あなたが読むかもしれない、奇妙なおふだのお話
囲炉裏の火がちらちらと燃えくすぶる薄暗い部屋で、
二人の男が話していた。
「三角川にかかる淀み橋の、お札をはがしてはいけないよ。」
「橋にあるお札?なんですか、それは。」
一人は先生風、一人は敬語。二人は親子だろうか。
「あのお札は大事なものなんだ。それ以上知る必要もないし、出来れば関わってはいけないよ。」
「それはまた。そんなことを言えば、ますます気になるに決まっているじゃありませんか。
私は明日にでも、そのお札とやらをはがしに行ってしまいますよ。」
子供は男の話を聞いて好奇心がくすぐられたらしい。確かにあの言い方ではそうもなる。
「そうかい。それはいけない。では違う話をしようかね。今日はどこに行ってきたんだい。」
「淀み橋です。お札なんてなかったですよ。」
これはどういうことだろう。
「なるほど。お前は今日その淀み橋を見てきたと。そりゃ、はがしちゃいけないお札なんだから、目の付く場所にあるわけないだろう。」
「橋はすべて見てきました。橋の欄干にも通りにも、裏側にもどこにだってありはしませんでしたよ。」
子供は何でも橋を隅々見てきたらしい。
お札の話を知らなかったはずなのに、この子は今日の日中何をしていたのだろう。
「もしそれが本当だとすると、お札はもうはがされてしまったのかもしれないね。」
「そうですね。お札ははがれていました。」
ますますよくわからない。
子供はお札がはがれているのを見たのか?
そもそも、立ち返って、
橋に貼られているはがしてはいけないお札とは何なのか。
「であれば、もうあの橋に意味はないね。この話はもうおしまいだ。」
「そうなのですか?橋には意味はないのでしょうか。」
なんだろう、意味がよくわからない。
お札に何か力があって、それがあることで橋に意味があった?
一体何をしゃべっているのだろう。
先から、二人の会話もなんだかかみ合っているのかいないのかよく分からない感じだ。
「いや、もう橋に意味はないよ。
ただの橋には意味はない。そんな話は興味がわかないだろう。」
「現に、お札がなくなったことが分かってから、
読み手は理解をやめてしまったようですね。」
理解?
もうすぐ千字だが、結局この話はどうなるのだろう。
「それは、私たちにも非があるのだろうね。
ただ、だからと言って、ここから先は何もない。もう終わったよ。」
「橋にはがしてはいけないお札があった。ただそれだけの話でしたね。」
読み手はここで本を閉じた。




