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ep. 23 : どこかから聞こえる悲鳴

その後、アルデンとランディさんの会話は続いた。


僕が無理に繋げたと言った方が正確かもしれない。


ランディさんはアルデンと話すたびに、エルフに関する噂が本当だったと確信しているようだったが、それでもエルフへの警戒心は少し和らいだように見えた。


「つまり、結局噂はほとんど真実なんじゃないか?特に誇張されたところはないと思うけど?」


アルデンからいろいろ聞いて、ランディさんが出した結論だ。


そして、ランディさんとアルデンの会話を聞いた僕の結論も同じだ。


しかし、アルデンは少しもどかしそうな表情をしている。


「まだ理解していないんだな…短命の人間の視点ではそう見えるかもしれないが、違うんだ。エルフがどれだけ長く生きてきたか知っているか?」


「長く生きてきたことは知ってるけど、正確にはよく…」


「3,000年以上だ。お前が俺たちと同じ力を持ちながら3,000年生きたら、生涯を善人で過ごせたと思うか?」


「そ、それは…」


「ある人間たちは俺たちを排除しようとしたし、ある人間たちは俺たちを利用しようとした…そんな人間たちと3,000年生きてきて、俺たちが一度も人間に敵対した瞬間がなかったと思うか?」


(この言葉は…環境がエルフをこうさせたということか…?)


これまでエルフを単なる暴力的な悪党だと思っていたが、アルデンの話を聞いて考えが少し変わった。


「そして、人間が知らないだけで、俺たちもそれなりに良いことをたくさんやってきたんだ。」


「例えば?」


「人間は知らないだろうが、モレノ山脈の凶暴で強力な魔物たちを、これまで俺たちが抑えてきたんだ。だからモレノ山脈の亜人たちもほとんど被害を受けずにそこに住むことができたし、魔物が人間の国に下りてくることもほとんどなかったんだ。」


そういえば、前にモレノ山脈から降りてきた魔物をエルフたちが処理したと、ランディさんから聞いたことがあった。


「…それは初耳だな」


ランディさんも意外そうな表情だ。


「今のエルフに関する噂は、3,000年分の出来事が全部まとめられたものなんだ。もちろん、あの噂が全くの嘘だとは言わないけど、それだけでエルフを判断するのは少し不公平だ。もし僕が同じように、人間が3,000年の間に起こした戦争だけを取り上げて、人間は単に暴力的で残忍な種族だと言ったら、お前はそれを認められるか?」


「…そう言われると、反論できないな」


「みんな俺たちを恐れているから、人を殴ったとか村を焼いたとか、そういう話だけが広まるんだ。でも、俺たちが魔物から人間を守っていることなんて、ほとんど知られていないんだよ。でもそれは仕方ない、力を持つ者の宿命だと思ってる。」


「聞いてみると…少し誤解してたかもしれないな」


ランディさんの固まっていた表情が、何かを悟ったかのように変わっていた。


「そうだよ、ランディさん。エルフたちはちょっと好戦的で性格もちょっと悪そうだけど、実際には悪いやつらじゃないんだ。」


「…兄貴、俺たちが好戦的なのは認めるけど、性格が悪いってのはちょっと傷つきます。」


「ほら見ろ、ランディさんの前で性格悪いってはっきり言っても、ただちょっと傷ついたって言うだけだろ。こういうところを見ると、性格もそんなに悪くないと思わないか?」


「確かに、3,000年もあればいろんなことが起こる時間だな…僕がエルフをあまりにも一面的に見てたみたいだ。」


「そうだ、理解してもらえてよかった。これから俺たちもこの森に住むことになったし、お前もここによく来るって言ってたから、これからもよろしく頼むよ。」


「そうだな、アルデン!今日はいろいろ教えてくれてありがとう。」


ランディさんのエルフに対する偏見はかなり薄れたようだ。


そして、僕もエルフについて多くのことを学んだ時間だった。


.

.

.


ランディさんはエルフへの偏見が消えた後、アルデンと本格的に話を交わした。


短い会話だったが、その会話で二人は少し近づいたように感じた。


「気をつけて帰れよ、ランディさん。」


「ああ、ありがとう広志さん…アルデンも元気でな。」


「そうだな、ランディ。気をつけて帰れ。」


ランディさんは今日もガムやキャンディのようなものをいっぱい買い込んで、馬車に積み込んだ。


ラーメンやお菓子も勧めてみたが、まだ確信が持てないのか、購入しなかった。


(まあ…ラーメンを売っても、異世界の人たちは作り方も知らないから、売れないかもな…)


「うわああああああああああああああ!!!!!」


「じゃあ出発…ん?どこかから悲鳴が聞こえるんだけど?」


ランディさんが馬車に乗って出発しようとしたその瞬間、どこからか小さな悲鳴が聞こえた。


「…一人の声じゃないな?」


耳を澄ましてみると、一人の悲鳴ではないことがわかった。


ランディさんは声の出所を探そうとあたりを見回したが、見つからなかった。


そして小さかった悲鳴は、ほんの少しずつ大きくなりながらこちらに近づいてきた。


「…これ、ドワーフたちの悲鳴か?」


「どうやらそうみたいですね、兄貴」


悲鳴が聞こえる場所は一つしかなさそうだったので、そう判断するのは簡単だった。


エルフやドワーフたちが作業を終えて、こっちに向かってきているようだ。


「あのぐらいの音だと、どこまで来てるんだろう?近くはなさそうだけど」


「悲鳴が聞こえるってことは、半分以上は来た感じじゃないですかね」


悲鳴を聞きながらアルデンと一緒に彼らがどれくらい近づいたかを推測していると、突然悲鳴が止まった。


「…お!悲鳴が止まった!」


あたりを見回しながら声の出所を探していたランディさんは、悲鳴が止まると少し不思議そうな表情を浮かべた。


おそらく声が消えたのは、ドワーフたちが気絶したからだろう。


「大丈夫、ランディさん。そのまま行ってもいいよ。気にしないで。」


「大丈夫って?悲鳴の声…しかも複数の悲鳴が聞こえたのに?」


「大丈夫、たいしたことじゃない。むしろ早く行ったほうがランディさんも楽になるよ。」


「いや、でも…!」


「見たことない人間だね?」


ランディさんが面倒なことに巻き込まれないように早く送り出そうとしたが、いつの間にかエラがランディさんの馬車の横に来ていた。


「お帰りなさい!姐さん!」


「…姐さん?」


ランディさんはアルデンがエラを姐さんと呼ぶのを聞いて驚いたようにエラを見た。


「うわ…びっくり…もっと気配を出しながら来てよ…」


「だから今声を出したんじゃないの。誰なの?客?」


「ランディさんってよく来る商人だよ。」


「たまに来る唯一の客?」


「唯一じゃないよ。今は君たちも僕の客なんだから。」


「そういえばそうだね。」


「君一人なの?他の子たちは?」


「来てるよ。俺が他のやつらより早いから先に着いたんだ。」


モヒカンも他のエルフたちより早いと言っていたが、やはりエラには勝てないようだ。


「広志さん…」


「お、ランディさん。この際だから紹介するね、こちらは…」


「兄貴!ちょっと待ってください!」


「うん…?あ!礼儀作法?」


「はい、とりあえず僕は店の中でランディと話をします。」


「…もしかしてエラ様?」

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