第1話 ダンジョンマスター
「ふわぁ~……むにゃむにゃ……眠たい……」
彼は眠たいと感じながらも目を開けた。それは彼としては朝のいつも起きている時間だからかもしれない。それが無ければ彼はもっと長時間眠っていたいと感じていた。
しかしそんな彼の眠気は目を開けた結果、その景色への疑問によって徐々に晴れていく事になる。
「……なんか低くない?気のせいかな?」
始めに気が付いたのはいつもとは違う視線の低さ。明らかにいつもより低くなっていた。錯覚や勘違いでは収まらないそれを"気のせい"かと一瞬よぎるも今度は身体全体の違和感に気が付く。
「なんか……身体が上手く動かない? というか今って四足歩行になってない?ええ?」
そこまで気が付いて彼は完全に眠気が覚め混乱した。視線も低く身体も動かずに四足歩行。彼は訳が分からずも近くに泉を発見し何とかそこに行き自身の姿を映し出す。するとそこに映っていたのは、
「子豚?……え?子豚?」
彼はなんと子豚になっていた。普通であれば混乱はMAXとなる場面であるが彼はめんどくさがりの怠け者だった。
「……まあいいか。考えるのもめんどくさいし。 そんなことよりもここはどこなんだろう?」
彼は自身が子豚になっていたという現実を考えるのがめんどくさいという理由で思考を放置。そんなことと言い放ち周囲の探索に移った。
「洞窟の部屋? 出口はないけど台座?はあるね」
そこは洞窟のような場所で出口となる扉や穴は無い。あるのは彼が自身を確認した泉と台座のみ。その台座にはなにか乗せられていることに気が付いた彼は台座に向かった。
「よいしょよいしょっと。なんか四足歩行も違和感なく自然に歩けるようになってきたかも」
そんなこんなで彼は台座の下までやってきた。
「う~ん……ここまで来たはいいものの当然届かないしな~。でも他には何もないし……」
彼はじいっと台座を見つめる。すると何を思ったか台座に向かって頭突きをし始めた。
「……えい!」
ドン!
その一見意味のない行動は台座の上に置かれていたとあるものを落とすことに成功した。
「いててて。 何かあったしこれで落ちてくれた、ら!?」
ガン!
台座に向かって頭突きをしたために台座の真下にいた彼は落ちてきた水晶のようなものが豚の頭部に激突。その衝撃で彼は気絶する。しかしそれが引き金となり物語は動き出す。
『登録完了。あなたをダンジョンマスターとして承認いたしました』
その言葉を受けて気絶した彼の身体に水晶は溶け込むように入っていく。これによって彼はダンジョンマスターとなった。
それから数時間程が経過して彼は目を覚ます。
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「うう……ううん……」
身体を起こす。この時はまだ起きたばかりだったからか何も理解していない。
「あれ?ここは?どうして俺はこんな洞窟みたいなところで……」
数秒十数秒も経てば頭も冴えてくる。それによって彼は現状を理解した。それは身体に吸収されたダンジョン石によって得られた知識もしっかりと理解して。
「そうか……俺はダンジョンマスターになったのか……どうしよう?」
彼の身になにが起こったかと言えば、まず物語とかでよくある異世界転生をした。さらにこの世界は魔法があって魔物がいてダンジョンもあるような異世界。そんな世界に人間としてではなく最も弱い最下級魔物に分類されているスモールピッグに転生した。
だが、現在の彼は最下級魔物のスモールピッグではない。台座の上に置かれていた水晶はダンジョン石と言いそれに触れたという事になった彼はこのダンジョンの主であるダンジョンマスターに就任した。
その際に身体に吸収されたダンジョン石がダンジョンマスターにふさわしいように強制進化。彼はいま最下級魔物のスモールピッグから最上級魔物のギガントオークへと進化を果たした。
ちなみに魔物のランクは下から最下級→下級→中級→上級→最上級→王金級→帝金級→神金級となり彼は最下級から3つのランクを飛ばしていわば超進化を果たしたことになる。
ちなみにギガントオークはその名の通り身体が大きく5m以上ある。
「だけど……この部屋ってそんなに大きくなかったよな?配慮か?」
ギガントオークに進化した影響か部屋が大きくなっており5mを超える身長の彼でも動き回れる広さをしている。
「それにしても……ダンジョンねえ……」
ちなみにダンジョンマスターはダンジョンの運営もしなければいけないらしく画面が浮かび上がってダンジョンを自在に作ることが出来るらしい。
「階層に…魔物召喚に…罠設置に…宝箱設置か。 めんどくさいな…」
どうやら元来のめんどくさがり・怠け癖は魔物に転生した程度では治らないらしく彼はすでにダンジョン運営がめんどくさくなっていた。そこで彼は与えられた知識により目をつけていたダンジョンマスター代理という機能を使う事に。
「ダンジョンポイントは……100万あるのか。 代わりにダンジョン運営をしてもらうなら優秀な人の方がいいよね……全部使おうっと」
おそらく本来なら100万ものダンジョンポイントは階層を増やしたり環境を変えたり罠や宝箱や様々なことに使うために初期から100万と言う高ポイントを与えられているんだろうが、考えるのもめんどくさいと感じた彼は100万のダンジョンポイントを一体の魔物召喚に全額投入した。
ポチ
すると魔法陣が出現。100万ものダンジョンポイントを投入して召喚された魔物は紳士服を着た人間だった。
「ん?人間?魔物じゃなくて?」
そう疑問に思うもその疑問は召喚されたそいつが恭しく片膝をつき晴らしてくれた。
「お初にお目にかかりますマイマスター。我は公爵級悪魔でございます」
「公爵級悪魔?魔物か……ランクは?」
「帝金級でございますマイマスター」
「おお。初召喚で二番目に強い魔物を召喚できた。しかも頭も良さそう。 それじゃあセバス。後はお願いね?俺は寝るから……ふわぁ〜……」
早速ダンジョンマスター代理の機能を使用。セバスと命名した公爵級悪魔に丸投げすることに。
「かしこまりました。それではダンジョンについてご要望はございますか?」
「ああ……難攻不落で誰にも落とせないダンジョンで……極力挑戦者も来なくて……とにかく俺が暇な方がいいかな。 ああそうだ。俺たちが暮らす階層は街とかにしても面白いかもね。そんじゃお休みセバス……すー…すー…」
「お休みなさいませマイマスター」
こうして彼は眠りについた。次に目覚めたのは2か月後。それは転生を果たした時から所持していたらしい怠惰の大罪の影響を色濃く受けていたため。
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