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スラムギーク、ビリオネア!!  作者: 夕野草路
歌姫の計画[The Project of Diva]
73/204

南国の魔王たち。――EP.5

[The Demon Lords in a Tropical Resort.――EP.5]



 しかし、ツヅリは不敵に笑う。


「魔王、最高じゃん。絶対、仲間にするから」


 そして、彼女は言った。


「じゃあ、エン。後はよろしく」


 俺たちを取り囲む巨大な蛇の群れ。

 斬っても、焼いても、死なない蛇たち。


「俺には荷が重いな」

「冗談。キミなら余裕でしょ?」


 一見、危機的状況。

 しかし、落ち着てみれば何のことは無い。


「まあ、ツヅリなら分かってるか」

「当たり前じゃん。だから、よろしく」

「あいよ。宣言:関数デクラレーション・ファンクション  早業クイックチェンジ 冬の訪れ(ウィンタ・フォール)


 瞬間、短剣が白銀の槍に替わる。

 穢れの無い白。

 先端に輝くのは青い宝石のような刃。

 円卓騎士団の幹部級、よっちゃん。

 彼女から奪い取った逸品。

 このクラスの武器はそれ自体が特別な能力を持つ。


起動:機能アウェイク・ファンクション 冬の訪れ(ウィンター・フォール)


 瞬間、空気が凍る。

 ここが南国の密林だとは思えない。

 吐く息がキラキラと輝く。

 呼気に含まれる水分が一瞬で凍ったのだ。

「蛇は変温動物だからねぇ」


 ぶるぶると震えながらツヅリが言う。

 いつの間にか、分厚い毛皮のコートを羽織っていた。

 インベントリに入っていたらしい。


 人間はこの寒さでも活動できる。

 しかし、蛇は違う。

 体温調節のできない彼らは動けない。

 その時だ。


「宣言:関数 早業」


 出現した巨大な剣。

 それが横薙ぎの尾を受け止める。

 しかし、勢いを殺しきれない。

 まとめて吹き飛ばされる。


「なんで動けるの!?」


 ツヅリが声を上げる。

 彼女が吐く息は白い。

 間違いなく氷点下。

 だから、蛇は動けない。

 そのはずだった。


引数アーギュメント:温度下限」


 白銀の槍が澄んだ音を奏でる。

 また一段、空気が冷える。

 しかし、蛇は動き続ける。

 そして、それが合図だった。

 周辺の蛇が一斉に、尾を叩きつける。

 やけにゆっくりと流れる時間。

 迫る致命の一撃が、はっきりと見えた。


「やばいっ――」


 しかし、傍らのツヅリは動じなかった。

 落ち着いた所作で、封剣:月華を抜いた。

 曇りの無い美しい刃。

 そして、凛とした声で言う。


「宣言:関数 極光アウローラ


 瞬間、刀が青白い炎を吹く。


「いや、違う……」


 炎ではない。


 固体、液体、気体に次ぐ、第四の状態。

 それは電離したガス。

 プラズマだ。

 天に架かる極光アウローラと同じ。


「ツヅリ。この関数は?」

「うん。プラズマ。だから、オーロラの剣」

「幾らするんだよ?」

「大赤字!!」


 ツヅリはオーロラの刃を振るう。


 その実態は電離したガスだ。

 だから、重さは限りなくゼロ。

 そして、変幻自在に形を変える。

 数十メートルも伸びたと思えば、柳のように枝分れ。

 迫りくる全ての蛇を、一刀の下、同時に切り伏せる。

 その切れ味も圧倒的。

 迫りくる尾を、牙を、オーロラの刃は切り刻む。

 しかし、


「……キリが無い」


 彼女が唇を噛む。

 斬った分だけ、新たな蛇が押し寄せる。

 一体、何体いるのか。 


「エン! どうしよう!?」


 蒼炎の刃を振るいながらツヅリは叫ぶ。


 相手はほとんど無尽蔵に湧く蛇。

 これだけの高等関数を連発していたら、こちらの金が先に尽きる。

 まして、ツヅリの関数は司書ライブラリアン

 全ての関数を使える代わりに10倍の金を消費する。


「待ってくれ。今、考える」


 今までの戦闘を脳内で再生する。

 逆転の手掛かりは無いか。

 記憶を辿る。

 その時、眼前に蛇の牙が迫る。


「しまっ――」


 一閃。


 しかし、ツヅリが極光の剣で切り伏せる。

 目の前で蛇の首が落ちた。


「あ」


 その断面を見て気付く。


「何か分かった?」

「気になることがある」


 蛇を斬りまくるツヅリ。

 これだけ斬っているのに、今日はまだ血を見ていない。


 蛇も脊椎動物。

 ならば、基本的には赤い血液が流れているはずだ。

 斬った断面がプラズマで焼けているからか。

 ならば、


「宣言:関数 ――」


 短剣を投げる。


「――早業」


 瞬間、大剣に変化。

 飛翔。

 手近な蛇の皮に切れ目を付ける。

 しかし、その傷口から血は出ない。


「ツヅリ。勝てるぞ」

「本当!?」

「ああ。勝てる」


 勝利の糸口は掴んだ。

 何故なら、


「こいつら植物だ」




「…………うん?」





—―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

総資産:-42,814,011(日本円)



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