第127話 高い場所が苦手らしい
「ところでゴングはなんでずっと目を瞑ってるのよ」
「う、うるせぇ! ちょっと目が疲れただけだ!」
パルコの問いかけに答えるゴング。表情からは焦りを感じた。ついでにいえばこのエレベーターに乗ってからイザベラ以上に怯えているようでもある。
「さぁ着きましたぞ。この最上階に部屋を用意してますので」
「しゃ、しゃいじょうかい!?」
ゴングの声が上擦っていた。心臓の鼓動も随分と早くなってるようだな。
「何してんのよ。早く降りなさいよ」
「ま、待て! 心の準備が……」
「もしかしてゴング、高いところが苦手なんですか?」
中々エレベーターから出てこないゴングにクルスが問いかけた。ギクッという擬音が聞こえてきそうな顔をゴングが見せる。
「そ、そんなわけねぇだろうが。これぐらいよぉ!」
自分に言い聞かせるようにしてやっとゴングがエレベーターを出た。
そして壁際に引っ付くようにして歩いている。窓際を避けたいようだ。
「あんたわりと情けないわねぇ」
「お、お前だってさっきまでビビってたじゃねぇか!」
「もう慣れたわよ」
イザベラに指摘され反論するゴングだったが、確かにイザベラは窓を見てても平気そうだ。
「こんなに景色がいいのに勿体ないよねえリョウガ」
マリスが窓の外を眺めながら同意を求めてきた。日本では十二階建てぐらいは珍しいものでもなかったが確かに他に高い建物がない分眺めはいい。
「このホテルはトルネイルで一番高い建物ですからね。景色もいいので折角だからと最上階を選びましたが余計なお世話でしたかな?」
「いえいえ。ゴングが情けないだけなんですから気にしないでいいですよ」
「誰が情けないだ!」
ゴングとパルコのそんなやり取りを見てエンデルがクスクスと笑っていた。ここに来るまでは表情もどことなく固かったが少しずつ打ち解けてきたのかもしれない。
ホテルでは男女で一部屋ずつ与えられた。とは言えホテルだけあって途中で泊まった宿屋よりも中は広くて綺麗だった。
ベッドもしっかり人数分用意されている。トイレもあり基本的な生活は問題なさそうだ。ホテル内に大浴場もあるようだしな。
「これからだがとりあえずモンドの護衛をするチームとギルドに報告に行くチムで分かれたほうがいいだろうな」
「それは結構ですが、もう少し近くまで来ては?」
「う、うるせぇ! 俺はこっちでいいんだよ!」
俺とクルスは比較的窓の近くに立っていたがゴングは出入り口に近い方にいた。意地でも窓に近づきたくないという断固とした意志を感じた。
「やれやれ。カーテンを閉めておきますか」
そう言ってクルスがカーテンを閉めるとゴングもホッとした顔になった。
「とにかく六人で常時ゾロゾロとついていっても仕方ないからな。オークションが始まるまでは分担していこうぜ」
「それはいいと思いますがどうわかれますか?」
「そうだな。魔法が得意なのが三人、肉弾戦が得意なのが三人だからな」
ゴングがそう言って考えるが、その振り分けはおかしいな。
「一応言っておくがマリスは強化魔法以外使えないぞ」
「は?」
「え?」
俺が事実を伝えるとゴングとクルスが目を丸くさせた。
「そうなのか? だが半魔なんだろう?」
「詳しくは知らんが半魔でも強化魔法以外使えないってのがいるようだな」
「なんとそうでしたか」
俺の言葉にクルスが驚いた顔を見せた。
「……まぁ勝手に勘違いしていたのはこっちだからな。そうなるとクルスとパルコで分かれることは確定だな。後の四人で組み合わせ決めるか」
結局そういう形で話が落ち着いた。その後マリスたちとも合流し事情を話した後、今回もクジでチーム分けがされたのだった――




