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転生悪魔の異世界革命~上級悪魔に転生した俺は、全てを憎み世界を破壊する~  作者: みなもと十華@3/25二作同時発売


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第17話 空軍

 アベルは新たな辞令を受け取り、魔族領東方に位置する工業都市ゲヘナに向かった。

 この地には様々な軍事工場があり、例の変人と称されるメフィストフェレス技術将校の魔王軍技術研究所が、航空機開発を進めている場所でもあった。

 今回アベルは、新たに創設される魔王軍特殊航空連隊の責任者として、この地に赴任したのだ。


「この辺りはだいぶ開発が進んでいるのだな」

「はい、アベル様。珍しい物がたくさんございますね」


 アベルの独り言に、後ろに付き添っているローラが答える。ローラは、新しい赴任先にも当然の様に付いて来ていた。


(ローラ……今日も一段と淫らに見える。落ち着け俺! もうあの頃のような童貞じゃないんだ。 いい加減、前世のトラウマなど忘れて女に慣れなくては)


 そう決意するアベルだが、ローラとの情事を思い出し赤面する。


(いや……もう十分慣れているはずなんだ……。ローラのお陰で。女性とは普通に対応できているはずだ。このメイドが、特別淫らに見えたり女を感じさせるだけで)


 アベルは不思議に感じていた。ローラを見ると、何故か心が波立つのだと。


「どうかなさいましたか?」


 ローラは不思議そうな顔をして、アベルの顔を覗き込んだ。


「いや、何でもない。行こうか」

「はい」



 初赴任先だったギリウスと違って、ここゲヘナは大規模な軍が駐屯しているわけでもなく、士官用宿舎もあまり整備されていない。

 そこでアベルは屋敷を借り上げた。あまり狭い場所では、ローラとの距離が近すぎて落ち着かないのだ。


 技術研究所にほど近い場所にある屋敷に到着した。そこそこ大きな造りにで、小さな庭には木々が茂っていた。

 アベルは鍵を開け、中に入り部屋を確認する。十分な間取りがあり、これなら落ち着いた生活ができそうだ。


「ローラ、キミはここの部屋を使うといい」


 アベルが部屋の一つを指差すと、ローラは戸惑った顔をする。


「あ、あの、アベル様……」

「なんだ、この部屋では不満か?」

「いえ、逆です。メイドの私にこのような立派な部屋を。身分の差を弁えております。私には使用人部屋か物置部屋で十分です」


 まるでメイドみたいな発言をするローラに、アベルは思わず肩をすくめた。実際メイドなのだが。


「部屋が余っているのだから、わざわざ物置部屋に住む必要はないだろ」

「ですが……」

「オレはな、生まれた時の身分で、その後の一生まで決められてしまうのが嫌なんだ」

「…………アベル様……はい、アベル様のご厚意にに感謝いたします。やっぱり……アベル様はお優しいですね」


(俺が優しい? 前もそんな事を言われた気がするが……。俺はもう、優しい男など止めたはずなのに……)



 後のことはローラに任せ、アベルはメフィストフェレス技術将校がいる技術研究所へと向かった。

 爆撃機開発の進捗状況を確認するのと、特殊航空連隊の計画について話し合わねばならない。


(変人メフィストフェレスか……。この世界に来てから改めて思うのだが、人間とは一体何なのだろう……? 人族と魔族の違いなど、魔力を持っているかどうかだ。角や翼が生えているわけでもないからな)


 太古の昔より、魔族は魔力を持っている為に恐れられてきた。

 悪魔狩りのようなことが行われたのは、元の世界で魔女狩りや異端審問が行われたのと同じだろう。人は、よく分からない存在に対する恐れや偏見があるのだ。

 お互いに侵略を繰り返し、憎しみの連鎖が続いている。


(俺は電車に轢かれ死ぬ直前に、人類の滅亡を願った。もし、神のような存在がいたとして、俺をこの世界に転生させたのなら、一体どんな意味を持っているというのだろう)


 アベルの脳裏には、楽しかった士官学校時代の思い出が浮かぶ。


(士官学校時代、俺は友人と一緒に遊んだり笑ったりして、そういう穏やかな暮らしも良いのかもしれないと思ってしまった。もし、俺の作った航空機により戦況が決定的となり人族の脅威が無くなったのなら、そんな暮らしも可能なのだろうか……?)



 ◆ ◇ ◆



 技術研究所に入ったアベルを、ゲルハルト・メフィストフェレス技術将校が出迎えた。


「やあやあ、よく来たね、ええーっと……誰だっけ?」

「アベル・アスモデウス中佐であります。メフィストフェレス少将」


 すっとぼけた挨拶をするゲルハルトに、アベルは形式ばった敬礼をした。


 機械や発明にしか興味のないゲルハルトは、航空機の設計と開発具申をしたアベルの顔は覚えているのだが、名前をすっかり忘れているのだ。そもそも彼にとって、名前などどうでもいいのかもしれないが。


 そして彼は、航空機開発成功の功績で、大佐から少将へと昇進していた。


「そうそう、アベル君だったね。待っていたよ。とにかく、完成した爆撃機を見てくれたまえ」

「はい」

「あ、それから私のことはゲルハルトで構わないよ」


 上官に名前呼び捨てもどうかと思うのだが、強引なゲルハルトに押し切られてしまった。


 アベルは、ゲルハルトと一緒に格納庫に向かい、完成した第一号機を見上げた。

 銀色に輝く機体には、空冷複列星形14気筒エンジンが搭載され、美しさと重厚感と共に機能美も兼ね備えている。この新設計の星型エンジンは、アベルが追加で送った設計図から作られていた。


 当初ゲルハルトは、人族から鹵獲した自動車エンジンから開発しようとしていた。

 しかし、空を飛ぶには出力の高いエンジンが必要だ。そこでアベルが、元世界の星型エンジンの簡単な原理を纏めて追加で送ったのだった。

 その簡単な設計図から、見たことも無い新型エンジンや航空機を完成させてしまうのだから、このゲルハルトという男が天才と呼ばれるのも理解できるだろう。


 精悍な機体と迫力のエンジンを見たアベルは、素直に感嘆の声をあげた。


「凄い! これは本当に凄い!」

「そうだろう、アベル君! 君なら分かってくれると思っていた。これはロマンだよ!」


 感激するアベルに、ゲルハルトは少年のように喜びながら同意する。

 二人共……いや、多くの男は、メカっぽい物や巨大なマシンが好きなのだろう。二人は、航空機とエンジンの設計図を片手に、凄いテンションで語り合っている。

 この二人、もし元の世界で出会えていたのなら、良い友達になれたのかもしれなかった。



 試験飛行をすることになり、試験機は格納庫から移動することになった。


 ウオォォォォォォンギュンギュンギュン――――

 ブロロロッロッ、パン、パン、パン!

 ブロロロロロロロロロロロロッ!


 星型14気筒エンジンに火が入り、轟音と共にプロペラが回りだす。

 二人はテストパイロットが動かす機体を見つめながら、興奮した面持ちでそれを注視する。

 試作機はそのまま滑走路にへと入り、凄まじい音でエンジンを唸らせ加速して行く。


 ブロロロロロロロロロロォォォォォォォォォォン!


「飛んだっ!」

「おおっ、どうだ、凄いだろ? アベル君!」

「凄い! 飛んだぞ!」

「そうだ、飛んだ! 飛んだ! 私たちの飛行機だ!」


 試験機は空へと飛び立ち、まるで鳥のように旋回する。

 挙動の一つ一つに、二人は階級も忘れて喜び合っている。まるで普通のミリオタみたいに。


 その姿は、夢見る少年のようだ。




 アベルは実際の飛行や機体を見て、更に改善点などを注文していた。大型の爆弾を搭載するには、更なる改良が必要なのだ。


「この遠心式軸駆動式過給器スーパーチャージャーの形状ですが、このように……」

「なるほど」

「冷却効果を上げるためにエンジンのフィンや形状を……」

「ほうほう」

「排気バルブと板カムとプッシュロッドの位置ですが……」

「そうか!」

「機体の強度を上げる為に、翼の捩じりに対して……」

「凄い!」


 二人で遅くまで議論を重ね、更に改良し実戦への目途がったった。ゲルハルトは、アベルの話を興味津々で聞き入り、全てを吸収して自分の物にしているようだ。


「これで更に高出力で強度を増した物が出来上がるぞ。そして、飛行実験の結果次第で量産化の道筋も見えてきた」


 ゲルハルトが興奮気味に話す。

 それにアベルも応じる。


「これが量産されれば、我が軍が一気に巻き返せます」

「アベル君、君は凄いな。まるで未来からタイムマシンでやって来たようだ」

「これも日々の勉強と好奇心の賜物であります」



 技術研究所を後にしたアベルは苦笑していた。まさか本当に異世界から来たとは言えないからだ。


「ふふっ、全てが順調だ」


 航空機開発も順調に進み、アベルの計画も完璧だと感じていた。

 そう、この時は――――



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