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短編

Sな王子はHな私との婚約を破棄したい様ですが、全力で抵抗させて頂きます。

作者: 譚織 蚕

 この国の王位継承者ルーベル王子を祝福するパーティーの片隅で、3人の男女が騒ぎを起こしていた。


 そのうちの1人……


 パーティーの主役にして、私の婚約者でもある王子が怒号を発する。


「エマ、お前との婚約を破棄する!」

「な、なんですって!? 私は貴方様のために、必死で……」

「えぇい煩い!!」


 あぁ、なんて馬鹿な王子様なんだろう。青い鳥のフォロワー数4桁にして、強大な権力を持つこのエマ様との婚約を破棄するだなんて。


「そう、ですか…… 私より、そこの地味な女を取るんですね!」

「あぁ、そうだ。」


 深く頷く彼と、縋り付く地味な女。

 だから私は、カードを1枚切ることにする。


「それなら私にも考えがあります」

「なっ、なんだ!?」


 ふふ、王子も隣のクソ女も震えている。そう、彼らだって私の重要さは知っている筈なのだ。


「この作品、面白くな~い」

「ぐっ」

「あの作者差別主義者らしいよ?」

「くっ……」


 私が彼に浴びせかける口撃は、この後私の青い鳥アカウントである"エマ様@可愛いの極み"で拡散される言葉だ。


 瞬く間に、8000人のエマ様信者によって世界に広まるだろう。


「それだけは……」


 書籍化を求める王子からしたら堪ったものでは無い。昨今の表現者の世界は人格に厳しいのである。


「ふんっ、じゃあ私との婚約はそのままにして置いて下さいね? 私の王子様♪」

「わかった……」


 隣の女は結局最後まで喋らずじまい。私の美しさと自分を比べ、悲観してしまったのでしょう。いい気味です。


 私は項垂れる王子を尻目に、パーティー会場を後にしました。


 ―――――――


 それから3日後。私は再び投稿され始めた王子の小説に感想を付けていきます。


『今日も面白かったです♪ でも、ここの誤字とこのキャラの立ち位置と言葉遣いと…… それとこの地味めな新ヒロインの存在が気になるので直してください♪』


 しかし、今日はいつもとは少し違っていました。


 いつもすぐに返ってくる王子からの返信が無かった上に、上の下民共が私を批判してくるのです。


 まぁそんなことは些細なこと。エマ様は歯牙にもかけませんわ。


 しかし、それが3日、5日、1週間と続きます。

 そのうちにどんどん堪らなくなってきて……

 2週間が経った頃、私は城へ赴き王子への謁見を願い出ました。


 しかし、城の門は固く閉じたまま。


「次期王妃のエマ様がやってきましたわよ!! 空けなさい!!」


 馬車の中から大声で呼びかけますが、誰も気にかけてくれません。

 叫び、叫び、叫び。

 20分は経ちましたでしょうか? ようやく門番が出てきました。


「良かった! そこの門番! 私を入れなさい!!」

「すみません。それはできません。」

「なんでよ! 私は次期王妃よ!」

「誠に申し訳ございませんが…… 貴方様は"ブロック"されておられますので……」

「な、なんですって!?」


 あの馬鹿王子! 本格的に馬鹿だったようですね!!


 追い返されるようにして城を後にした私は、馬車の中で青い鳥を開きます。


 そして呟くのは2週間前に宣告した言葉たち。


「ははっ、いい気味! 彼もこれで終わりですわ!!」


 応援コメント、賛同コメント、いいねRTが溢れ、彼の青い鳥に突撃する信者も多数。

 ネットニュースにまでなり……


 私の婚約者は、社会的に死んでしまいました。

 今度は私を弄んだあの男を、私の方から婚約破棄してやるだけ。


 そう意気込んで、いつもの様に青い鳥を開きます。


「ふふっ、まだまだ伸びてますね…… ん?」


 コメントもいいねもRTも、順調に伸びています。しかし、いいねの伸び率に対して他の2つが明らかに増えています。


「ん、どうして?」


 その理由は、通知欄を見れば1発でした。

 何故か私に積み上がる、批判のリプに引用RT。

 いつの間にか、私に対するカウンター凸が起こっていたのです。


「あの馬鹿王子何かした!?」


 しかし、彼の呟きを見ようとしてもブロックされていて見れません。

 しかし私もネットの女。すぐに作った新垢で覗いてみると……


「は、はいっ!?」


 彼が『真実です』というコメントを付け引用RTをしていた、"ジミジョ@すこっぱー"という方が上げた1本の動画。

 それが7万を超えるいいねを獲得している状態でした。


 そこに写っていたのは……


 あのパーティーの夜。

 私が彼に掛けた脅し。


「あぁ……」


 隣にいたあの地味な女は、虎視眈々と私の首を狩る時を狙っていたのです。


「あぁ…… あぁ……」


 あれから半年。こうして全てを失った私は、修道院に入り、罪を償いながら(クソみたいな)神(とかいう概念的存在)に仕えています。


「あら、なにかしら?」


 そんな俗世との関わりを絶った私に、今日1冊の本と手紙が届きました。


 本の作者の名前はルパート王子。

 どうやら彼は書籍化を果たしたよう。横にはあの女が付いているのでしょうか?

 ウザイですね。


 そして手紙には、短く二言。


「あの時、評価もブクマもせずに自分の言いたいことだけ言ってくれたことは忘れません。この本は代引きなので、せめて金は落として下さい。」

「ふふ、ふふふふふ……」


 もちろん、Amaz〇nレビューは☆1で提出しておきました♪

作者な王子は評論家の私との婚約を破棄したい様です


下に星があります。ここまで読めば分かりますね?

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