第97話 足手まといを助ける義理はない
俺はギルドから話を聞いた後、そのまま夜の道を疾駆しオオクサ村に戻った。
「おお! リョウガ様もどられたのですね。ちょうど良かった実は!」
俺が戻ると村長が泡を食ったような顔でこれまでのことを話してきた。
「ナツが勝手に村を出てそれを追いかけてマリスがか」
「はい。ですのでリョウガ様もどうか」
「その前にギルドがどう判断したか説明する」
村長は俺がすぐにでも助けに行くと思っているようだったが、その前にギルドの答えを伝える必要がある。
「そんな悠長な事を言ってる場合じゃないだろう! 大体ナツはあんたに言われてこんな無茶をしたんだぞ!」
横からハルトが口を挟んできた。なんだかご機嫌斜めのようだがな。
「そんなのは知らん。ナツが勝手に判断してやったことだ。別に俺から命じたわけでもない」
「だからって――」
「そこまでだハルト」
ハルトを止めたのは村長だった。そして俺に向き直る。
「話の腰を折ってもうしわけなかった。話を聞かせて貰えるかな?」
「あぁ――」
俺はギルドが依頼を続けてもいいと言ってること。ただしその為に正規の金額の支払いが必要なこと。支払いは分割でもいいこと。今回はギルドからの説明に不手際があったので多少は値引きできることを伝えた。
俺には正式な金額がわからないが後からギルドから来た請求に対応出来るならこのまま俺は依頼を続けることになる。
「願ってもない話です! 冒険者ギルドには本当に感謝しかない」
「それなら受けるということでいいな?」
「もちろんです! すぐにサインをしましょう!」
こうして俺は村長からサインを受け取り、依頼を続けるためにラミアが塒にしているという洞窟へ向かった。
洞窟まではあっさりと行けた。中に入り進んでいくとマリスの声が聞こえてきた。
見るとマリスがラミアにやられっぱなしになっていた。どうやらナツが人質に取られていたようだな。
そして最終的にナツを食べるといい出したラミアに絶望するマリス。全く相手をすぐに信じるからそういうことになる。
「全くお前はお人好しな奴だな」
仕方ないから声をかけ、三人の前に姿を晒した。
「はは、やっぱり来てくれたんだねリョウガ――」
細い声でマリスが言った。全くすっかりボロボロだな。とは言え前回よりは戦えていたようだな。むしろ人質でも取らないと勝てないと思わせる程度には成長もしていたか。
「本当にきたのかい。だけど残念だったな。この通り私のもとには人質もいる!」
「そ、そうなんだよリョウガ。な、ナツが人質に。どうにかしないと」
「そうか。とりあえずお前はこれでも飲んでおけ」
マリスの頭の側に瓶を置いた。中には回復薬が入っている。飲むだけでも効果があるのが便利だが怪我が大きいとすぐには回復しないらしい。
まぁ飲んでおけば大事にはならんだろう。
「そこまでだ! 足を止めな! このガキがどうなってもいいのかい!」
するとラミアが俺に警告してきた。だから素直に答えてやる。
「好きにしろ」
「はは。そうだろうそうだろう。お前だってこいつを見殺しには、て、は?今、なんと言った?」
俺の答えを耳にしラミアが目をパチクリさせ間の抜けた面を披露していた。しかし二度も同じ説明をさせるとは面倒くさい奴だ。
「好きにしろと言ったんだ。勝手に飛び出して自ら危険に突っ込んでいったような足手まといを助ける義理はないからな――」




