ep. 10 : じゃんけん 2
モヒカンとモネの後、2人ずつ6チームの1回戦が全て終了した。
1回戦を観戦した感想としては、じゃんけんの新たな境地を見た感じだ。
なぜエラが運で勝負するゲームではないと言ったのかがわかった。
僕がじゃんけんぽんを叫んだ短い瞬間に、エルフたちは手を上下に振って手の形を一瞬にして何度も変えた。
相手が下ろしている手の形を見て、すぐさま手の形を変えたのだ。
また、心理戦も入り、手の形を決めなければならない瞬間の直前までグーを維持していたのに、相手が最後の最後にパーに変えた瞬間、一瞬でチョキに変えて勝った試合も見た。
これはもはや運で勝負するゲームではなく、身体能力と動体視力を使う心理戦になったのだ。
1回戦で敗退した6人は落ち込んだが、次は負けないぞと、自分たちでじゃんけんをしながら練習を重ねた。
そして、そこでモヒカンは一度も負けなかった。
「くっ…!こんな簡単なゲームだったなんて…!俺にとって絶対的に有利なゲームだったのに…。」
モヒカンは見た目と同じように、実は身体能力がとても良いらしい。
名前も体も本当に直感的な奴だ。
そして、さっそく始まった2回戦。
1回戦と同様、勝者6人が2人ずつ3チームに分かれた。
ここで勝った3人は森に残ることが確定し、残りの一席をめぐって負けた3人が再戦することになる。
森に残れるかどうかが決まる試合だけに、みんな真剣な表情だ。
試合が始まり、再び激しい戦いが繰り広げられる。
勝者たちは1回戦の経験で成長し、より精巧な手の入れ替えや心理戦、そして相手を騙す動きまで見せて勝負を繰り広げる。
じゃんけんぽんを叫ぶ短い瞬間だが、その瞬間はまるでボクシングの試合を見ているような迫力を感じることができた。
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2回戦の勝負が終わり、勝者3名が決定した。
ちなみにモネは無気力に敗北した。
1回戦で勝負というよりも、事実上モヒカンにタダで勝ってしまい、他のエルフに比べ経験不足だったことが敗因と思われる。
残すはあと一席のみ。
敗れた3人の表情はさらに悲壮感に満ちている。
顔に微塵の笑みも見られない。
特にモネは2回戦であまりにも無気力に負けたせいか、爪を噛みしめながら不安そうな表情を見せている。
眼光がなく、瞳孔も大きく揺れているところを見ると、かなり焦っているようだ。
「…もう……方法が…ない……方法が………。」
一人で爪を噛みながらつぶやくが、ちょっと怖い。
「…さあ、最後の試合を始めるから、3人はこっちに来い」
2回戦で負けた3人を呼び、最後の試合の準備をした。
「…審判」
「ん?」
眼光が戻ってきたモネが僕を呼んだ。
「このゲームは、グー、チョキ、パーを作り、それを使って対決するゲームですよね?」
「え? ええと…そうだね」
「手を上下に振って、手の形を決める方式ですよね?」
「そう」
「…わかりました、始めましょう」
モネは突然じゃんけんのルールを確認し、何かを理解したかのような表情で姿勢を正した。
(何かを見つけたのか? まさかじゃんけんの抜け穴? そんなものがあるのか!?)
そんなことはないと思いつつも、単純な運ゲーだと思っていたじゃんけんを、エルフたちが迫力満点のスポーツの域にまで引き上げているのを見て、普通の人間にはわからない何かがあるのかもしれないと思った。
「さあ、始めよう!じゃんー」
3人のエルフが手を動かし始めた。
目に見える派手な手さばき…。普通の人間である僕は、その全ての動きを見分けることができないのが残念なほどだ。
(そうだ!モネを見てみよう!)
何か悟りを開いたかのようなモネのことを思い出し、視線をモネに向けた。
モネは拳を握っているだけで、変化は見られない。
しかし、それもフェイントかもしれない。じゃんけんは最後に動きを止めた時が重要なので、このままでは最後にどんな動きを見せるかわからない。
「…けんー」
他のエルフたちが派手に手を振る中、モネは相変わらず拳を握り続けている。しかし、今までと違うのは、その拳が少しずつ上へ上がっていることだ。
(…あれ?これってまさか?)
「…ぽんー!」
「死ねえええええ!!!!!!!!」
僕が「ぽんー!」と叫んだその瞬間、モネは空高く上げた右拳を右側のエルフの頭頂部にそのまま叩きつけた。