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ep. 25 : 工事現場

ランディさんが去ってから4日が経った。


普段は3日間隔で来ていたランディさんが、昨日は姿を見せなかった。


(ランディさん…もう来ないってことはないよね?)


ランディさんとエラが話していた内容が少し気になる。


ランディさんが何かを隠していることには気づいたけど、本人が隠したいと思うなら、特に深く追及するつもりはない。


「セレス」


「はい、兄貴」


今日の門番エルフは女性エルフの「セレス」だ。


以前、魔法でカップ焼きそば用の湯を沸かす時、やかんの下で火を吹いたエルフだ。


「ちょっと店を見ててくれない?家を建ててるところを見に行きたいんだ。」


「はい、行ってらっしゃい〜」


「ありがとう。エラのそばにいるから、もし客が来たらエラに念話で伝えて!」


「は〜い、わかりました〜」


セレスに店を任せて外に出た。


この前エラから聞いたところによると、エルフの家を建てている場所まで走って行っても30分ほどの距離だ。


だから今日は家から自転車を持ってきた。


ずいぶん前に買った安物の自転車だ。


安物だけど意外と丈夫で、今でもまだ使える。


「じゃあ、出発しよう!」


自転車に乗り、昨日エルフとドワーフが作った道を走った。


舗装された道路じゃないから、自転車に乗るとだいぶ揺れるかと思ったけど、思ったより揺れずに大丈夫だった。


「…この速度なら15分くらいで着くかな?」


.

.

.


エルフたちが家を建てている現場に到着した。


自転車で来たら10分ちょっとで着いたみたいだ。


このくらいなら行き来するのに悪くない時間だ。


(…一生懸命だな)


エルフとドワーフたちは、僕が来たことにも気づかず工事に集中していた。


「来たか?」


他のエルフたちと違って遊んでいたエラが僕を迎えてくれた。


「みんな忙しそうだな?」


「新しい家を手に入れることになるんだから…みんなやる気満々だよ」


「そうか?でもお前はなんで遊んでるんだ?」


「俺の家は最後に建てることになってるから、今はやることがない」


「普通は親分の家を先に建てるもんじゃないのか?」


「アルデンの奴が、俺が言ったことを全部広めやがったから…、見栄え悪く最初に俺の家を建てろとは言えないだろ…」


エラはそう言いながら、真剣に働いているアルデンを睨みつけた。


「今は手が足りないから放っておくけど、家が全部完成したらぶっ殺してやる…」


アルデンは、やがて来る運命を知らず、笑顔で資材を運んでいる。


「…とにかく、それで自分の家を最後に建てるように言ったんだ。」


エラはアルデンを睨んでいた視線を外し、苛立った様子で言った。


「だから倒れた奴を気にしろって、まったく…自業自得だよ。」


「あーうるさい!見に来ただけだろ?黙って見物してろ!」


「わかったよ」


エラの苛立った言葉を聞き流し、周りを見回し始めた。


すると、すでに完成しているように見える家が目に留まった。


「ん?工事を始めてから数日も経ってないのにもう家を建てたのか?」


「まず寝る場所が必要だから、エルフとドワーフが協力して一日で急いで作ったんだ。乾燥の作業が必要だったから今まで使えなかったけど、今日から使えるってさ。もう野宿生活は終わりだよ!」


ドワーフが到着してからも、ほとんどのエルフは野宿生活をしていた。


エルフが森で野宿していた数日間は、美しいと名高いエルフたちが毎朝、見事なボロボロの姿で現れるという珍しい光景を見ることができた。


建てられた家を見ると、とても広くて大きく、他の家が完成するまでエルフたちが集まって寝るには十分なようだ。


「この家は誰が使うの?」


「そこは仮に作っただけだから、家が全部建ったら倉庫にするか空けておくつもりだけど?」


「…倉庫にするにはもったいなくない?」


今すぐ4人家族が住み始めても不自由がないほど広く、清潔に見える。


「一生住む家なんだから、この程度じゃ満足とは言えないさ!ここに一生住むんだから、もっと大きくて豪華に作るんだよ!」


確かに、エルフが持ってきた荷物の量を見ると、少し大きな家では足りないだろう。


「じゃあ、お前の家はすごいことになるんだね」


「もちろんさ。期待してて!」


エラと会話しながら、ドワーフたちが家を建てる様子を見ていると、僕たちの世界とはまったく違うと感じた。


その理由は、ここでは魔法を使って建てるため、すべてが非常に速いからだ。


壁を作るときも、ドワーフたちが土の魔法を使って5秒で壁を作ってしまう。


実は、ドワーフたちは土の魔法を扱う技術が他のどの種族よりも優れているらしい。


「…あ!あれは何だ!!」


工事が進行中の現場で、大きな板がたくさんの荷物とドワーフを乗せて空中に浮かび上がった。


「『浮遊石』だ。魔力を流し込むと上に浮かぶんだ。主に重い荷物を上に運ぶときに使う。」


「うわ…こんなものもあるんだ。」


「実は、あれを移動させるために先に道を作ったんだ。」


「そうだね…あれは道がなかったら運べなかっただろう。」


遠くから見ても、あれは非常に大きくて重そうに見える。


「…でも、空中に浮かせられるなら、道を作らずに浮かせて運ぶこともできたんじゃない?」


「ダメだ、垂直にしか動かせないから。」


「上下にしか動けないの?」


「うん、それ以外の方向に移動させたかったら、力で動かすしかない。」


「そうか。」


浮遊石から興味を失い、再び周りを見渡すと、隅に倒れている一本の木が目に入った。


「もしかして…?」


「そう!俺が倒した木だよ!」


「なんでまだ木材として使ってないの?」


「これは俺の努力の結晶だから、俺の家を作るときに使うつもりだ!」


「あれで僕たちが住む板小屋を作ろうとしたら、エラ様に殺されそうだったんだ。」


現場から少し離れてエラと会話していると、現場を指揮していたアドソンさんがこちらに近づいてきて言った。


「アドソンさん、お久しぶり!元気にしてた?」


工事が進んでいる4日間、エルフたちはよく会ったが、ドワーフたちは工事現場に板小屋を建ててそこで全てを解決していたため、全く会うことがなかった。


「うーん、食事がちょっとまずいことを除けば、まあまあ元気だ。」


ドワーフたちが数日間滞在する板小屋の位置を決めるとき、食事を僕たちの店で解決できるから、店の近くに板小屋を建てるのはどうかと提案してみたが、ドワーフたちは断固反対した。


エルフの家を作りに行くたびにエルフたちが自分たちを持ち上げて運ぶことになるなら、それよりもまずい食事をする方がマシだという理由だった。


「たまには僕たちの店に来て食べてよ。僕が美味しいものを作るから。」


どうせインスタントや冷凍食品みたいなものだろうけど、今食べている食事よりは良いだろう。


「ハハハ!それはありがたい!でも、今の食事でも十分だ。美味しい酒と一緒に食べれば何でも美味しくなるからね!」


「酒…?それ、ドワーフ村から持ってきたの?」


「その通り!ドワーフ村の最高の醸造職人が作った酒だ!」


ドワーフ職人が作った酒…一度飲んでみたい。


「君はまだ飲んだことがないだろ?すごく美味しいよ!」


エラがからかうように言った。


「…君は飲んだことあるの?」


「うん。おとといも飲んで、昨日も飲んだけど。」


「エラ様には会うたびに最高のものを厳選してあげるから、今回も1樽あげたんだ。」


「いいな…」


エラに少し分けてほしいという目線を送ってみた。


エラも僕と目が合い、僕の目線を正確に読んだような表情だ。


「…何をジロジロ見てんだ?目を逸らせ。」


しかし返ってきたのは明らかな拒否の反応だった。

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