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ep. 33 : 貧しい獣人族

「…もしかして、今移住を提案しているのか?」


「そうだよ。ここに来れば完成しているエルフの家があるから、エルフたちに頼めばとりあえず野宿は免れるだろう?どうせ村を新しく作らなきゃいけない状況なんだし、この森に作ってみるのはどう?」


ドワーフたちにこの森への移住を提案した。


前から考えていたわけではなく、即興的な提案だ。


この場所に必要だと思っていた娯楽を作るのに、ドワーフたちがいればいいかもしれないという考えが突然浮かんだからだ。


ドワーフたちの多彩な技術で、この場所にさまざまな娯楽を作ることができるだろう。


「ありがたい提案ではあるが、少々急すぎるな…理由はなんだ?」


「正直に言うと、僕がドワーフたちを必要としているからさ。この森に人を集めるためにいろいろ作らないといけないと思うんだけど、それをやるにはドワーフたちが最適だと思ったんだよ。」


「それが全てか…?村が廃墟になった僕たちが気の毒で誘ってくれたとか、そういうことではないのか?」


「いや…ここに移住しても、僕が何か支援できるわけじゃないし、そんな理由で誘うわけないだろう。むしろ、お前たちにとってはここまで来る方が苦労するんじゃないか?」


「単なる同情で誘ったわけではないということだな…」


『同情するなら金をくれ』という言葉もある。


だが、僕にはそんな金はない。


「もともと移住を勧めるつもりはなかったけど、どうせ村を作り直すならここに作るのもいいんじゃないかと思って提案してみただけさ。」


「…正直、この森の環境は僕たちが住んでいた場所よりもずっと良い。移住できるなら本当にありがたい話だ。」


「じゃあ、来るってこと?」


「少し時間をもらえないか?僕一人で決められる問題ではなさそうだ。みんなと相談してみないと。」


「もちろん、そうするべきだ。みんなと相談して、僕に教えてくれ。」


「分かった、スライムを使ってみんなにすぐ話してみる!」


アドソンさんは早速スライムを通じて念話を送った。


とりあえず、ここにいる8人のドワーフたちは前向きな反応を見せている。


あとは、獣人族の村に避難しているドワーフたちが同意してくれれば、ドワーフたちをこの場所に移住させることができる。


「エラ様…私たちはもうやられてしまいましたが、他の村も心配です…」


「そうです…フェンリルの生息地からドワーフの村の次に近いのが獣人族の村なので、そこまで襲われたら…」


アドソンさんがスライムを使って念話を送っている間、他のドワーフたちは心配そうにエラに話しかけた。


「だから、俺が行くんだ。そんなに心配しなくていい。」


「エラ様が行かれても、一日はかかるでしょう。エラ様が向かっている間に襲われる可能性もあるのに、本当に大丈夫ですか?」


「大丈夫だ。たとえ俺が行く途中で獣人族の村がフェンリルに襲われたとしても、多分大きな問題にはならないと思う。」


(…意外と獣人族って強いのか?)


獣人族…。実際に見たことはないけど、僕のイメージでは動物の耳と尻尾がついた人間みたいな感じだ。


それに、僕の中での獣人族はそんなに強いイメージはない。


「獣人族って強いの?」


「いや、めちゃくちゃ弱い。」


「なんだよ…じゃあ、なんで大丈夫だって言えるんだ?」


「力は弱いけど、あそこには魔物とある程度会話できる獣人がいるんだ。フェンリルが来ても、その獣人たちが出てきて上手く交渉すれば、食料を少し渡すくらいで済むと思う。」


「おお…獣人族って魔物と会話ができるんだな…」


「獣人族全員が魔物と会話できるわけじゃない。普通の獣人族は動物と意思疎通する能力を持っているけど、その中で時々、魔物と意思疎通できる特殊な個体が生まれるんだ。それで、村に魔物が襲ってきた時は、その人たちが魔物を上手く説得して追い返す形で村を守っているんだ。」


「それが可能なら、フェンリルを獣人族に任せればよくない?」


「コミュニケーションが得意なだけで、力では負けているから、彼らの村を守るのが精一杯で、他の村まで守ることはできない。それに、今は他のことに構っている余裕もないし…」


さっきも確かに獣人族は余裕がないと言っていた。


「さっきから獣人族も余裕がないと言っているけど、何かあったの?」


「実は、獣人族は元々モレノ山脈の薬草を採って売って生計を立てていたんだけど、最近全財産を投資して畜産業を始めたんだ。」


「適性に合った仕事を見つけたんだな。」


「でも、もう破産寸前だ。」


「…どうして?さっき動物とコミュニケーションができるって言ってなかった?」


「それが問題なんだ。家畜とコミュニケーションを取って育てていくうちに愛着が湧いて、売らなくなったんだ。売ったら屠殺されるのがわかっているのに、どうして売るんだと泣いて騒いでいる。」


「…さっき全財産を投資したって言ってなかった?」


「だから、彼らが破産寸前だって言ったんだ。全財産を投資したのに回収できないから…しかも家畜の餌代もずっとかかっている。」


「じゃあ、全く売らないのか?それならお金はどうやって稼いでいるんだ?」


「全く売らないわけじゃなくて、馬と卵は売っているよ。馬は馬車を引く用だから売っても死なないから売っているんだけど、牛や豚、鶏とは違って、買っても数匹だし、一度買ったら長く使うから、あまり需要がない、それであまり良い収入にはなっていないそうだ。」


「獣人族はそんな弱い心で、どうしてそんな仕事を始めたんだろう…理解できないな。」


「モレノ山脈には資源がほとんどないんだ。薬草でお金を稼ぐには限界があると感じたんだろう…だから自分たちの能力を活かしてお金を稼ごうと思ったんだと思うけど、獣人族はあまりにも優しすぎる。」


優しいと言うべきか、馬鹿だと言うべきか分からない。


「…念話が来た。」


アドソンさんが巻物を持って僕の方に近づいてきた。


獣人族の村に避難しているドワーフたちから連絡が来たようだ。

読んでいただきありがとうございます。

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