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無能だとクラスで馬鹿にされてた俺、実は最強の暗殺者、召喚された異世界で見事に無双してしまう~今更命乞いしても遅い、虐められてたのはただのフリだったんだからな~  作者: 空地 大乃
第四章 暗殺者の選択編

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第103話 依頼を終えた朝

 昨晩は村をあげての大騒ぎだった。それほど大きくない村だが全員が揃いも揃ってテンション高めに歌ったり踊ったりしていたのだからな。


 とは言え折角問題が解決しているところに水を差すほど野暮ではない。適当なところで寝るといって下がったが多少は付き合いはした。


 しかしラミアのこともあって経済状況は決して楽ではなかっただろうに随分と盛大にしてくれたものだ。なんとなく村長に聞いてみたがその分これから村一丸となって頑張って取り戻すとの事だった。


 ギルドへの支払いもあるというのにポジティブだな。俺が回収する側だったらそんな余裕があるならさっさと支払わせるところだが、そのあたりはギルドの仕事だ特に言うことはない。


 朝になり外に出てみると昨晩あれだけどんちゃん騒ぎをした後だと言うのに村人は野良仕事を始めていた。


「昨日は遅くまで宴だったのに、皆、朝から精が出るね」


 俺の隣を歩くマリスが働く村人を感心した目で見ていた。すると村人の一人が俺たちに気が付いたようで手を振ってくる。


「やぁお二人さん。二人のおかげでラミアも退治されたからねぇ。これまでの遅れを取り戻す為にも張り切って働かないと」

「そうそう。こうやって安心して働けるのも二人のおかげさねぇ。本当ありがとうね」

「ナツも助かったからね。きっと天国の奥さんも感謝しているさ」


 こんな感じで歩いているだけで村人から感謝された。その度にマリスが笑顔を振りまいていた。


「こんなに感謝されるなんて、何か良いことしたなって気になるよね」

「俺はただ仕事をこなしただけだ。良いことだったかどうかなんて関係ない」


 俺はどんな形であれラミアの討伐は完遂しただろう。村人の中にはナツが助かったとお礼を言ってきたのもいるが、それこそ結果論だ。あの時ナツが何も行動しなければ助かることはなかっただろう。

 

 そしてその場合、村人の中には俺たちに嫌悪感を示すのもいれば、以前騙してきたという冒険者のように恨まれる事もあったはずだ。たとえラミアを倒すという結果が一緒だとしてもだ。


 人の感情なんてものは所詮そんなものだ。そんなことにいちいち振り回されていても仕方がない。


 だから俺は今後も粛々と冒険者として仕事をこなしていくだけだ。


「俺はそろそろ行くぞ」

「え? もう?」

「仕事は終わったんだ。もうこの村に用はない」


 依頼を終えた報告もしないといけないからな。俺はその足で村長の下へ向かい村を出ることを伝えた。


「なんともうですか。もう少しゆっくりされても宜しいのに」

「仕事は終わったからな。のんびりしていても仕方ない」


 村長には名残惜しそうにされたが、俺としては用事もない場所に長々といても意味がないという考えだ。


「私は後すこしぐらいゆっくりしてもいい気がするんだけどなぁ」

「だったらマリスだけ残っていればいい。俺は出る」

「じょ、冗談だってばもう!」


 俺が村長の家を出るとマリスが慌てて追いかけてきた。仕事は終わったわけだし別行動でも俺は構わないんだがな。

 

「兄ちゃん! もう行っちゃうのかよ!」


 村の出入り口まで来たところでナツが叫びながら駆け寄ってきた。面倒そうだからとっとと出ようと思ったらマリスに腕を掴まれ引き止められる。


「何してる?」

「もう。折角なんだし挨拶ぐらいしておこうよ」


 俺には話すことなんてないんだがな。そうこうしてるうちにナツが来てしまったし。


「兄ちゃん、その、俺、最初は生意気なことばかり言ってごめんなさい」

 

 俺の目の前まで来てナツが頭を下げてきた。随分と殊勝な態度になったものだな。


「そんなことは気にもしてない。俺にとってはどうでもいいことだ」

「リョウガは素直じゃないだけだからね。本当はナツの成長を嬉しく思ってると思うよ」

「勝手にわけのわからない代弁をするな」


 一ミリも思ってないことを事実のように語るなと。


「兄ちゃんたちのおかげで冒険者も悪いやつばかりじゃないとわかったよ」

「うんうん。なんだかんだでリョウガも助けに来てくれたからね」

「ラミアを倒しに行っただけだぞ」


 ナツも別に助けたと思ってないからな。ただナツの行動で隙が出来たからやっただけだ。


「兄ちゃん俺決めたよ! 俺もっと成長したらリョウガ兄ちゃんを見習って兄ちゃんみたいな冒険者になるよ!」

「そんな考えならやめた方がいいぞ」

 

 ナツが真剣な目で決意を口にしたが俺からすれば粗のある決意だ。


「に、兄ちゃん厳しいなぁ。そりゃまだまだ俺は兄ちゃんには遠く及ばないかもだけど」

「そういうことじゃない。俺には俺にあったスタイルがある。それを真似したところでただの二番煎じだ。どうしても冒険者になりたいと言うなら自分なりのやり方を見つけることだな」

「兄ちゃん……うん。わかったよ! だったら俺は自分のやり方で兄ちゃんを超える冒険者になってみせるよ!」


 俺の話を聞いてナツが目を輝かせた。ま、俺みたいななんてことを言ってるよりは向上心があっていいのかもな。


 どちらにしても今後どうなるかはナツ次第だ。


「じゃあな。今度こそいくぞ」

「うん! ありがとうリョウガ兄ちゃん! マリス姉ちゃん!」


 こうして村を出た俺たちだったがナツは俺たちが離れるまで手を振り続けていた。


「リョウガに憧れる子が一人増えたね」

「俺なんかに憧れたところで何の得にならんがな」

「素直じゃないね。でも、ちょっと嬉しそう」

「……お前、目がどうかしてるんじゃないのか?」


 全く俺のどこを見れば嬉しそうに見えるんだかな――

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