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ep. 17 : デジャヴ

「エラの背中に乗って5分後、エラが見ておいた場所に到着した。


5分というとそれほど遠くないように感じるが、エルフのスピードなら話は別だ。


ここまでエラに背負われて来る途中で、エラの部下たちがどうしてドワーフが死にそうな状態で到着するかもしれないと言っていたのかが理解できた。


まるで、頂上から5分間落下するジェットコースターに乗ったような気分だった。


「…お前が見ておいた場所ってここか?」


「店から西の方向で、エルフの速度なら5分以内に店の出入り口まで戻れる距離にしたんだ。西にしたのは、店の出入り口を常に確認できるようにするためだよ。」


西が店の出入り口のある方向だ。


「場所はいいけど…家を建てるには、木を切り倒さないといけないんじゃない?」


家を建てる場所なのに、木を一本も切っていない。


「うーん…そうか?どうせドワーフたちが来たら、勝手にやってくれるだろうし、この木を切って家を建てるときの木材としても使うだろうしな……。」


「それでも、先に切っておいた方が家がもっと早く完成するんじゃないかな。お前、アルデンには優しい顔して、早く家を建ててあげたいって言ってただろ?」


「それは忘れてくれ…。」


「あの時の顔…本当に鳥肌が立ったよ。美しいけれど恐ろしい妖怪を見ているようだった。」


「……木と一緒にお前の首も切り落としてやろうか?」


普段から険しい顔をしているエラの表情がさらに険しくなった。


ちょっとふざけすぎたようだ。


「う…とにかく、お前は今力を抜く必要があるだろう?今木を切っておけば、力も抜けるし、家も早く建てられて良いじゃないか。切った木は横に集めておけば、ドワーフたちが木材として使うだろうし。」


「うーん…それもそうだな。今は体を少し動かす必要もあるし。」


「じゃあ、とりあえず道具を取ってこないとな…ノコギリとか斧とかある?」


「そんなのないけど…殴ったら倒れるんじゃないか?」


エラはそう言うや否や、目の前にある木に向かって拳を放った。


[ドカン!]


すると、木は根元から枝まで全部爆発して粉になった。


「…木を消すのはいいけど、木材として使えるようにしてくれよ。」


「…俺もこうなるとは思わなかった。」


まあ、この力なら道具なしで木を片付けられるだろう。


「次はもう少し弱く打ってみて。」


「わかった。」


エラはすぐに他の木に向かって拳を振り上げた。


[コツン!]


「……あれ?」


木に何も起こらず、エラが戸惑っている。


「…お前、本当に力加減が苦手だな?」


「し…仕方ないだろ!今までの人生でこんな力加減なんて必要なかったんだから!!!」


「お前の問題は繊細さだな。箸の使い方だけじゃなく、何でもかんでも弱いか強いかの二択しかなくて、繊細な力加減ができない。」


「どうすりゃいいんだ?」


「特に思い浮かぶ方法はないけど、練習するしかないんじゃないか?」


「…よし!どうせここにある木を全部片付けるんだから、この木で特訓だ!!!」


[ドカン!]


[コツン!]


[ドカン!]


[コツン!]


[コツン!]


.

.

.


エラの特訓は夕焼けが沈むまで続いた。


「これでこれ一つだけになったね。」


残っている木はただ一本。


地面にはエラが作り出した木の粉が舞っている。


敷地内の数多くの木が粉になって消えたが、まだドワーフたちが木材として使える木は出ていない。


「…まだ木はたくさんある。」


「日が沈もうとしているのに、これを最後にしよう。敷地外の木に手を出し始めたら、終わりがなさそうだし…。」


「分かった…ふう……。」


エラは目を閉じて、深呼吸を吐き出した。


「何千年も生きてきて、今日のように努力したのは初めてだ…。」


エラはそう言いながら、拳をぎゅっと握りしめた。


「これで努力の成果が得られるといいな…いよっ!」


エラは言い終わると、すぐに握りしめた拳を木に叩きつけた。


[パクッ!]


(あれ…? 今回は何か音が違うぞ?)


[ゴトン!]


エラの拳に当たった最後の木は後ろに倒れた。


「…やった!」


「…お疲れ様。結局成功したね。」


正直、できないと思っていたけど成功するなんて少し誇らしいよ。


「やったあああああ!!!ついに!!!成功だ!!!!!!!!」


「おめでとう、一段階成長したね。これで箸使いも上手くできるようになるよ。」


「ありがとう!」


エラは世界を手に入れたかのような笑顔で言った。


今まで見た中で、最も美しい笑顔だった。


「じゃあ、暗くなる前に早く戻ろう。」


「とりあえずこの木を横にどけるね!」


エラは自分が倒した木を大切に持ち上げて、隅に移動させた。


「さあ!戻ろう、背負ってあげる!」


「え…僕は歩いて行くから……。」


「もうすぐ完全に日が沈むよ。日が暮れたら人間の目には暗くて何も見えなくなるよ。お前の森で遭難したいのか?」


.

.

.


仕方なく再びエラの背に乗って、店に到着した。


「ちょっと気分が悪い……。」


「早く入ろう!訓練の成果を見せるよ。今なら何でも上手くできる気がする!」


[ギーギー]


「いらっしゃいませ!姐さん!兄貴!」


「お~、フローラ!特に何もなかったか?」


「はい、姐さん!何か良いことがあったんですか?楽しそうに見えます。」


「フローラ…エルフでも人間でも、生きていく上で、どんなことにも努力することが大事だと思う。これからは、何があっても諦めずに頑張りなさい!」


「はい?ええ…わかりました、姐さん。」


フローラは突然、何を言っているのかわからないという表情で返事をした。


「じゃあ、やってみようか!」


エラは緊張した表情で箸を持ち上げた。


「緊張しないで…さっきやってた通りにやろう…。」


一人で静かに呟いていたエラは、すぐに箸で皿の上の豆をつかんだ。


幸いにも、まだ豆は跳ねていなかった。


(これでうまく持ち上げられれば成功なんだけど、果たして…。)


大したことではない箸使いだが、これまでの過程をずっと見守ってきたせいか、僕も無駄に緊張する。


「ふう…。」


深呼吸をしたエラは、豆をつかんだ箸を持ち上げた。


そして…豆は完璧に持ち上げられていた。


「…よし。」


エラは興奮せずに、豆を別の皿に移動し始めた。


そして、豆を落とさずに別の皿に移すことに成功した。


「成功したね!」


「…うん。」


(え?もっと喜ばないの?)


思ったよりも淡白な反応だ。


「まぁ、この程度は簡単だ!」


冷静に見せようとしているようだが、エラの口元は微かに動いている。


おそらくフローラが隣にいるせいで、親分の威厳を保とうとしているのだろう。


「姐さん、これは何ですか?」


後ろで扉を守っていたフローラが興味を示した。


「これは箸という、扉の向こうの食事道具だ。」


「あ〜、さっき兄貴が使っていたやつですね?面白そうだけど、私も使ってみてもいいですか?」


「うん、やってみて。広志、フローラに教えて。」


「じゃあ、使い方を教えてあげるから、僕の手を見て。」


フローラに箸の使い方を教えてあげた。


「別に難しくないですね。」


どこかで見たような反応だ。


「そうだ…じゃあ、今度はこの皿の上の豆を別の皿に移してみて。」


「それくらい簡単ですよ〜!」


やっぱり見覚えのある反応…まるでデジャヴが起きたかのように同じ反応だったが、結果は違った。


フローラはとても簡単に豆を別の皿に移した。


「本当に難しくないですね!」


「…プ、プローラ…お前…!」


あまりにも簡単にやり遂げるフローラの姿に、エラはかなり衝撃を受けているようだ。


「…思ったより上手だね。」


「はい、簡単でしたよ?」


「僕は君が力加減ができなくて豆を持ち上げられないと思ってたんだ。」


「兄貴!バカにしてるんですか?そんな力加減もできない人なんていませんよ!」


「…バカ?」


エラは「バカ」という言葉に反応した。


僕の勘違いかもしれないが、エラの周囲の空間が歪んでいるような気がする。


「と…ともかく、二人とも成功したね…おめでとう!」


「兄貴、たった豆を移動させたくらいで祝われることなのでしょうか?」


フローラは少し鈍感なようだ。


「…そういえばフローラ、俺が戻ったらエルフ族のじゃんけん最強決定戦をすると言ってたよね?今やってみる?」


「はい、姐さん!他のことはできなくても、これだけは私が勝ちます!」


「『これだけは』ね……おい広志、お前が審判をやれ。」


「う、うん…。」


鈍感そうな明るいフローラと、いまだに周囲の空間が歪んでいるエラの間に微妙な空気が流れている。


「じゃあ始めるよ。二人とも準備はいい?」


「私は準備できました!」


フローラは相変わらず鈍感に明るい。


「エラも準備できてるよね?」


「…審判。」


エラが僕を呼んだ。


「どうした?何か聞きたいことでもある?」


「このゲームは手でグー、チョキ、パーを作って使って対決するゲームだよね?」


「え?うん、そうだね。」


どこかで聞いたような質問…急に不安感が襲ってくる。


「手を上に上げて、下に下ろしながら手の形を決めるんだよね?」


「そういうことになるけど……。」


「…わかった、始めよう。」


エラはじゃんけんのルールを確認して姿勢を整えた。


(これもデジャヴなのかな……。)


「負けませんよ!姐さん!」


「早く始めて。審判、お前はもう家に帰る時間だから、一発で決めてあげる。」


…結局、審判の権限で試合をキャンセルした。

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