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ep. 5 : 金髪の群れ

(何だこの状況は…?)


今日も商売するために異世界に渡った。


異世界に転移してすぐに目の前に見えたのは、開店前から店内に入っている金髪の女性と男性の群れだった。


たくさんのお客さんが来ることを期待していたが、まさかこんなに最初からたくさん来るとは思わなかった。


(確かに昨日ドアに鍵をかけていったはずなのに…)


どうやって入ってきたのか聞きたいのだが、お客さんは何も言わず、ただただ僕を見つめるだけだ。


僕も彼らの醸し出す威圧感にすぐに口を開くことができなかったので、ただただ一番前にいる女性客を見つめた。


その人を見つめたのは、単にその人が美しすぎたからだ。他のお客さんもとても美しかったが、この人は他の客に比べても目立つほど圧倒的な美しさだった。


その美しさに感心して思わず見とれていると、しばらく沈黙していた彼女が口を開いた。


「…何見てんだ、てめえ」


「え…?」


「何見てるんだ、ぶっ殺すぞ」


眉をひそめた彼女の口からは、見た目とは裏腹に険しい言葉が飛び出した。


「あなたたち、どうやってここに入ったんですか……。いや、どうやって入ってきたんだ、鍵がかかっているはずなのに」


この世界ではタメ口を使うのが普通だけど、ランディさん以外の客に会ったことがないせいか、初対面でタメ口を使うことにまだ慣れていない。


「ドアを壊して入ってきたわけじゃないし、丁寧に開けて入ってきたから心配するな。それより…この森の持ち主はお前なのか?」


「え、そうだけど?」


「よかったな。単刀直入に言うが、金をやるからこの森を俺たちに譲ってくれ」


「…もしかしてホイストやジャフード王国から来たの?それとも他の国から?まだ4週間も経ってないのに…。」


「お前の目には、俺が国の仕事をしている人に見えるのか?」


態度を見る限り、そんな人には見えない。最初は美しい美貌に目を奪われて気づかなかったが、改めて見ると、ここの人たちはみんな耳が尖っている。


金色の髪に美しい美貌、尖った耳。


そしてあの攻撃的な態度まで…そう、この人たちは間違いなくエルフだ。


「国じゃなくて種族代表で来たんだから、余計なことは言わずに答えなさい。渡すのか、渡さないのか?」


もちろん渡せない、これは女神との約束だ。でも……


(雰囲気を見る限り、ここで引き渡せないと言ったら、やばそうだが…)


「渡すか渡さないか早く答えろ」


「ここは渡せない」


「……そうか、ついて来い」


僕と話していた女エルフは、ついて来いと言った後、そのまま体を回して外に出て行ったが、僕はその場で固まってしまった。


「…姐さんが出ろって言ってるんだから早く出ろ」


「エルフの中でもひときわ大柄で筋肉質なモヒカン頭の男が早く出ろと催促する。」


雰囲気を見ると、外で殴られそうで出たくないが、出ないと中に残っているエルフの群れに殴られそうなので、仕方なく外に出た。


「おい!こっちへ来い!」


先に出て行った女性エルフの声が聞こえ、顔を向けるとそこには、凶悪な大きさの袋が一つあった。


表情を見る限り、幸いにも殴られることはなさそうなので、そこへ近づいた。


「まずは通名から言おう、俺は『エラ』だ。姓はない、お前の名前は?」


「僕は広志、姓まで言うなら金沢広志だ。」


「じゃあ広志、俺の横に袋があるでしょ?」


「これは何?」


「この中に入っているのは全部金貨だ。欲しければこれの2倍も3倍もあげられる。もう一度言うけど、優しい言葉で言うから、この森を俺たちに渡してくれ。」


(これが全部金貨だなんて…エルフは金持ちだな)


そりゃあ、永遠の年月を生きてきたのに貧乏だったらそっちの方が変だろう。


「申し訳ないが、無理だ、いくら払ってもこの森は売ることができない。」


言ったが、これは女神との約束だ。いくら払っても絶対にここを譲ることはできない。


「いい言葉で言おうと思ったけど、ダメだね…」


先ほどより少し怒った様子だ。


「おい、広志」


「…ん?」


「さっき見てたら、お前、あそこで商売してるみたいだけど、俺が商売できないようにしてあげようか?ドアの前に立って、ここに来る客を全部追い出すか?」


まるで本物のヤクザのような威圧的な態度だが、そんな脅しは俺には通用しない。


どうせ客がいないからだ。


「どうせ客がいないから大丈夫。」


「それでも一日に一人くらいはいるはずだよね?」


「それが僕の願いだ。」


「……」


威圧的だったエラの視線が、少し哀れみを帯びたものに変わった。


「はあ……ここまで言うつもりはなかったけど、君は俺たちが何者か知ってるよね?」


「エルフじゃないか?」


「そうだ、エルフだ。俺たちを知っているということは、俺たちの噂を聞いたことがあるはずだ。」


「…うん、あまり良い噂ではなかったけど。」


「じゃあ、話が早いね。」


そして突然、一瞬で視線が変わった。


(これはやばい!)


「最後に言う。お金はいくらでもやるから、ここを俺たちに譲って。お前はこの申し出を受け入れてお金でも手に入れたほうがいいだろう。」


エラの体から漂う正体不明のオーラが僕の全身を包み込む。


…これが殺気ってことか?


エラはまだ僕を殺意に満ちた目で見つめている。


初めて感じる恐怖が押し寄せてきたが、それでも僕の答えはNoだ。女神との約束のためだけではない。あのような危険な者たちに僕の家と繋がる扉を渡してはいけないと、僕の本能が言っているからだ。


「答えないのか?」


答えは決まっているのだが、恐怖のあまり口を開くことができない。


「俺は短気だから、あまり待てない。5秒あげるから、お金でも手に入れるか、全てを失うか選べ。」


「ちょ、ちょっと待って!!!」


「5… 4……」


「僕の答えは…!!!」


「3…2……1」


「僕の答えはNOだ!!!ここは絶対に渡さない!!!」


「それがお前の選択なのか……はあ…変な人間だな……ここには何もないのに、どうしてそんなにここを守りたいんだ?人間はお金が好きだろ。この森の木を全部伐採して売っても、ここにある袋の半分の値段にもならないだろうに。」


僕の答えを聞いたエラは、威嚇するような目から、少し困ったような目で僕を見つめた。


すると、幸いにも僕の体を包んでいた殺気も消えた。


「じゃあ、あんたは何でそんなにここを手に入れたいんだ?ここは木ばかりで、お金になるものは何もないのに…。エルフだってお金が好きじゃん?」


「お金が嫌いな奴なんているのか?オークもドワーフもリザードマンも、みんなお金が好きだ。」


「でも、なんでそんなにお金をかけてこの森を手に入れようとしているんだ?」


「俺たちはこの森にいるべき存在だからだ。」


「それはどういうこと?」


「理由はわからないけど、ただ確かなのは、俺たちはこの森に住むべき存在で、この森の扉を守る責任があるということだ。」


「……扉?」


(…どうしてエラが扉のことを知ってるんだろう?)


「扉と言えば、どんな…?」


「知らないふりをするなよ。当然さっきあんたが開けてここへ入ってきたあの扉のことだろ。」


エラの言葉通り、何もないこの場所で守るべき扉と言えば、当然一つしかない。


「広志、お前は扉の向こう側の人間だよな?」

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