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プレゼント作戦

 




 レイみたいに、平手打ち……しちゃったら絶対怖い顔で怒られるわよね。


「ちょっとライラ。ラウール様の好感度、どうなってる?」


「えーと、零から五に上がってますね」


 小声で返してくるライラの言葉に、私は驚く。


「いきなり五も!? やばいじゃない。好感度下げる方法って、もっと効率の良いやつ無いの?」


「あとは、相手の嫌いな物をプレゼントするとか、ですよね」


 あぁ、なるほどと思った。


 恋愛ゲームもので、よくあるシステムだ。


 攻略対象の好きな物をプレゼントして、好感度をどんどん上げて、恋愛イベントを見るってやつ。

 恋を成就させる為には、全てのイベントをクリアしないといけないのよね。


 恋愛ゲームものは、普通に会話するだけでも攻略対象の好感度が少し上がったりするので、恋仲になりたくない相手には嫌がるプレゼントをわざと渡すと大幅に好感度を下げる事が出来る。


 その方法を取るには、相手の好き嫌いを把握する必要がある。


「普通は、会話とかイベントでそういう情報を得ていくもので、時間がかかって面倒なんだけど、私にはライラというサポーターがいるから大丈夫なのよね」


「はい、お任せください姫様」


「さぁライラ、教えなさい。ラウール様の大嫌いな物を」


「はい、えーとラウール様の大好物と大嫌いな物は、"不明"となってますね」


「このポンコツメイドがぁっ!!」


 本当にゲーム進行役なのかしら、こいつ。

 その割に、分かって無い事が多すぎだし、何か隠してるし。


「姫様?」


「……何でも無いわよ。あんたに頼らなくても、自分で聞くからさ……それでラウール様、嫌いな食べ物ってあります?」


「普通、相手の好きな食べ物を聞くと思うのだが?」


 当然の意見だが、今の私は攻略対象の好感度を下げないといけないのだ。


「とにかく教えて下さい」


「ステラ姫は、変わった人だな。俺の嫌いな食べ物は、チョプレーゼだ」


「何そのカプレーゼみたいな名前……」


「チョプレーゼを知らないのか? チョプレとチーズと薬草を並べた料理だ」


 うん、まんまカプレーゼよね。

 話の流れからして、この世界のトマトはチョプレっていうらしい。


 しかし、料理をプレゼントしないといけないのか。


 この世界に来てから、料理なんてした事ないんだけど。

 まぁ屋敷にコックがいるのだから、作ってもらえば良いか。


「あの、姫様」


「何よ、ライラ」


「姫様の事ですから、コックに料理してもらったら良いかって思ってるかもしれないんですけど」


「何か問題でもあるの?」


「姫様自身が作ったり、手に入れた物しかプレゼント出来ないシステムなんですよね」


「そんな事は、先に言いなさいよ」


 システム的な事は、何故いつも後回しに言うんだろうか、このポンコツメイドは。


「とりあえず、プレゼントの件は一度屋敷に帰ってからになりそうね」


「そうですね。姫様に料理作成のシステムも教えないといけませんし、戻りましょう。それに、料理を作れる様になったら、ラムド様にもお渡し出来ますしね」


「ラムド様の好感度は、MAXなんでしょ? プレゼント上げたって変わらないじゃない」


「あれ? そのセリフだと、ラムド様の大好物を作るつもりですか? 私は、てっきり大嫌いな物を渡して、好感度を下げるんだと思ってましたが」


「と、当然下げるのを作るに決まってるじゃない! わ、私が良いたいのは好感度MAXだから、多少大嫌いな物を渡しても、あの方の態度は変わらないし、また知らぬ間に元に戻るんじゃないかって事よ」


「はいはい、そう思っておきますよ」


「こいつ……」


 ニヤニヤしながらこちらを見てくるメイドに、私は少し腹が立った。

 ラムド様に私の下手すぎる料理をプレゼントして、絶対好感度を下げまくってやる。


「ラムド……ロシタニア帝国の皇帝か?」


 突然、ラウール様が話に入ってきた。


「あ、はい。色々と、良くして頂いてる方で……」


「姫様の想い人なんですよね……ぎゃっ!」


 余計な事を言うな、と私はライラの足を踏みつける。


「なるほど、ステラ姫の想い人か。皇帝が、ちょっと羨ましいな」


「お、想い人ではありません! それに、羨ましいって……」


「え……あ、ち、違うぞ!? 俺は、あまり仲の良い人ってのがいないから……それで羨ましいだけで!」


 仲の良い人が欲しいって事?

 ラウール様、友達いないのね。


「だったら、私がラウール様のお友達になりますよ」


「友達……そ、そうか……今はそれで良い。これからも、よろしくなステラ姫」


「はい、こちらこそ」


 にっこり笑って、握手を交わすと何故かラウール様の顔が真っ赤に染まった。

 何故ここで照れる?


「ラウ様、お友達から始まる恋もありますよ?」


「こ、コマキ!? 余計な事を言うんじゃない」


「はーい」


 と、ラウール様が咳払いする。


「……そ、それはそれとして。友達のステラ姫に、お願いしたい事があるのだが」


「なんでしょう?」


「前にも一度伝えたと思うのだが、来週に行われる俺の誕生日パーティーに、ステラ姫も参加してくれないか?」


「パーティー……あっ!」


 そこで、私は一番大事な事をラウール様に伝えなければいけないと気付いた。

 ラウール様から招待されていた、ダンスパーティーを断りたい、と。

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