第3話 転移した世界では その1
武達が森へと移動を始めた頃、武達が転移して来た草原に最も近い国の上層部は非常に慌ただしく動き始めていた。
武達がこの世界に来る直前に見た激しい光はこの世界でも見られた。そしてその光が収まる時に空の彼方から一筋の光があの草原へと落ちたからだ。
その光の筋が落ちるのを目撃した王は直ちに国の重鎮達へと召集を掛け、又将軍と近衛師団長にも召集を掛け緊急の会議を急ぐ一方で情報部へある組織への監視を強化するようにも指示を出していた。
各所への召集が掛けられ地球時間で約1時間後に王城の会議室に全ての人物が集まり会議が…
王が集まった面々を確認し
「皆の者、良くぞ集まった。 議題は先程の天空の光と落ちた光の筋についてだ。 皆、それぞれ思う事を述べよ」
始まった。 真っ先に声を上げたのは宰相であった。
「あの天空を覆う光と其処から落ちた光の筋、又光の筋が落ちた場所を考えるに言い伝えにある異界の門が創造神によって開かれ異界の者が現れたモノと考えられます。 王よ、直ちに軍を派遣しその者を保護すべきかと。間違っても教会の者共に先を越されては面倒です。」
次に声を上げたのは意外にも近衛師団長であった。
「確かに教会に異界の者を先に抑えられたら今以上に国の方針に横やりを入れられる恐れはある。 それ以上にここ数十年民を味方に付け国のやり方に文句を言うだけに止まらず、最近は国の運営にも関わらせろとうるさいからな」
それを聞いた将軍が
「確かに最近の教会はその権力を拡大しようと躍起になり過ぎてる。力の弱い貴族が収める領地では民を味方につけてその貴族を操ってまで国のやり方に横やりを入れて来よる。そればかりか民からの寄付で貴族に賄賂を贈り繋がりを持とうとしてる始末だ。軍部でも賄賂を贈って来た司祭を捕えても教会から教会の問題は教会で解決ゆえ司祭の釈放を要求する様に行ってくる始末。奴らは聖教国から派遣されてるに司教、司祭に過ぎん。聖教国教皇との取り決めで派遣された国で問題を起こしたらその国の法で裁きを受けるとあるのを知らんとでも言うのか」
「この国に派遣されてる司教は気にいらんのだろうよ。あの地を管理してるのが我が国だからな。だからだろう、あの手この手であの地を管理してる我が国を混乱させあの地を管理するに不十分といちゃもん付けたいのだろう。そして教会があの地の管理をすべきだと言いたいのだろうな」
王は疲れた様に言い現在派遣されてるこの国の司教を思い浮かべた。
「警戒すべき相手は何も教会だけではありません。あの地の向こう側の帝国もすでに何かしら動いて居てもおかしくはありません。 帝国はあの地から多少遠いとは言え外縁部の森の外の都市にはそれなりの規模の軍が常備されていたはず。 違いますか? 将軍」
そう言ったのは外交省長官であった。 そして聞かれた将軍は少し顔を渋めて
「その通りだ。あの都市には常に1万の兵が詰めている。公には森から出てくる魔物に対処する為と言ってるしあながち間違いでも無い。何せ150年程前に起きた魔物の氾濫であの都市は酷い被害を受けたのも事実だしな。
それ以来あの都市の防衛に正規の軍が常駐する様になったのだから」
「ええその通りでしょう。現に30年前に起きた氾濫でも都市の正規軍だけで氾濫を鎮圧してますからね。ですが、帝国が昔から異界の者を欲してるのもまた事実です」
「だから我が国も昔から森の外縁部に砦を築き其処から村から町、町から街へ、そして都市へとして来たでは無いか。 それに森の民とも交易を行い交流を持ち良き関係を気づいて来たはずだ。それは帝国には無い優位性ではないのか?」
「それは間違いありません。森の民のおかげで魔物対処の効率が上がりその素材により我が国に益が生まれたのですから」
「皆思う所があるのは分かるが今後の方針を決める為そろそろ具体案を出さぬか? それともお互いを牽制しあう愚か者しかおらぬのか?」
王が威圧を込め会議参加者にその視線を向けた事によりその場の雰囲気が一気に引き締まり外務省長官が将軍へと改めて質問をした。
「将軍、都市の砦へ出兵命を出した場合、幾日で動けます? またその最大人数は?」
将軍は隣に座る副官と相談し
「命を出し砦まで3日、最大人数で出撃準備に2日ないし3日と言った所だ。ただしこれは輜重部隊が後発の場合で同時に砦から出るとすれば出撃に6日から8日と言った所だ。ちなみにこれはあの地での活動日数は7日で計算した場合だな」
それに答えたのは財務長官だった。
「それは砦都市の備蓄兵糧で賄った場合ですか? それとも周辺の街などからも集めた場合ですか?」
「砦都市のみでだな。あそこは氾濫が起きた場合都市の住人と砦の兵士が1月程籠城出来る様に備蓄をする様にと先代の王から指示を従ってる。帝国の氾濫鎮圧から得た教訓だな。だが、直ぐに出撃に対応出来る様に準備してるのが7日分なのだ」
すると宰相が将軍と外務省長官へと尋ねた。
「外務省長官よ、森の民へ協力を願う事は可能か? それと将軍、砦の兵達と森の民との交流はどうなってる?」
それに答えたのは意外にも副官であった。
「どちらも可能です、とお答えいたします宰相様、王よ」
そう言うと副官は被っていた革製の兜を取って見せた。 それを見た参加者は一様に驚きを隠せなかった。
真っ先に王が将軍へと「説明せよ」と視線を向けたがそれに答えたのは副官席に座ってた者であった。
「先ずは騙すような真似をした事深くお詫びいたします。私は森の民族長の次女です。 砦都市と我が一族は定期的に軍事訓練を行い魔物の氾濫に備えています。そして5日前、一族の占い師が異界の門が近く開くと族長へと言いに来ました。そしてその事を聞いた族長はすぐ砦都市へ私を使者として送り出しました。話を聞いた砦の隊長はすぐに護衛と馬車を用意し私から直接そのその話を将軍へと伝えるように頼んで来ました。 で、こちらに到着して将軍へと報告してる時にあの天空の光と王からの召集がかかったので将軍に頼みこの場に参加させて頂いた次第です。 また隊長は「何時でも出撃出来るように準備は進めて置きます」と言って居りました」
それを聞いた参加者達は一様に驚いていたが直ぐに気を取り直した。
「将軍、直ちに砦都市の兵に出撃し異界の者を保護せよ、と命を出せ。
財務長官よ、此度の出撃に掛かる兵糧を補充計画を立てよ。外務省長官、そなたは周辺各国に此度の出撃は戦争目的では無い胸をしっかりと伝えよ。 宰相は各部署の補佐を頼む。 事は迅速な対応を有する。教会に気づかれずに行えとは言わんが可能な限り悟らせるな。分かったら即動け!」
王が劇を飛ばしそれぞれが動こうとしたとき森の民から待ったが掛かった。
「王よ少し待って頂きたい! 皆様も!」
その声で動こうとした皆が動きを止めた。
「まだ伝え切れてない事がございます。それを聞いてから判断し動いて頂きたく思います」
それを聞いた王は既に席を立った者たちにもう一度座る様に支持を出した。 参加者がもう一度座ったのを確認した森の民は改めて占い師の言葉を伝えた
「占い師はこの王国にまだサムライ道の騎士が居るならその者達に来て貰えと。 そして恐らく330年前の異界の者と同じ国の者・達・であろう、と」
それに真っ先に反応したのは王だった。
「待て、今其方は者・達・と言ったか? 複数人居るのか?」
「はい、占い師のババ様の話では少なくとも二人、多くとも5人居ると言って居りました」
それを聞いた会議参加者全員驚愕の表情を浮かべて居た