかじゃないってば。ラムド様は、本当にただの友人だし。私に対して好意を持ってくれてるけど……というか好感度MAXで、溺愛してくるんだけど。私の方は、まだ好きとか……あんまり分かってないから。今は、ラムド様の一方的な片思いってやつなの!」


『会うた事無いけどさ、ラムドってやつが滅茶苦茶可哀想に思うわ。そろそろ、ライラ姉ちゃんの突っ込みが飛んでくるはず……って、そういえば今日はまだ姉ちゃんの姿が無いな』


 言われてみればそうだ。

 いつもは、私のボケをすかさず拾うのに。

 今朝から、全く声を聞いてない。


『ライラ姉ちゃんって、ステラ様の執事やっけ? ほら、執事って仕事沢山あるから色々忙しいんやろ』


「それは、普通の執事の場合ね。ライラは、私と同じベッドで毎日グースカ遅くまで寝てるわよ。しかも、私に起こされて」


『めっちゃポンコツ執事やん! けど、今寝てないって事は、今朝は早起きしたってわけやな』


「確かにそうね……。今日は、雪でも降るのかしら」


『えらい信用されてないんやな……』


 ポンボがドン引きした直後、突然部屋の扉が勢いよく放たれ、中から水着を着用したライラが姿を現した。


「じゃじゃーんっ! 呼ばれました、ライラです! こいつ意味不明な登場しやがって、と思いましたでしょ?」


「ほんとに、意味不明なんだけど!」 

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