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スラムギーク、ビリオネア!!  作者: 夕野草路
楽園の計画[the_project_of_EDEN]
1/204

邂逅、$10億ドルの少女。――EP.1

[A boy meets a billion dollars girl.――EP.1]

 端末の「おつかいメモ」を開く。


『もやし、卵1パック、L玉、タマネギ、ピーマン、ニンジン、ジャガイモ、米10kg、洗剤、歯ブラシ etc……』


コイツ(・・・)を倒せば全部買えんな」

 端末の「おつかいメモ」を開く。


『もやし、卵1パック、L玉、タマネギ、ピーマン、ニンジン、ジャガイモ、米10kg、洗剤、歯ブラシ etc……』


コイツ(・・・)を倒せば、目標金額達成だな」


 目の前に巨大な白銀の鎧が在った。

 目には爛々と光が宿る。


 動的対象:盤古の機械鎧(ばんこのきかいよろい)


 それが向き合う敵の名前。


 もちろん、ここは現実ではない。

 仮想の世界。

 ゲームの中。


 しかし、そんなことはどうだって良いのだ。

 大切なのは「敵を倒せば金が手に入る」ということ。

 ゲーム内の通貨ではない。

 円であり、ドルであり、ユーロである。

 時には愛情すらも買えてしまう、本物の金が。


「始まるぜぇ。おつかいがよぉ……」


 はじめて、ではないけれど。


 その時、鎧は巨大な拳を振り上げた。

 それを目で追いながら言葉を紡ぐ。


宣言デクラレーション関数・ファンクション  早業クイック・チェンジ


 今、この手には何もない。

 徒手だ。

 しかし、呼び出した「関数」は世界を書き換える。

 つまり、


「俺はNull(なにもない)を装備している」


 という情報を


「俺は「愚者の剣」を装備している」


 と上書き。


 瞬間、眼前に大剣が出現。

 身長の二倍は優に超える巨剣。

 この鉄塊を振り回すことは不可能。

 恐らく、誰にも。

 だから、愚者の剣。

 しかし、それは文字通り壁となる。

 鎧の一撃を止めた。

 

 端的に言えば「早業」はプレイヤの装備を瞬間的に変更する。

 

 しかし、これも無料タダではない。


 情報を書き換えるためには計算が必要だ。

 計算とは電気を消費して半導体を駆動させること。

 つまり、金がかかる。


 関数を使えば使うほど、金が減っていく。


 仕留めるのならば最小限の関数で。


「行くぞ! 宣言:関数 早業 引数:鋼鉄の槍」


 手のひらを下に向けて宣言。

 瞬間、愚者の剣が消失。

 代わりに鉄製の槍が出現。

 生み出された槍に押しのけられるように、身体が宙へ跳び上がる。

 浮遊。

 無防備な一瞬を敵が見逃す訳もなく――迫り来る巨大な拳。


「宣言:関数 早業 鋼鉄の大剣」


 空中に剣が出現。

 それを蹴り飛ばして強引に加速。

 拳は足元を通過した、ように見えた。


「なっ――」


 掠めたらしい。

 しかし、それだけで足が不自然な角度に曲がっていた。

 つま先がふくらはぎに付いている。

 遅れて激痛。


 このゲームを始めて知った。

 痛みを感じるのは負傷と同時でない。

 痛みも情報なのだ。

 神経を伝わり脳へと伝わる刹那。

 戦闘中の引き延ばされた時間感覚の中、それは意外にも長い。

 

 歯を食いしばる。

 痛みを強引に思考の外へ。

 機動力は削がれた。

 この跳躍が終わるまで。 

 それまでに決めなければ敗北。

 せいぜい二秒。

 しかし、現実の二秒に比べ、なんて重い。

 落ちる身体。

 横に倒し、捻る。

 回転。

 鎧と目が合った。

 手を伸ばす。


「宣言:関数 早業」


 瞬間、手の中に愚者の剣が在った。

 早業クイック・チェンジ

 この関数には重要な特性がある。


「出現する武器とプレイヤの相対速度は等しい」


 ということ。


 例えば、時速100キロの電車に乗っている時。

 座っている自分も、電車の外から見れば時速100キロで動いている。


 「関数:早業」でも同じことが起こる。


 早業によって呼び出された愚者の剣。

 この剣だけ後方に流れていくということはない。

 プレイヤと同じ速度で移動し続ける。

 

 この場合、愚者の剣は俺の腕と同じ速度。

 

 当然、この巨剣を振ることはできない。

 しかし、出現した速度のまま敵にぶち込むことは可能。

 重力と、ついでに遠心力を載せて、加速したこの腕。

 同じ速度の愚者の剣。


 さながら、断頭台。


 吸い込まれるように、装甲の薄い後頭部に命中した。

 鮮やかな青白いライトエフェクト。

 クリティカルヒットの証。

 ずんぐりとした頭部が地面に落ちた。

 

 かく言う自分も、無様に地面に転がる。

 足が1本折れているから。

 忘れていた痛みが戻る。

 あふれる涙が止まらない。


「痛っいな……」

 

 しかし、思わず笑ってしまう。

 コンソールを呼びだす。

 黒い背景と白い文字だけで構成されたシンプルな画面。

 そこには、


「>>> perpentual machine-male defeated. 400(JPY) aquired」


 の文字。


「万古の機械鎧を撃破。400円獲得」


 という意味。


「久しぶりに肉でも買おうか」


 そんなことを呟く。





—―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

総資産:100,838(日本円)

 目の前に巨大な白銀の鎧が在った。

 目には爛々と光が宿る。


 動的対象:盤古の機械鎧(ばんこのきかいよろい)


 それが向き合う敵の名前。


 もちろん、ここは現実ではない。

 仮想の世界。

 ゲームの中。


 しかし、そんなことはどうだって良いのだ。

 大切なのは「敵を倒せば金が手に入る」ということ。

 ゲーム内の通貨ではない。

 円であり、ドルであり、ユーロである。

 時には愛情すらも買えてしまう、本物の金が。


「始まるぜぇ。おつかいがよぉ……」


 はじめて、ではないけれど。


 その時、鎧は巨大な拳を振り上げた。

 それを目で追いながら言葉を紡ぐ。


宣言デクラレーション関数・ファンクション  早業クイック・チェンジ


 今、この手には何もない。

 徒手だ。

 しかし、呼び出した「関数」は世界を書き換える。

 つまり、


「俺はNull(なにもない)を装備している」


 という情報を


「俺は「愚者の剣」を装備している」


 と上書き。


 瞬間、眼前に大剣が出現。

 身長の二倍は優に超える巨剣。

 この鉄塊を振り回すことは不可能。

 恐らく、誰にも。

 だから、愚者の剣。

 しかし、それは文字通り壁となる。

 鎧の一撃を止めた。

 

 端的に言えば「早業」はプレイヤの装備を瞬間的に変更する。

 

 しかし、これも無料タダではない。


 情報を書き換えるためには計算が必要だ。

 計算とは電気を消費して半導体を駆動させること。

 つまり、金がかかる。


 関数を使えば使うほど、金が減っていく。


 仕留めるのならば最小限の関数で。


「行くぞ! 宣言:関数 早業 引数:鋼鉄の槍」


 手のひらを下に向けて宣言。

 瞬間、愚者の剣が消失。

 代わりに鉄製の槍が出現。

 生み出された槍に押しのけられるように、身体が宙へ跳び上がる。

 浮遊。

 無防備な一瞬を敵が見逃す訳もなく――迫り来る巨大な拳。


「宣言:関数 早業 鋼鉄の大剣」


 空中に剣が出現。

 それを蹴り飛ばして強引に加速。

 拳は足元を通過した、ように見えた。


「なっ――」


 掠めたらしい。

 しかし、それだけで足が本来は曲がらない方を向いていた。

 つま先がふくらはぎに付いている。

 遅れて激痛。


 このゲームを始めて知った。

 痛みを感じるのは負傷と同時でない。

 痛みも情報なのだ。

 神経を伝わり脳へと伝わる刹那。

 戦闘中の引き延ばされた時間感覚の中、それは意外にも長い。

 

 歯を食いしばる。

 痛みを強引に思考の外へ。

 機動力は削がれた。

 この跳躍が終わるまで。 

 それまでに決めなければ敗北。

 せいぜい二秒。

 しかし、現実の二秒に比べ、なんて重い。

 落ちる身体。

 横に倒し、捻る。

 回転。

 鎧と目が合った。

 手を伸ばす。


「宣言:関数 早業」


 瞬間、手の中に愚者の剣が在った。

 早業クイック・チェンジ

 この関数には重要な特性がある。


「出現する武器とプレイヤの相対速度は等しい」


 ということ。


 例えば、時速100キロの電車に乗っている時。

 座っている自分も、電車の外から見れば時速100キロで動いている。


 「関数:早業」でも同じことが起こる。


 早業によって呼び出された愚者の剣。

 この剣だけ後方に流れていくということはない。

 プレイヤと同じ速度で移動し続ける。

 

 この場合、愚者の剣は俺の腕と同じ速度。

 

 当然、この巨剣を振ることはできない。

 しかし、出現した速度のまま敵にぶち込むことは可能。

 重力と、ついでに遠心力を載せて、加速したこの腕。

 同じ速度の愚者の剣。


 さながら、断頭台。


 吸い込まれるように、装甲の薄い後頭部に命中した。

 鮮やかな青白いライトエフェクト。

 クリティカルヒットの証。

 ずんぐりとした頭部が地面に落ちた。

 

 かく言う自分も、無様に地面に転がる。

 足が1本折れているから。

 忘れていた痛みが戻る。

 あふれる涙が止まらない。


「痛っいな……」

 

 しかし、思わず笑ってしまう。

 コンソールを呼びだす。

 黒い背景と白い文字だけで構成されたシンプルな画面。

 そこには、


「>>> perpentual machine-male defeated. 400(JPY) aquired」


 の文字。


「万古の機械鎧を撃破。400円獲得」


 という意味。


「久しぶりに肉でも買おうか……」


 そんなことを呟く。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

総資産:100,838(日本円)


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