ep. 21 : 不思議な木
「さあ!ここから俺たちの家を建てる場所まで道を作るぞ!ここから木を除けつつ移動するんだ!」
「姐さん!木を除けるって、この木を倒せばいいんですか?」
「いや、まずは手本を見せてやろう」
エラは木に向かって拳を放った。
[ドカン!]
「こうすると、1秒もかからず木が根っこから枝の先まで全部砕けて粉になるんだ!こうすれば木を切り倒して根を取り除くより、はるかに時間を短縮できるだろう」
「おお!!エラ様!これは初めて見る魔法ですね!何の魔法ですか?僕たちにも教えてもらえませんか!?」
アドソンさんが興奮しながらエラに尋ねた。
「魔法じゃない。ただ力で殴っただけだ」
「あ…そうですか……」
アドソンさんは魔法ではないという言葉に少しがっかりしたようだった。
「姐さん!」
「なんだモネ!」
「何かコツがあるんですか?」
「そんなのない。ただ強く殴ればいいんだ」
「そんなに簡単だと…?」
エラの説明を聞いたモネは、すぐ隣の木で試してみた。
[ドカン!]
「うわ!本当に強く殴ったら全部砕けてしまいました!根も残らなかったです!」
「姐さん、エルフとして長い間生きてきましたが、こんなふうに殴っただけで木全体が砕けるなんて…こんな木は初めてです。」
モヒカンは舞い散る木の粉を触りながら、不思議そうに言った。
「…なんだよ?ただエルフが強すぎて砕けただけじゃないのか?」
「兄貴…僕たちがいくら強くても、拳一発で木を根っこから枝まで全部完全に砕いて粉にするのは難しいです。部分的なら可能でしょうけど。」
(なんだこれ?昨日エラは特におかしいと思ってなかったから普通のことだと思ったんだけど…?)
疑問に思い、エラを見つめた。
「…そ、そうだよ!普通なら珍しいことだよな…!そうだろう?モヒカン?」
俺と目が合うと、戸惑ったようにモヒカンに問い返しているのを見ると、エラは昨日木が砕けたのを見ても全くおかしいと思っていなかったようだ。
「はい、姐さん、これは特別な木のように見えます。」
「エルフの特殊なスキルかと思ったけど、そうじゃないなら確かに不思議だな…僕もやってみよう。」
アドソンが手をほぐしながら木の前に立った。
「エイ!!!」
[パクッ!]
アドソンが拳で木を殴ると、衝撃を受けた木は折れて倒れ始めた。
[ゴトン!]
砕けはしなかったが、衝撃を与えた部分が折れて倒れた。
(さすがドワーフ…強いな)
エルフが強すぎて少し麻痺していたが、拳一発で木を倒すなんて、すごい怪力だ。
「今度は砕けなかったな…エラ様、やっぱりこれはエルフだけができる特別なスキルじゃないですか?」
「いや。昨日確認してみたけど、ただ力の問題だ。エルフの力で強く殴れば砕けて粉になるけど、それよりも弱い力で調整して殴ったら、アドソンが殴ったみたいに折れた。」
「やっぱり姐さん!この森の木に何かおかしいと感じて事前に確認したんですね!すごいです!」
「…そうだ!周囲の異変を感じて事前に備えるのが、群れを導く者の役割でもあるから…!」
「僕は全然感じませんでした!やっぱりすごいです!姐さん!」
「お前も副親分としてもっと感覚を磨くんだ!」
「はい、姐さん!精進します!」
エラはただ箸を上手に使いたくて練習していたが、思いがけずモヒカンの尊敬をさらに引き出してしまった。
「エラ様の言葉によれば、普通の力ではダメで、エルフたち程度の力が必要ということですね。」
「そうだ、たぶんこれが可能な種族はエルフ、ドラゴン、そして一部のオークくらいしかないだろう。」
「ドワーフとして生きてきて色々な木に触れてきたけど、こんな木は初めてです。」
アドソンさんの言葉を聞いて、再び木を詳しく観察した。
少し高くそびえ立っているが、特別なものには見えない木だ。
「見た目は普通の木なのに…」
「外見はそうだが…強い衝撃を受けると粉になる性質があるし、封印された森の木は昔から四季折々変わらず緑で、何か違う感じを常に受けていた。俺の考えでは、昔に絶滅した木が封印された森にだけ残っていたのではないかと思うけど…確信はない。ただ、今確実に言えるのは、封印された森の木はこの大陸のどこにもない木だということだ。」
「さあ!再び集中!!時間がないから、木の話は後にして、今はまず道を作ることに集中しよう!」
そうだ、木のせいですっかり忘れていたが、今は道を作るために集まっていたんだ。
「役割を決めるぞ!まずモネを除いたエルフたちは、俺について来ながら木を殴って粉にしろ!」
「はい!わかりました!」
「ドワーフたちは後についてきて、木が消えて穴が開いた土地に魔法で土を埋めて、荷車が通りやすい道を作れ!アドソン!ドワーフたちはまだ寝てるのか!?」
「はい…まだ気絶中です。」
「急いでるから、起こせ!」
「はい!わかりました。」
アドソンさんは急いで気絶していたドワーフたちを起こし、やるべきことを説明した。
「姐さん!私は何をすればいいですか?」
木を殴る役割から除外されたモネが尋ねた。
「俺たちが木を粉にしたら、お前は風の魔法で粉を飛ばして道をきれいにし、時間が余ったらドワーフたちを手伝って穴に土を埋めるんだ!」
「はい!わかりました!」
「エラ様、ドワーフたちを全員起こして、役割を説明しました。」
「よし!ドワーフたちもみんな起きたみたいだし、すぐに始めよう!」
エラの言葉が終わると、モヒカンが部下たちの前に出た。
「みんな、アルデンから聞いた通り、姐さんは早く家を完成させたいと思っている!でもそれは姐さんが楽をしたいからじゃない!みんなのことを思ってのことなんだ!さっきの木の異変に気づいて確認したように、姐さんは常に俺たちを考えて、俺たちを守るために最善を尽くしている!俺たちはその姐さんの気持ちに報いなければならない!だから、みんな頑張って姐さんの気持ちに応えよう!!!!!」
「わああああああああ!!!!!」
「行くぞ!!!姐さんのために木を全部粉にしよう!!!!!!」
「わああああああああああああああああ!!!!!!!!」
モヒカンの演説を聞いたエルフたちは、歓声を上げて飛び出し、森の木を粉にし始めた。
「…アルデンこの野郎……、殺してやる……」
エラはアルデンにした嘘が他のエルフたちに知られたことが恥ずかしかったのか、顔が少し赤くなった。
そして、木を粉にしているエルフたちに言いたいことがあるのか、木を取り除くことに集中しているエルフたちに近づいて叫んだ。
「そこじゃない!!!!!」
エルフたちの気合は良かったが、方向が間違っていた。
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