お決まりの展開
ポンボ探しは、──そもそも、そこまで探してないけれど──なんとか無事終了した。
ラウール様に、ポンボが見つかった事を話さなくてはならない。
時間があまり経っていないので、ラウール様も「もう帰ってきたのか!?」とびっくりされると思う。
「ポンボ、このままだと私お金払わずに伝書鳩を持ち去った泥棒になってしまうから、一旦店に戻らないといけないんだけど……その……」
『ラウールに啖呵切って出て行ってしもうたくせに、めっちゃすぐ帰ってきたからなぁ。正直、気まずいんやけど。やっぱり、もう一度あいつと会わなあかんよなぁ』
「うん、私と暮らす事をラウール様達に説明しないといけないしね」
はぁ、と溜息をつくポンボ。
翼で頭を抱えて、まるで人間の仕草の様だ。
『しゃーないか。ほな、ステラ様。腹括ったから行こか』
「……大丈夫ですよ、ポンさん」
『何や、ライラ姉ちゃん。慰めてくれるんか?』
「どうせ、無料でポンさんは売られると思いますし」
『何も大丈夫な事あらへんやん! オレの価値って、プライスレス!?』
「ほら、ポンさんて……ちょっとアレじゃないですか」
『何や、アレって』
「ハッキリなんて言えませんよ。オブラートに包んだら、つまりは"役立たず"っていうか」
『ちょっとはオブラートに包んでくれへん!? めっちゃハッキリ言うやん!』
空気を読まない執事と、喋る伝書鳩のコンビネーションはかなり良いようだ。
ポンボが私の城に来ても、上手くいく予感がする。
とりあえずは、一安心といったところか。
『いや、ステラ様。今の見てた? ライラ姉ちゃんと上手くいってる描写無かったよな? オレがめっちゃやられてるだけやったよな!?』
「ポンボは面白いのね」
『何がやねん……』
ガックリと肩を落とすポンボ。
あれ、鳩の肩ってどこだっけ。
「多分私の言ってる事が間違い無いと分かる時が来ますよ。今すぐに」
『なんやライラ姉ちゃん。だったら、菓子でも賭けるか?』
「良いですよー。有名チョコレート店の新作4袋を賭けて勝負です!」
『いや、そんな金無いんやけど』
そもそも、鳩なんだから一円も持ってないと思うんだけど。
「ふふふ、多分次の展開では叫んでる事になると思いますよ。んなアホなー! って」
『オレとラウールの絆を舐めたらあかんで。ラウールは、ぶっきらぼうな所はあるけど、心根は優しい奴や。オレみたいな変わりもんの鳩にもな。だから、ライラ姉ちゃんが謝るサマが目に浮かぶわ』
「ふふふ……それほどご自身に自信がおありなら、今すぐ確かめに行きましょう。私の方が、絶対に正しいと思いますけどね」
『よう言うたな。そんじゃ、今すぐ確かめに行こうや! ステラ様、さっさと行くで』
「え、うん……」
何か、ポンボがフラグを立ててしまったけれど、大丈夫かな。
大概こういうのって、自滅する流れな様な気がするんだけど。
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「……ポンボを引き取ってくれるそうだな。ならば、お代はタダで良いぞ」
『んなアホなー!!』
やっぱりというか、何というか。
ライラが言った通りの展開になった。
なんだか、ギャグ漫画みたいだ。
「さぁ、ポンさん。賭けは私の勝ちですからね。約束は守ってもらいますよ、ふふふ……」
『待ってや、姉ちゃん! オレ、ほんまに鳩やから金持って無いんやって。堪忍してや』
「みっともないですよ。了承しておきながら、約束を反故するなんて、恥ずかしくないのですか……あだっ!?」
ライラの頭に、私の片手チョップが炸裂した。
「みっともないのは、あんたよライラ。鳩を虐めるんじゃありません」
「けど姫様……」
「ポンボを見なさいよ。涙目になってるでしょうが」
涙目というか、両目から水が溢れているというか。
つまりは、既に泣いている。
その様子に、ライラも哀れに思ったらしい。
「はぁ……仕方ないですね。賭けは私の勝ちですが、褒美は我慢しておきましょう」
『ありがたいわ、ライラ姉ちゃん! ステラ様も、おおきに。ステラ様が言うてくれたおかげや」
「ライラの言動は、普段から目に余る事が多いから、気にしなくて良いわよ」
「なんか侵害ですね……」
なんで侵害なんだ。
当然の事でしょ、と彼女を睨んでいるとメイさん、カーラさん、コマキさんが互いに見つめ合って微笑む。
「ポンボ、良い所に貰われて良かったわね」
「あぁ、本当にな。幸せものの鳩だな」
「良かったです。ラウ様も、そう思いますよね?」
コマキさんに言われたラウール様だが、すぐには返事せず無言で私を見つめている。
ポンボを飼う事に、何か問題でもあるのかな。
この鳩自体が、色々と問題ありそうな感じはするけど。




