ラウール様の好感度上昇!?
「ステラ姫」
「は、はい!」
「君は、ポンボを飼う事を最初は嫌がっていたように思うが、本当に良いのか?」
「え……」
確かに、最初は喋る鳩なんて飼うのは遠慮したかったけど。
ラウール様の言いたい事は、ポンボを嫌ってないのか、ということじゃない気がする。
もっと深い意味。
彼の面倒をしっかり見れるのか、という様な。
「ラウール様、確かに私は最初ポンボの事を変な鳩だから、絶対飼いたくないなって思っていました」
『……ステラ様も、オブラート知らんのかい!!』
ポンボが、盛大に突っ込んだ。
その横で、ライラだけがニヤニヤ笑っている。
「けど、ポンボと喋っているうちに何だか楽しくなってきたというか。一緒に過ごしていけそうだなって思ったんですよね」
「姫様……お優しいのですね」
コマキさんが、微笑みながら言った。
「あ、それに文通って時間かかるからヤダなぁって思ってた所に、ポンボの通話機能って便利じゃないですか。だから、彼はなかなか使えるなって思ったのが本音です」
『ちょっと感動した、オレの気持ち返してぇや!』
「……ぷはっ!!」
誰かが、噴き出した。
それがラウール様であると気付くのに、多少時間がかかった。
他の皆も、驚いてラウール様を見る。
「ぷははは、ははははっ!! 笑いが止まらん」
「ら、ラウちゃん……?」
あまりに突然の事で、メイさんが驚いている。
「ラウール様、気でも狂ったのかい? それとも、変なキノコでも食べたとか……? まぁ元々頭はおかしい方だけどさ」
地味に、カーラさんの発言が酷すぎる。
「落ち着け、皆。俺は、気が狂ったわけでも変な物を食べたわけでもない。ただ笑いたいから笑ったのだ」
「その通りの事しか言ってませんから。威張って言う事でも無いですよ、ラウ様」
コマキさんが、呆れている。
皆さんが言うように、ラウール様ってちょっと残念な人なのかしら。
「変な奴を見る目をするな、ステラ姫」
「すいません……」
「そこは否定しなよ……。いきなり笑ったのは、失礼だった。ポンボと相性が合う人はいないんじゃないか、って心配してたものでな」
「本当は、ラウール様もポンボの事大好きなんですね」
「ま、まぁ……商品とはいえ、長い事一緒にいるからな。多少は情も湧くさ」
『ら、ラウール……』
ポンボが、感動しているのに気付いて、ラウール様はハッと我に返り照れる。
「ち、違うからな!? 別にポンボの事が大好きとか、そういうのでは無くて、あくまで商品として良い飼い主に飼われた方が幸せだろうっていう、店長として当然の意見だ!」
「ラウール様、可愛いですね」
「ね、本当に」
私と、コマキさんが顔を見合わせて笑い合う。
ラウール様は、ひたすら、違うからな! と連呼しているのだが、顔を真っ赤にさせている。
その姿が、とても可愛いく見えるのだ。
冷酷な人だと思っていたけれど、彼の意外な一面を見た気がして嬉しくなる。
「ポンボ、良い店主様ね」
『ん? あぁ、素直じゃ無いけど、オレも実は好きやで。ラウールの事は』
ポンボに小声で言ってみると、彼も同じ声量で返してくる。
「それ、本人に直接言ってあげた方が良いわよ」
『アホか。そんな恥ずかしい事言えるかい。この気持ちは、墓場まで持っていくわ』
「ふふ、ポンボの墓場ってすぐそこって感じするけどね」
『ステラ様、何かオレに恨みとかある? まだまだ生きるつもりやで』
「うん、まだまだ生きていてね」
『ツンデレかいな……全く、素直じゃないわ、ラウールもステラ様も』
そんな事を言うポンボだって、全く素直じゃない。
だって、誰よりも一番嬉しそうな顔をしてるのはポンボなんだから。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
会計が済んで、ラウール様からポンボのお世話について簡単な説明を受けた後、私は鳩用の餌をコマキさんから購入した。
『といっても、オレは鳩の餌なんてショボいやつは食べへんけどな』
「だったら何で買わせたのよ」
「ポンさん、屋敷で一流のシェフに貴方のご飯を作るよう話をしておきます」
『ライラ姉ちゃん、話分かるやん!』
ライラの提案に、ポンボは嬉しそうだが、本当にどうするのよ買った物。
「そうだわ、ラウール様。たった今買ったプレゼントがあるんですが」
「ステラ姫、それはポンボの餌だろ。俺の店にある物を貰っても、嬉しくは無い」
「ですよねー」
至極当然の事だ。
だけど、滅茶苦茶誰かに押し付けたい、ポンボの餌。
「あの、姫様。良かったら、ポンボの餌は返品してもらって結構ですよ? 返金させて頂きます」
「コマキさん……神様!」
「ふふ、大袈裟ですよ」
コマキさんの機転で、無事ポンボの餌は返品された。
良かった、ゴミになる所だったわ。
「ステラ姫」
「ラウール様? 何か」
「その……何だ。最初の非礼を詫びる。すまなかった」
突然、ラウール様が謝罪の為の一礼をしてきた。
「えぇ!? ラウール様! どうしたんですか」
「ステラ姫の事は、昔から知っているが……我儘で冷たい女性だったと記憶していた。だから、俺は君を避けていたんだ。だけど、本当は生き物に優しく面白い人だと知ったから……君を誤解していた事を謝りたい。それと、姫の事もっと知りたくなったよ」
えぇっ!?
これって、もしかして、もしかしなくても好感度が上昇してしまったのでは!?




