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ep. 31 : フェンリル

「なんだよ!何があったんだ!!!」


アドソンさんの緊急の呼びかけに、エラが素早く店に駆け込んできた。


「エラ様…私たちのドワーフの村が…」


アドソンさんは言葉を詰まらせながら、スライムから受け取った巻物をエラに渡した。


「これって何?」


アドソンから巻物を受け取ったエラは、すぐに内容を読み始めた。


「…モレノ山脈のドワーフ村が襲撃?」


これが、ドワーフたちがエラを必死に呼んだ理由だった。


モレノ山脈の魔物が、ドワーフの村を襲撃したらしい。


「…私たち、これからどうすればいいんですか?」


店の中は、ドワーフたちの沈んだ雰囲気でいっぱいだった。


(でもアルデンが言うには、モレノ山脈の魔物たちはエルフが管理しているって話じゃなかったか…?)


突然、アルデンとランディさんが話していた内容が頭をよぎった。


「エラ、ちょっと外に出て。」


沈んだドワーフたちを店に残し、エラを外に連れ出した。


「何よ?」


「モレノ山脈の魔物って、エルフが管理してるんじゃなかったの?」


「その話、どこで聞いたの?」


「アルデンが言ってた。」


「はぁ…あいつ、本当に口を縫ってやりたいわ…」


アルデンは確かにおしゃべりすぎるところがある。


「これ、もしかしてモレノ山脈でお前たちがいなくなったせいじゃないの?」


「まぁ…そうかも?」


「何の対策もなしにここに移住したのか?」


「うん。」


「…それ、無責任すぎないか?」


「今まで魔物を管理してたのは、ただ周りがうるさいのが嫌だっただけだよ。別に俺たちが魔物を管理して亜人を守る義務なんてないから。」


「お前たちの立場からすればそうだろうけど、それにしても…」


「俺たち、全員ここに移住しちゃったんだから、もうどうしようもないでしょ。」


「それでもドワーフの村が襲撃されたって聞いたら、放っておけないだろう?」


「かわいそうだとは思うけどさ…ドワーフたちに魔物から守るって約束したわけじゃないから、別に俺たちが動く理由もないよ。」


そうは言いつつも、エラの表情を見ると、ドワーフたちのことが気にかかっているようだった。


「言葉ではそう言っても、本当は気になってるんだろ?」


「まぁ…正直ちょっとかわいそうだね。ドワーフたちにはお酒もいっぱいおごってもらったし…」


「悪いけど、俺としてもモレノ山脈の魔物は何とかしてほしいんだ。」


「お前には別に関係ないだろ?」


「このままだと、人間たちがエルフをもっと悪く思うだろうからね。人間たちがエルフをずっと嫌い続けたら、ここに来なくなるじゃん。」


「モレノ山脈の魔物とエルフに何の関係があるって悪く思うんだよ…」


「アルデンがもうランディさんに『エルフがモレノ山脈の魔物を管理して、亜人と人間が安全に暮らせるようにしている』って余計なこと言っちゃったんだよ。」


「……」


「ランディさんがエルフのイメージを改善するために色々な噂を流しているみたいだけど、その中にはエルフがモレノ山脈の魔物から人間を守っているっていう話もあると思う。でも、もしモレノの魔物が人間の村に降りてきて事故でも起こしたら…」


もしそうなったら、ランディさんの努力が水の泡になってしまうかもしれない。


「はぁ…アルデン、あいつ本当に殺してやる…」


エラは仕方ないという表情でため息をつき、再び店の中へ戻った。


「エラ様…」


エラが店に戻ると、心配そうな顔をしたドワーフたちがエラを見つめていた。


「…被害状況は?」


「外にいる間、スライムでずっと知らせを受けていましたが、ドワーフの村は完全に廃墟になったそうです。」


「廃墟?完全に壊れてしまったのか?」


「はい…村を襲った魔物は【フェンリル】だそうです。」


フェンリル…マンガやゲームでよく登場する巨大な狼の怪物の名前と同じだ。


「ドワーフたちは大丈夫だったのか?」


「はい…幸いにも襲撃を事前に察知し、素早く避難したおかげで人的被害はなかったそうです。」


村は廃墟になってしまったが、人的被害がなかったことがせめてもの救いだ。


「フェンリルって、巨大な狼のような魔物なのか?」


アドソンさんに、僕が知っているフェンリルが合っているのか聞いてみた。


「そうだ。モレノ山脈で一番強い魔物だ…」


「エルフでも勝てないくらい強いのか?」


「…フェンリルは強力な魔物だけど、俺たちが勝てないような魔物なんていない」


エラはそんな質問をされることに少しプライドが傷ついたような表情で答えてくれた。


「でも、今までなんでそのままにしておいたんだ?事前に対処しておけばこんなことにはならなかっただろ。」


「管理が楽だったからそのままにしておいたんだ。フェンリルはモレノ山脈の魔物の中で一番強いから、フェンリルさえしっかり抑えておけば他の魔物も勝手におとなしくしてるし、あいつは頭が良くて言葉もよく理解するし…」


エラは話しながら、なんだか複雑な表情をしている。


「エラ様…フェンリルはどうして急に私たちの村を襲ったんでしょうか?」


「たぶん食料の問題だろうね…ドワーフの村がフェンリルの生息地の中で一番近い村だから。」


「それはわかってるけど…今までこんなことはなかったのに、どうして急に…」


「…実は、今まで俺たちがフェンリルの食料を確保してあげてたんだ。」


(え…?エルフがフェンリルの食料を?)

読んでいただきありがとうございます。

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