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私と一緒に暮らさない?

 




 


『どうやった? ちゃんと通話出来たか?』


「うわっ、ポンボ……起きたの」


 果たして起きた、という表現が正しいのかどうか。


 文字通り覚醒したらしいポンボに、私は驚いた。

 だが丁度いい。

 彼に聞きたい事もあったし。


「ねぇポンボ。毎回ラムド様と通話する時は、脱衣所に繋がるわけ?」


『え? 愛しの兄ちゃんが風呂入ってる時に通話出来たんか? 嬢ちゃん、ラッキーやったな』


「ち、違うわよ! 入浴後ではあったけど。だからこそ、毎回毎回入浴後に通話するの相手にも失礼っていうか……ちょっと困るんだけど」


『何でやねん。そういうラッキーが重なって、恋が実るんやろがい』


「……べ、べ、べ、別に恋なんてしてないから、私は」


『……顔赤くして動揺しながら、何言うとるん? この人』


 同意を求めるかのように、ポンボはライラを見るが、彼女は苦笑しながら首を振る。


「姫様のお考えは、私には分かりかねますので」


「そ、そんな事はどうでも良いのよ! それより、さっきの件について教えて。毎回脱衣所の鏡に繋がる仕様なの?」


『いや、違うで。通信したい相手の一番近くにある鏡と繋がる仕様や。今回は、ラムドってやつが脱衣所の鏡の近くにいたからそこに嬢ちゃんが映し出されたんやな』


「って事は、毎回違う場所に繋がる可能性があるのね。こっちから操作は出来ないの?」


『無理やな。どこに繋がるかは、こっちにも相手にも分からん事や』


「なるほど……」


 ラムド様と毎日電話出来るのは嬉しいけど……って、何考えてんの私のバカバカ。

 そうじゃなくて、この仕様はちょっと不便ね。

 まぁ仕方ないけど。


「姫様、ラムド様と通話する事になってますけど、まだポンボ様を飼うと決めたわけでは無いですよね?」


「あ」


 ライラの言葉に、ハッとする。


 そうだった。

 私はただポンボを探しに来ただけで、彼を飼うって決めたわけじゃないんだ。


 けど、ポンボしか通信機能が無いんだよなぁ。

 ラムド様と約束してしまったし、伝書鳩はポンボにするしかないか。


「あのね、ポンボ……」


『どうせさぁ』


「ん?」


『どうせ、嬢ちゃんもオレの事使いもんにならんと思っとるんやろ?』


「えー……」


 今まで普通に喋っていたのに、急に落ち込みだすポンボ。

 はっきり言って、面倒くさい。


『ラウールもオレの事、どーでも良いと思ってるやろうし、役に立たない伝書鳩なんて生きてる価値無いんやぁっ!』


「うわぁ……」


 いよいよ、本当に面倒な事になってきた。

 地面に顔を付ける感じで、わんわん泣き出したのだ。


「えーとさ、ポンボ」


『……』


 どんな言葉を言えば正解か分からない。

 泣き続けて、返事もしてくれないと余計に言いにくいけれど。


 何かを伝えなくては、とそう思った。


「出来損ないは、なんどやっても出来損ないだと思うわ」


『うわーん!』


「姫様、泣きっ面に蜂ですから。ポンボ様の心を痛めつけてるだけで、何の慰めにもなってませんから」


「あ、間違えたわ言葉」


 気を取り直して、咳払いを一つする。


「私も、色々と失敗する事があるし、一国の姫としてかなり至らないとこがあると思うから、出来損ないは一緒よ。だから、同じ出来損ない者同士で暮らしてみない?」


『え……』


 ポンボが、顔を上げる。

 両眼から多量の涙を流しながら。


『お嬢ちゃん、オレを飼ってくれるんか?』


 まぁ、ポンボの通信機能って便利だしねぇ。

 なんて、今は正直に言わなくて良いだろう。


「もちろんよ、あんたってほら。何か割と良い子っぽいし。知らんけど」


『知らんねやったら、言いなや! めっちゃ曖昧な表現やし』


 けど、とポンボが続ける。


『素直な人は嫌いじゃないわぁ。そういや嬢ちゃん、名は何て言うん?』


「私は、ステラ・ヴァ……なんだっけ名前」


「ステラ・ヴァレスト様ですよ、姫」


『え、やばないか? 今自分の名前忘れてたんちゃうん?』


「ちょっとベッドから転落した時に、記憶が欠損してるだけだから、大丈夫よ」


『それ絶対大丈夫じゃないやつやで……』


「私の事は、私が一番分かってるから、気にしないで」


『そらそうやろうけど……』


 ポンボは、何か言いたそうではあった。

 ベッドから転落して記憶欠損とか、自分の苗字を忘れるとか、どんな人でも驚くに決まっている。

 

 だって、前世が日本人だった私には片仮名の苗字なんて長すぎて覚えられないんだもの。

 それに、発音しにくいし。


『なんにせよ、嬢ちゃん……ちゃうな、ステラ様はオレの命の恩人や! ステラ様の為やったら、どんな事でもするつもりや』


「ありがとう、ポンボ。じゃあこれからよろしくね」


『おうよ! ライラ姉ちゃんも、よろしゅうな』


「はい、こちらこそよろしくお願いします。ポンボ様」


『オレには様付けはいらんのやけど』


「では、ポンさんと」


『何故あだ名!?』

「何故あだ名!?」


 私とポンボのツッコミが被った。

 彼とは、なかなか良いコンビになりそうね。



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