第40話 E級冒険者として活動する暗殺者
「馬鹿が勝手な真似ばかりしやがって」
一人の大男が苦々しげに呟いた。その周囲には多くの男女が大男を囲んでいた。全員がギラついた目をしており飢えた獣のようである。
「死んだ連中は最近うちに入った奴らです。調子に乗んなと忠告はしておいたんですがね」
「ですがボス。下っ端が死んだぐらいどうってことないのでは? 代わりはいくらでも――」
そこまで言ったところでボスの曲刀が空気を裂き同時に口にした部下の首が飛んだ。
「バカ野郎が。下っ端だろうがなんだろうがうちが舐められるきっかけを作ったのがデケェんだよ。そんなこともわからねぇのか? 殺すぞ」
「もう死んでますわボス」
ボスにもたれ掛かるようにして赤毛の女が言った。胴体だけになった男の首の付け根からはドクドクと血が流れ続けていた。
「それで、うちに喧嘩売った連中が誰かはわかったのか?」
「今調べてるところですが冒険者なのは間違いないでしょう」
「だったらさっさと調べろ。それと捕まった馬鹿も始末しとけ」
「へい」
ボスに言われ手下の一人が頭を下げた。ボスは明らかに苛立っていた。やられたのが下っ端とは言え放置するつもりはないのだろう。メンツが潰されたと考えているようだ。
「どこの誰か知らねぇが、冒険者が絡んでるなら尚更許しちゃおけねぇな。この[暴虐の狼]に喧嘩を売るってのがどういうことなのか。たっぷりと教えてやらねぇとな」
大男が額に血管を浮かび上がらせながらそう呟いた。こうして暴虐の狼が犯人探しの為に本格的に動き出したのである――
◇◆◇
朝になり俺はギルドに向かった。ギルドにはダリバの姿もあったが――
「よ、よぉ――」
そう一言だけ挨拶しそそくさとギルドから出ていってしまった。まぁ既に依頼は片付いたし別に仲間というわけでもないからな。
別々に行動してもおかしくはないか。態度の変化もこういう世界だからな。気にしても仕方ない。
「よう、来たか。しかし早速トラブルに巻き込まれたようだな」
カウンターにギルドマスターの姿があった。俺に気が付き話しかけてきたが、トラブルと言っているのは恐らく昨晩のチンピラ連中の事だろう。
「チンピラ連中のことならダリバと食事した帰りに出くわしたんだ。武器持ってやってきたから返り討ちにした」
「らしいな。しかし躊躇なく殺すとはな」
「正当防衛は認められたようだが?」
ギルドマスターが肩をすくめていた。どうも俺のやったことに意義があるように見えたから昨日言われた内容を伝えたわけだが。
「まぁ武器を持って金品を要求する連中だ。それは仕方ないさ。だけどな、やりすぎても余計なトラブルに繋がることがある。そこは覚えておいた方がいいぞ」
俺を諭すようにギルドマスターが言った。やりすぎか、暗殺者として育てられた俺は命を奪うことに無頓着だ。
勿論ルール上、問題有るなら殺しはしなかったが、殺していいと言われれば遠慮する必要はないと考えてしまう。
しかしそれは普通のことではないのかもしれない。中々難しいものだ。
「それに少々厄介な連中な可能性もあるからな」
「厄介?」
「……いやこっちの話だ。まぁ昨日の件はこっちでも上手くやっておくさ」
ギルドマスターは一瞬考える素振りこそ見せたが、それ以上は特に何もいうことはないようだった。
なので俺は今日出来る仕事があるか聞いてみることにした――




