表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/28

連絡先、交換しない?

 



 

「ライラの乱暴な言葉はさておき、素直な気持ちを伝えるってのは、正しいかもしれないな」


「そうですよー。姫様ったら、さっきからキョロキョロ辺りを見回してますし、大方気持ちも落ち着いてきて、私達の姿を探す事にしたんでしょうね。まさか、客じゃなくて店員の方をやってるなんて思ってないでしょうから、探すのに時間がかかると思いますけど」


「え、そうなのか?」


「はい、ずっとこちらの方を見て探してますし」


「ライラって、ステラ姫の事よく分かってるんだなぁ」


「……全く分かっていませんよ。私は……落ちこぼれですから」


「……そんな事無いと思うけど。ライラは、その……何ていうか……いつも姫の側にいて、見守っている感じがするし。そういう存在って、あの子にとって大事だと思う」


 ライラが、いつに無く寂しい表情で焼きそばを焼いているので、ラムド様はすかさずフォローした。


 そんな優しい言葉に、彼女は苦笑する。


「慰めなら要りません。その場の流れで何となく慰めておこうか、みたいな気持ちなら逆に辛くなりますし。安易な優しさは人を傷付けるだけですよ?」


「肝に銘じておくよ」


 ラムド様が反省したのを確認して満足したのか、ライラはそれ以上何も言わなかった。


 ただひたすら無言になって、麺と野菜を焼き続ける。


 行列は次第に捌けて行き、食材の方も底を尽きそう

になっていく。


 そろそろ店番も、終わりが近付いてきたようだ。


「……時にラムド様」


「なんだい?」


 しばらくライラは話さないと思っていたので、いきなり声を掛けられて、ラムド様は内心驚いていた。


 だが、女性に話しかけられて驚くなんて失礼な事は彼には出来ない。


 悟られない様に、とにかく平静を装っていると、ライラから驚愕の事実を告げられる。


「最後のお客様、姫様とレイ様でした」


「……は?」


 ラムド様の目の前に、謝罪したい相手がいた。




♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢




 一番最初の感想は、何でこの人達焼きそばなんか焼いてるの? だった。


 焼きそばを必死に焼くラムド様は、青と白のチェック柄をしたエプロンを着用していた。

 それは凄く似合っていて、目の保養ではあったけれど、何してんのこんな所で、というツッコミが脳内を埋め尽くしていた。


 ちなみに、ライラもエプロン姿ではあったが、普段の燕尾服が見慣れているせいか、違和感の方が強くて可愛いなんて微塵も思わなかった。


「何でですか、可愛いでしょう。可愛いと言って下さい」


「……あんたは、何で私の心が読めてるのよ。っていうか、二人ともどうして焼きそば屋台の店員なんてしてるわけ?」


「それは、ラムド様と私だけの秘密の話なんですよね?」


「へー、ラムド様はやっぱりライラとそういう関係なんですか。それは良かったです、どうぞお幸せに」


「ち、違うんだ姫! 誤解しないでくれ!」


「何を……」


 何を勝手に、と思ってラムド様を睨む。

 誤解も何も、ラムド様がライラをデートに誘ったんじゃない。


 ライラはどうか知らないけど、少なくともラムド様は彼女の事が好きなんでしょ?


 私に対する好感度がMAXになりながら、別の女の子とデートするなんて、これじゃあただの女たらしじゃない。


 最低だわ、ラムド様。

 最低野朗よ。


「……すまない、ステラ姫。僕は……レイと仲良くする君に嫉妬してしまったんだ。それで、ライラをデートに誘って君の気を引こうとした。すまない、この通りだ、許してくれ」


 ラムド様が、美しい一礼をする。彼から、どんな言い訳が飛び出すかと思いきや、突然謝罪され戸惑ってしまう。


「ラムド様が……嫉妬?」


「そうだ。僕は、君をレイに取られたくないと思ってしまい、ついあんな行動に出た。そのくらい、君の事が好きなようだ。好きなんだ、姫。これからも僕の側にずっといてくれないか?」


「す、好きって……ずっと一緒にって……。ちょ、ちょっと待って下さい。いきなりそんな事言われても」


 謝罪からの愛の告白って……。

 恥ずかしいし、理解が追いつかない。


 けど、これってラムド様との恋愛成就イベントじゃない?

 少し景色が良い所でイベント発生、とかじゃなくて好感度MAXだと告白イベントはどこでも起きる仕様なの!?

 ダメだ、阻止しないとノーマルエンドを逃してしまう。


「姫が、僕以外の男を好きになったとしても、その時はスッパリ諦められると思っていた。けど、ダメなんだ。君が僕を好きになってくれないと、胸が痛くてたまらないんだ。僕のこの想い、受け取ってくれないか?」


「えぇっ!?」


 困る、非常に対応に困る。


 前世でも男の人に、ここまで情熱的に告白なんてされた事が無かった。


 そもそも、男性とこんな風に話をする事も少ない。


 だから、私を好きになってくれて、告白されたのは嬉しい。

 嬉しいけど……ラムド様の事好きなのかと言われたら、よく分からない。


 だって、ラムド様からしたら昔から知り合いだったステラ姫だろうけど、私は今日初めて彼と会ったんだもの。


 彼をよく知らないのに、告白をオッケーなんて出来ない。

 そもそも、私はノーマルエンドを目指してるんだし。


「ごめんなさい、ラムド様。貴方の気持ちには、今は応えられないわ」


「姫……どうして……」


「……私、ラムド様の事を覚えてないからよく分からないの。自分の気持ち。だから、恋人は無理だけど……お友達から始めてくれませんか?」


「友達か……分かった。じゃあ、また遊びに誘って良いかい? 友として」


「えぇ、友としてなら」


「分かった。では、友として君にお願いしたいんだけど」


「なんですか?」


 すると、ラムド様は少し照れながら私に言った。


「僕と……連絡先、交換しない?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ