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ラムド様と通話

 




 


『お、さすがやなメイドの姉ちゃんやな。ほな、早速この住所の主人に向けて通信するで。姉ちゃん、人差し指の裏を見せてみい』


「ひ、人差し指の裏? 何でよ」


『えぇから』


 詳しい説明が何も無かったので納得がいかないながらも、ポンボの圧が強すぎる。

 仕方なく、言う通りに人差し指の裏を見せる。


「痛っ!」


 いきなり、ポンボのクチバシが私の人差し指の裏に当たり、極少量の出血が出る。


「な、何するの!」


『すまんな、嬢ちゃん。通信する人の血が少量必要なんや』


「だったら、先にそう言ってよ」


『すまんすまん、堪忍。ほな、お次はこの血を飲ましてもらうで」


「うわぁ……」


 ライラが、私の隣でドン引きしている。

 それもそのはず。

 ポンボが、私の指に付いた血液を飲み始めたからだ。


「かなりショッキングな光景ね、これ。吸血鬼みたい……」


『失礼な。オレは、吸血鬼やなくて伝書鳩やで。よし、嬢ちゃんの血液も体内に入れたし、あとは届くように祈るだけや』


「祈る?」


『せや。相手の顔を思い浮かべて、その人の名前を呼んでみい。他の事考えたら、通信失敗しよるからな。ちゃんと、相手に届く事だけを考えるんやで』


「……分かったわ」


 ラムド様の顔を思い浮かべて……。

 あの爽やかイケメンの顔を。


 ──好きだ、姫。


「ひゃぁぁっ!」


 ラムド様の告白を、また思い出してしまった。

 イケメンボイスが脳内で再生され、悶絶する。


『ひゃぁぁっ、じゃなくてちゃんと名前を言うんやで』


 ラムド様の事を何も知らないポンボは、真面目に怒ってきた。

 ちょっと取り乱した自分を反省し、私は咳払いする。


「おほん。今から名前を言うところよ。えーと……ラムド様に通信お願い!」


『ラムドへ通信!』


 ポンボの口がぱっくり開いた。

 そこから、光が放出し彼の目の前に巨大スクリーンが現れた。


「まさかの伝書鳩のスクリーンプロジェクター!?」


 私は驚くが、ポンボは何も言わない。

 というか、目が虚ろで怖い。


 もしかしたら、スクリーンが出現している間は話せない仕様なのかもしれない。


 しばらく画面が真っ白だったが、時間が経つにつれてどんどん鮮明化されていく。


『え……何だこれ。って、姫!?』


 映し出されたのは、確かにラムド様だった。

 ただし、風呂上がりの。


「ぶーっ!!」


「あら、姫様」


 濡れた髪に、Tシャツズボンのラムド様を見てあまりの色っぽさに私は鼻血を噴き出して仰向けに倒れた。


『大丈夫か?』


「だ、大丈夫です……」


 ライラが、ハンカチで私の鼻を拭いてくれる。

 ラムド様の心配そうな声に、鼻をすすりながら答えた。


『それより、これはどうしたんだ。鏡が勝手に光り出したんだが』


「鏡?」


 なるほど、確かにラムド様が映っているその周囲をよくよく見ると、脱衣所のようだ。

 私の姿は、そこに設置された鏡から映し出されたみたい。


「ポンボさんに理由を聞いてみない事には分かりませんが、ひとまず今はラムド様との電話を楽しんではいかがですか?」


「そ、そうね……」


 目の前のスクリーンに映し出されたラムド様を改めて見ると、普段よりも更にイケメンに思えるから不思議だ。


 じっと見つめてみるが、あまりのかっこよさに再度倒れてしまいそうになる。


『姫、そろそろ説明が欲しいんだけど』


「あ、申し訳ありません。実は、伝書鳩を探しにペットショップに来たのですが、そこで見つけた鳩の能力でテレビ電話みたいな事が出来たというか……。とにかく、ラムド様との通信手段が文通ではなく、通話が可能になったみたいで」


『よく分からないけど、離れていてもステラ姫の顔と声が聞けるってわけか。それは……なんだかとても嬉しいな』


「そ、そうですか……それは良かったです……」


 面と向かって、そんな恥ずかしい事を言わないで欲しい。

 鼻血噴き出すどころじゃなくなるじゃない。


 どうしてこの人、何してもイケメンなのかしら。


『ステラ姫』


「は、はい」


『姫』


「な、なんですか?」


『……姫』


「し、しつこいです! 何か言って下さい、聞こえてますよ!」


『はは、ごめん。遠くで姫の声が聞けるのが新鮮でさ。怒ったり、笑ったり、返事したりしてくれるのが嬉しいから何度も聞きたくなってしまって。許してくれ』


「ゆ、許します……」


 ダメだ、ダメだ。

 完全に相手のペースになっている。


 ラムド様の言葉に揺れ動いちゃダメなのに。


『あのさ……毎日声が聞きたいから、毎日電話して良いかな?』


「良いです……」


「良いんだ」


 私が顔を真っ赤にして答えたのを聞いて、ライラが笑いを堪えながら突っ込んだ。


『ありがとう。じゃあ明日から毎日電話するね。今日は公務がまだ残ってるから、これで失礼するよ』


「は、はい。ありがとうございました……」


 よく分からないけど、ラムド様にお礼を言っている私。

 通信の切り方が分からなかったけど、終了したいと願ったら勝手にスクリーンはその場から消えた。

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