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ep. 6 : わあああああ!!!!!!!

(その扉がどんな扉なのかまで知っているのか…)


「さっきはちょっと脅したけど、あんたに手を出すつもりはないよ。実は俺たちは門の向こうから来た人を攻撃してはいけないことになってるんだ。」


「どうして…何か理由があるの?」


「理由は知らない。俺たちはただ、そう生まれた存在なんだ。」


僕にとっては朗報だけど、聞けば聞くほど疑問が残る。


(エラは前にこの森に来たことがあるのだろうか?)


ランディさんの話によると、この森の封印はこの大陸に人間が住み始めた頃に始まったらしい。


かつて軍で魔導兵として防衛や結界の仕事をしていたランディさんが、偶然この森に関する文書を見たことがあると言っていたから、間違いないだろう。


ということは、過去にも現在もこの森に入ったことがある生物はほとんどいないってことだ。


「君たちは前にこの森に来たことがあるのか?」


「記憶にはないけど、来たことがある気がする。この森に来た途端、懐かしさを感じたから。」


エラは続く質問に面倒くさそうに顔をしかめながらも、とりあえず誠実に答えてくれた。


ということは、この大陸に人間が住み始めた頃、もしくはその前に来たことがあるということか。


エルフの寿命が長いとはいえ、それなら不死身レベルではないだろうか。


「あんたの質問が面倒くさいし、イライラするけど、こうやって全部答えているのは、俺たちの事情を知ってほしいからだ。俺たちは門を守らなければならない存在で、それだけが俺たちの存在理由だから、この森を俺たちに譲ってほしいんだよ。」


エラは、さっきの威圧的な態度が信じられないほど真剣な目で切実に訴えた。


理由はわからないが、エラは本当に心からこの森に住み、扉を守りたいと思っているようだ。


「そう言われてもな…」


「扉が気になるなら、心配しなくていいよ。俺たちは扉に触れることもできないし、入ることもできないから、俺たちが扉を越えることはない。むしろ小さなアリ一匹も通れないように完璧に保護してあげるわ。」


一生分のお金を払って扉も完璧に守ってくれるなんて、僕一人のためだけに考えれば、とても良い条件だ。さらに、あんなすごい美女があんなに切実な眼差しで僕を見つめて頼んでくると、心が弱くなるのも無理はない。


でも、それでも森は売らない。すでに売らないことを女神と約束しているからだ。他の誰でもない女神との約束を破るほど、僕はばかじゃない。


(いい条件だが、仕方ない。商売は信用が命なのだから)


「ごめんね。僕にも事情があるから、いくら払ってもこの森は絶対に売れないんだ。」


「お願いだから…。やっと…。やっと扉を見つけたのに…。うう……。お願い………。」


絶対にダメだという僕の言葉に、エラはその場にひざまずき、頭を下げて涙を流し始めた。


初めて見た時は怖かったけど、今はちょっとかわいそうだ。


エルフはなぜここまで扉に執着するようになったのだろう。


「あのね、代わりって言うのもなんだけど、君たち、ここに住んでみないか?」


「…ん?」


「扉を守るのが目的なんだろう?じゃあ別にここの持ち主にならなくても、ここに住んで扉を守ればいいんじゃないか?」


僕の言葉を聞いたエラは顔を上げ、涙で濡れた目で僕を見つめた。


(うわぁ...。本当にめちゃくちゃ可愛いな。)


思わずエラの顔にまた目を奪われてしまった。


「…いいの?」


「森を渡すのはダメだけど、ここで住民として暮らすのは問題ない。扉を守ってくれるなら、僕も安心できるから。」


僕の言葉に、エラの顔が明るくなった。


「じゃあ、今すぐ…!」


「その前に! 条件が一つあるんだ!」


「何だ、何でもいいから! 誰か一人殺してあげようか?」


調子に乗っていたのに、急にまた殺伐とした声が響いてくる。


ここで暮らせるという僕の言葉に、エラはとても興奮しているようだ。


座り込んで泣いていたエラが立ち上がり、満面の笑みを浮かべたその顔を見ていると、今なら何でも聞いてくれそうな気がした。


「いや、そうじゃなくて、扉を守るついでに僕も守ってほしいんだ。」


以前、神殿の関係者が来て言った極端な状況…それは、他の国が軍を率いて僕を殺し、この森を占領しようとするかもしれないというものだった。


ほとんど起こりえないと思うが、備えあれば憂いなしだと思う。


「何…?」


急にエラの声が冷たくなった。


「死にたいのか? 誇り高きエルフにお前の護衛騎士にでもなれと言っているのか?」


(いや...この子、怒っては泣いては笑っては怒るの繰り返しだ)


どう対応すればいいのかわからない。


「落ち着けよ。護衛騎士みたいに俺を追いかけて護衛してくれってわけじゃなくて、ただ扉を守りながら、ここに住む住民も一緒に守ってほしいって言いたいんだ。僕もここに住む住民と言えるから、この森で住民に剣を振り回したり、攻撃魔法を使う人がいたら、森が燃えたり、扉が傷つく可能性があるんだ。そういう事態を防いでほしいだけだよ。」


「…それはそうだね。」


さっきまで怒っていたエラは、怒りを抑えて考え始めた。


本当はエラの言葉通り、護衛騎士を務めてほしいというのが当初の僕の意図だったのだが、眉をひそめて怒るエラを見て、慌てて言い訳をした。


「まあ、これくらいはいいけど、優先順位は扉だから、扉を守りつつ余裕がある時だけ住民を守るよ。」


「うん、それで十分だ。」


当初の望みは叶わなかったが、これくらいで十分だと思う。


「じゃあ、もう俺たちはここで暮らしていいの?」


「ああ、僕が言った条件さえ守ってくれれば、あとは中にいる仲間と相談してみるといいよ。」


「相談?ふふ…」


仲間と相談しろと言う僕の言葉に、エラはくすくす笑った。


「どうしたの?」


「俺が決めたことに相談なんか必要ないわ。俺が決めたら、あいつらは『はい!』ってついてくるだけなのよ。」


「えっ?でも、ある程度は話し合わないと…」


「おい、クソ野郎ども!!!出てこい!!!!」


エラは突然、店内のエルフたちに怒鳴り始めた。


「「はい!」」


エラの呼びかけを聞いたエルフたちは一斉に飛び出してエラの前に立った。


「この森の主人が頑なに拒否したため、残念ながらこの森を買うことができなかった!!!」


エラの前に立っているエルフたちは皆、僕を睨みつける。


さっきエラから受けたのと似た殺気を感じる。


「しかし、喜べ!!代わりに私たちはこの森に住む権利を得たのだ!これで私たちはこの森に住みながら扉を守ることができるようになった!!!!!」


「「わあああああ!!!!!!!!!!!!!」」


エラの言葉に、エルフたちが歓声を上げ始めた。


「姐さん!!」


「何だ! 【モヒカン】!」


(あのモヒカン頭の筋肉質なエルフの名前がモヒカンなのか…。)


直感的でいいと思う。


「居住期限はいつまでですか?!!!」


「それは…!」


エラが横目でこちらを見る。


(僕が答えなきゃいけないんだろう?)


「ええと……。僕がここにいる限り、ずっと?」


「そう言われているぞ!!」


「「わあああああ!!!!!!!!!!」」


再びエルフたちが歓声を上げる。


「姐さん!じゃあ、あの男が年をとって死んでしまったらどうなるんですか?!」


「モヒカン、この野郎! 遠くまで考えられるんだな!!!」


エラは再び横目でこちらを見る。


「それは僕が一人で決められることじゃないし、その問題は後でゆっくり話そうよ。」


「後でゆっくり話そうって言っているぞ!!!」


「「わああああああああ!!!!!!!!!!!」」


こうして、この森にエルフたちが住み着くことになった。

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