第53話 マリスとの初依頼
マリスも満足したようなので支払いを済ませて宿に戻った。そこで思い出したがお金がないならそもそも宿にも泊まれない。
「私は別に一緒の部屋でも、い、いいけど?」
マリスがそんなことを言ってきたが一人部屋で一緒にはそもそも無理だろう。話を聞いてた宿の主人が怪訝そうにしていたしな。
「仕方ないな。ここも立て替えておくから後で返せよ」
「わ、わかってるわよ」
結局マリスの分は俺が代わりに支払った。しかしこれで必然的にマリスを側に置いておく必要が出来てしまったな。
まぁいい。とりあえず明日の依頼でいいのがないか探してマリスにも仕事させるか。そんなことを思いながら部屋に戻りその日は休んだ。
明朝からマリスと一緒にギルドに向かった。
「今日からしっかり仕事してくれ」
「勿論! 私の力を見せてあげるから見ててね」
正直別々に依頼を受けてもいい気がしないでもないが、パーティーでしか受けられない依頼というのも多少は気になるか。
ギルドに付きカウンターで受付嬢と話す。昨日の依頼の報酬が貰えてマリスの冒険者証も発行されていた。
「これで貴方も冒険者よ。先ずはF級からスタートね」
「F級……リョウガは何級なの?」
「俺はEだな」
「そしてもうすぐDだぞ」
マリスの質問に答えると最近よく聞く声が聞こえてきた。ギルドマスターだ。
「俺がD級ということか?」
階段をおりてきたギルドマスターに聞き返した。俺はまだ依頼をそんなにこなしてないんだがな。
「昨日の件といい条件的にはほぼ問題ない。ただパーティーでの経験が足りてないからな。今回マリスと組むだろう? 丁度いいパーティー向け依頼もあるからな」
そう言ってギルドマスターが一枚の依頼書を差し出してきた。
「これは護衛の依頼か」
依頼書の内容を確認した。どうやら商人の護衛らしくここから北に向かった街まで守って欲しいらしい。
「これを二人でやればいいんだな」
「いや。今回は更に二人加えて四人でやってもらう」
「他にも冒険者がいるということか」
「あぁしかも二人ともリョウガのよく知る相手だ」
俺の知る相手? 誰かと思ったが――
「よ、よぉ」
「よっ! 昨日ぶり!」
そこで姿を見せたのはダリバとスカーレッドだった。確かにふたりとも知ってる相手だな。
「パーティー必須なんじゃなかったのか?」
「だからとりあえずこのダリバとパーティーを組んだんだよ。手っ取り早く稼ぎたいからね」
「何かなし崩し的にそうなってしまったんだよ」
俺の質問に二人が答えた。なるほどダリバは押しに弱そうだからな。
「依頼者は準備が整ったらすぐに来てくれと言っているからな。この場所にいって護衛の依頼を受けたと言えばわかるだろう。冒険者証を見せるのも忘れるなよ」
「わかった」
「ま、護衛なら任せてよ」
「絶対役に立つんだからね」
「とにかく仕事だからな。行くか」
そして俺たちはギルドを出て護衛相手が待ってる場所に向かった。どうやら商業ギルドとやらで待っているようだな。
待ち合わせ場所まではこの中で一番この街に詳しいダリバが務めてくれた。待っていた依頼人は四十代半ばの温厚そうな顔の男だった。
「依頼してすぐに来てくれて助かりましたよ。商人はとかく狙われがちですからね」
依頼者が言った。まぁ高価な荷物を運んでる商人は盗賊なんかにとっては狙い目なんだろう。
そして俺たちは商人の護衛任務に当たることとなり街を出るのだった――




