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ep. 8 : 見せしめ

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「来たぞ...。あー!…何だこのくそったれの匂いは?」


女神が激辛焼きそばを完食し、ツケをしようとしている最中に、店内にエラとモヒカンが入ってきた。


その隙に女神はあっという間に姿を消した。


でも、今回もらえなかった1シルバーは後で必ずもらうつもりだ。


店の外も少し騒がしいので、危険なものがないか森を見に行っていたエルフたちが全員戻ってきたようだ。


エラは店内に入り、テーブルの上に置かれた空のボウルを見つめた。


「うわぁ…この赤いの見て、いったい何を食べていたの?」


「辛い麺料理だよ。すごく辛いけど美味しいよ。」


「…変態野郎」


エラはもう少し表情を豊かにし、言葉をきれいにすれば最高なんだけど、いつもしかめた顔をしているし、口が荒い。


「森はよく見てきた?」


「とりあえず危険なものはなかったわ。」


「本当に拠点に戻らなくても大丈夫か?持ってくる荷物もあるだろうし、そこで処理しなければならないこともあるんだろ?」


「今はここが俺たちの拠点なのに、どこへ帰るんだ。荷物は拠点に残ってた子たちに持ってくるように言ったから大丈夫だ。」


「持ってくるように言っただと?いつの間に?」


「ここに住むことにして、すぐに念話で。たぶん3日以内に来るよ。」


「念話って使えるの?」


「俺たちだけなら可能だ。距離が遠すぎてはいけないが、ここからモレノ山脈までは十分可能だ。」


「姐さん。あいつら荷物もたくさん持って来なければならないし、ドワーフの村にも寄らなければならないので、もう少し時間がかかるかもしれません。」


直感的な名前のモヒカンが言った。


「ああ、そうだね。それでも急いでいるから3日以内に来るように言って、そうしないと殺すって言え。」


「はい。姐さん。」


モヒカンはすぐに念話を送っているようだ。


「ドワーフ村はなぜ?」


「俺たちが住む家を建てなければならないから、家を建てるドワーフを連れてくるんだ。」


「ドワーフがここに来る!?」


「もしかしてドワーフが嫌いなのか?」


「いや、嫌いじゃないよ。むしろ好きなんだけど、一度も見たことがないから、見られるのが嬉しいんだ。」


「見たことないのに好きって、変な奴だね。」


エルフとドワーフ、たとえ商売にはならないが、我々の世界では架空の存在である彼らに会えることだけでも、異世界にいる価値は十分ある。


「姐さん。3日以内に来いと言われても、とても無理だそうです。ドワーフも一緒に来なければならないのですが、自分たちはどうにかなってもドワーフがスピードについていけず、ドワーフの建築用装備も持ってこなければならないので、最低でも5日は必要だそうです…。」


僕の想像するドワーフの姿であれば、到底速いとは思えない。それに、建築用装備だからたくさんあって重いだろう。


(ドワーフはもっと待たされるのか…)


「ドワーフがついていけなくなったら背負えばいいじゃない、背負って走れよ。」


「はい。姐さん。」


エラが無理な要求をするようだが、正直今はエラの無理な要求が好きだ。


もっと早くドワーフに会いたい。


「でも、あなたたち、家を建てるまでどこで寝るの?この森にはこの店しかないのに。」


「ここの空いている席で数人寝て、残りは野宿すればいいわ。」


「野宿って、雨でも降ったらどうするの?」


「濡れてばいい。死なない。」


「…そうか」


こんな森の中で野宿なんてちょっと心配だったが、断固としているエラを見て、エルフは自然が好きだからそういうことだと思うことにした。


「姐さん、あれだけの荷物を持ってドワーフを背負って走るのはちょっと難しいそうです。やろうと思えばできるかもしれないが、ここに着いた時にドワーフが生きているかどうかはわからないそうです…」


「…それはちょっと困るけど、もう少し時間を延ばすのはどう?」


「ダメだ。3日も長いわ。これ以上伸ばすわけにはいかない、何がどうなってもいいから、とにかく3日以内に来い、そして…」


イライラしているエラの表情が、急に怖く歪んだ。


「また俺の言葉に余計なことを言ったら…、俺が直接お前らを殺しに行くって言って。」


あの美しい顔が、どうしてあんなに怖くなるのか不思議だ。


「はい! 姐さん!」


「ちょっと待って!」


エラが放つオーラにビビりながらも、念話を送ろうとするモヒカンを呼び止めた。


「…何だ?」


エラが僕を睨みつけながら言った。


「野宿になるなら、ここで眠れる数人だけ残して、残りはドワーフを連れてきているエルフの方に出発して、途中で合流して一緒に来た方がいいんじゃないの?ここで野宿しようが、そこで野宿しようが、同じじゃん。それなら3日以内で来ることも可能かもしれないよ。」


「うーん…。悪くない考えだけれど、ここの防御を疎かにするわけにはいかない。」


「どうせここは客も来ないんだから、今は少ない人数でもいいんだ。人が増え始めるのはたぶん2週間後くらいだから、その時から気をつければ大丈夫だ。」


「あ、お客さんが一日一人も来ないって言ってたね?お前はお客さんも来ないのに何で商売してるの?」


痛い。


「…たまに来る商人に売って少しは稼いでるよ。」


「うーん…じゃあ、君の言う通りにしようか?でも、反発がありそうだけど…」


僕が提案した方法だが、反発があるのは確かだ。


今のエルフたちはこの森から一歩も離れたくないので、無理矢理送り出すしかない状況だ。


だが、仕方がない。


生きたドワーフより死んだドワーフに先に会いたくはない。


「姐さん!反発があるなら、見せしめにした方がいいと思います。最初に反発する奴に見せしめとして顔を一発殴るのはどうでしょう?」


「いい考えだね、モヒカン!君は本当に賢いな!」


顔を殴るのがいい考えだなんて、やはり一般人の常識とは違う。


「副親分として規律が緩むのは我慢できません!」


モヒカンが副親分だったのか…。


大体予想はしていた。


「そうか…そうだな…1、2、3…」


「エラは指で店内で何人寝られるか大まかに数えた。」


「よし!行こうぜ、モヒカン!」


「はい!姐さん!」


エラとモヒカンは店を出て、僕も状況を確認するためすぐに後を追った。


「おい、野郎ども!!!」


店を出たモヒカンが大声で叫ぶと、自由に散らばっていたエルフたちがエラとモヒカンの前に集まってきた。


そしてエラは集まったエルフたちに話し始めた。


「今この森で俺たちが寝られる場所は、扉がついたこの小さな家しかない。この家の中で寝られるのはせいぜい5人、だから他の8人は今ドワーフを連れてきている者たちと合流して、一緒に荷物とドワーフを運ぶ!とりあえずその8人のうち1人はモヒカンだから、これから残りの7人を決めよう!!!」


「…え?姐さん!いきなりこんなことするんですか!こんなことは最低限抽選でもしなきゃダメじゃないですか!うぎゃああああ!!!!!!!」


その瞬間、エラがモヒカンの顔に拳を叩きつけた。

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