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スラムギーク、ビリオネア!!  作者: 夕野草路
歌姫の計画[The Project of Diva]
184/204

よわくてニューゲーム!!――EP.3

[New Game with Little Money!!――EP.3]



「その写真は、マジで消してくれよ」

「や!」


 飛び切りの笑顔で綴は断言した。




 再び、【計画ザ・プロジェクツ】にログインする。

 普段なら、前回ログアウトした地点で目が覚める。

 しかし、今回は違った。

 真っ白い空間で、マネキンのようなオブジェクトと向かい合っている。

 最初に行われるキャラメイクだ。

 とは言え、悩む必要は無い。

 現実の身体データを入力する。

 瞬間、マネキンが形を変える。


「お、俺だな……」


 もちろん、身体のサイズを現実から変更することも可能だ。

 (脳に悪影響が無いように制限はある。例えば、現実で160センチの人間が、2メートルを超える大男の分身は造れない。逆も同様)

 ただ、そうすると動いた時に違和感が生じるのだ。

 早業は繊細な身体のコントロールが必要だ。

 だから、感覚が狂うと困るのだ。

 現実と同じ大きさの分身アバタを使うのが最良ベストだ。


「あとは顔か……」


 顔の造形にも制限がある。

 例えば、目の位置や形を大きく変更することはできない。

 現実と物の見え方が変わってしまうので悪影響があるからだ。


「適当で良いか……」


 身バレが怖いので現実世界からは変える。

 ただ、どうしても面影は残ってしまう。


 こうしてキャラメイクは終了した。

 その間、わずかに1分。


 とにかく速さが大切だ。

 少しでも速く、ツヅリたちに追いつかないといけない。

 いわゆるタイム・アタックというやつだ。


 その時、視界が白く染まる。

 気付いた時には、俺は塔の中にいた。

 どこまでも高い塔だ。

 見上げても終わりが見えない。

 その壁面が全て、本棚になっている。


「ようこそ。【計画】の世界へ」


 いつの間にか、隣にNPCがいた。

 若い女性型のNPCだった。

 白いローブのようなゆったりとした服を着ている。


「これから旅立つあなたに祝福を送ります」


 祝福。

 つまり、原典ライブラリだ。

 プレイヤはゲーム開始と共に、好きな原典を1つ選ぶことができる。


司書ライブラリアンはある?」


 試しにいてみる。

 すると、NPCは自分の胸に手を当てながら答えた。


「司書は私です」

「あ、そうじゃなくて、司書っていう原典はある?」

「司書と言う原典ですか? いえ。そのような原典はございません」

「だよな……」


 しかし、ツヅリは司書という原典を使用している。

 やはり、ゲームデザイナであるアサカワが用意したものなのか。

 ツヅリにしか使えない原典にどんな意味があるのか。

 俺には分からない。


道化師クラウンはあるか?」

「はい。ございます」


 答えながら司書は片手を挙げた。


宣言:参照デクラレーション・レファレンス 道化師」


 ふわふわと、どこからともなく本が飛んできた。

 分厚い皮張りの本だ。


「こちらで?」

「ああ」


 俺が受け取る。

 すると、その本は強い光を放つ。

 そして、そのまま溶けるように消えた。


「これであなたは道化師の原典を使用できます」


 彼女は言った。

 再び、視界が白く染まる。




 目が覚めると、俺は巨大な聖堂を見上げていた。

 聖堂と言って良いのか。

 現実世界の宗教とは違う。

 とにかく宗教施設だ。

 青く透けるガラスと、銀色の鋼材を組み合わせて造られた美しい聖堂。

 色とりどりの月明かりに照らされて美しく輝く。


 ここは始まりの街、ランベル。

 白い石畳いしだたみと、城壁に囲まれた美しい街だ。

 【計画】を始めると全てのプレイヤはこの街に転送される。

 辺りを見渡せば、俺と同じようなプレイヤがいた。

 全員、【計画】を始めたばかりなのだろう。


 まずは状況を確認しよう。


 インベントリを開く。

 何のアイテムも無い。

 空っぽだ。

 

 防具も服の他には、皮の靴と、ごわごわとした生地の外套がいとうだけ。

 小鬼ゴブリンの石器にも破けてしまいそうな粗末な防具だ。


 腰を見れば短剣が一振り。

 刃はにぶい。

 魚を捌くのにも苦労しそうだ。


 コンソールを開く。

 

[>>> total complexity: 100,000(JPY)]


 つまり、総資産10万円の意味だ。

 開始時点の総資産は一律で10万円。

 もちろん自腹だ。

 そんな金は無いのでツヅリに借りた。

 また借金が増えてしまった。


 とりあえず、1万円だけ残す。

 残りを3万円ずつ、STR(筋力)、AGI(速さ)、VIT(体力)へ均等に割り振る。


「ここから2000万円か……」


 道程みちのりは遠い。

 足がすくみそうになる。

 しかし、それでも進まなければ。

 そんなことを思った時だ。


「やあ、エンくん。探したよ」


 突然、背後から声をかけられる。


 いやいや。

 ヤバいだろ、これ。

 俺の名前を知っている。

 そして、開始地点で待ち構えている。

 こんなことをする心当たりは、1つしかない。


「……あんたは誰なんだよ?」

 

 俺は背中越しに問う。

 クスクス、と背後の人物は笑った。


「誰だと思う?」

「円卓騎士か?」


 円卓騎士。

 別名、PKer絶対殺すギルド。

 俺を倒したドラゴンも所属している。


「……良く分かったね。……私が円卓騎士だよ!」


 背後の人物が答えた。






—―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

総資産:-69,344,702(日本円)



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