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東方霊々那  作者: 幽零
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―夢の消失―

―夢の消失―



―幻想郷―忘れられし者たちの楽園。この地には人間のほかに、現―うつつーから忘れ去られたもの、妖怪や妖精、果ては神までもがおり、独自の文明が築きあげられている。

そんな幻想郷では『スペルカードルール』が制定されており、幻想郷でのもめ事や紛争はこれによって決闘が行われている。これによって人、妖怪同士が争うときも必要以上に力を出さないようにし、技の美しさを競い合い決着を決める。

 幻想郷暦第一四三季、春。数多の季節を繰り返し、数多くの異変を繰り返してきた彼女たちに、さらなる『異変』が舞い降りることとなる。




「・・・なんだと?霊夢がいない?」

 博麗霊夢。幻想郷の調和を図る『博麗の巫女』。スペルカードルール制定の立役者であり、幻想郷に異変が起これば解決をしていくスペシャリスト。

 その霊夢がここ数カ月帰ってきていない。何か異変が起きたのであればわかるが、今はそんな気配もない。

「ああ。だから私がここにいる。しばらく博麗神社の身辺を見ていることを仰せつかっているからね。」

 語るのは九尾の狐。ある妖怪の式。名を八雲藍。

「・・・紫はこのこと知っているのか?」

「だから私がここにいる。紫さまも霊夢を探しているのだろう。博麗大結界の調整も私がしなければならないほどだ。」

 八雲紫。幻想郷創設者のひとりであり博麗の巫女の後見人。一人一種族の妖怪。スキマという境界を操る程度の能力をもち、神出鬼没、不敵な少女。

「紫の奴が霊夢のことを把握してないなんて考えにくいぜ。何かあったに決まってる。」

「私も心配しているが、本人が見つからないことには仕方ないだろう。白黒の魔法使い。」

白黒の魔法使い。霧雨魔理沙。霊夢と共に数々の異変を解決してきた博麗霊夢の友人でありライバル。大きな黒い帽子を被り、その身を白と黒の衣装で飾っている少女。大きな箒を携えており、長い金の髪に左サイドを三つ編みに、リボンを付けている少女。

「・・・もし、このまま霊夢が見つからなかった場合、どうなる。」

「通例通りなら、巫女の代替わりが起こるだろうな。」

 博麗の巫女の長期不在は幻想郷の調和にかかわる。巫女が不在となれば、新しい巫女を用意するしかない。歴代の巫女も、そうして代替わりしてきた。

「・・・そんなのは認めないぜ。待ってろ。絶対に私が霊夢を見つけてきてやる。」

 そうして箒にまたがり博麗神社を去る魔理沙。

「・・・私もまだ、霊夢には巫女でいてほしいよ。紫さまもきっと、そう願っている。」

 主のことを思い、消えた巫女を思う。あの魔法使いには嘘をついた。霊夢の居場所は知らないが、行く末は知っている。

「・・・次の巫女は一体、どんな子が来るのか。」

 呟いた言葉は、未来への思い、過去への思い。まじりあった言葉の思いはどこへ向かうのか。




 魔法の森。人間がたやすく足を踏み入れる場所でなく、化け茸の胞子が宙を舞うこの森では普通の人間では体調を崩してしまう。そんな場所に立つ家が一つ。

 霧雨魔法店。霧雨魔理沙の自宅兼何でも屋。魔理沙が魔法の森に作った何でも屋だが、めったに人が踏み入ることは無い。魔理沙自身、依頼を受けるというよりは自分で勝手に異変に首を突っ込むため、店としての看板を背負ってはいるがほとんど機能していない。

「ここもしばらくは戻ってこないかもな。あいつに言って家の掃除を頼んでおくか。」

「そんなことだろうと思ったわ。」

支度を終え、外に出ようとすると玄関に寄りかかりながらそう答えてきた少女。

「よおアリス。ちょうどよかったぜ。お前のところに行こうと思ってたんだ。」

アリス・マーガトロイド。七色の魔法使い。人形を扱う魔法を使う魔法使い。金髪で自身も人形のような美しい容姿。人里でも人形劇などを行い人気も高いが、彼女自身はさっぱりした性格らしい。そのわりには知り合いにはおせっかいな行動もしばしば。今回もそのような性格ゆえの行動か。

「あなたのことだから霊夢をさがしに行くんでしょう?霊夢がいなくなったって聞いた時からそんな気はしていたわ。」

「さすがアリスだぜ。ってことで、私はしばらく魔界に行ってみる。」

「魔界に!?あなた・・・」

 魔界。幻想郷とは違う世界。霊夢や魔理沙、アリスはかつて魔界でまみえることもあった。

「霊夢は多分幻想郷にいない。もしいるなら紫の奴がとっくに見つけているだろうしな。それなら、別の世界にいると思うのが私の考えだ。博麗神社からも近いし、まずは魔界。いなかったら次は夢幻世界だな。」

「・・・わかったわ。今のあなたなら一〇年前とは違って危険なこともないでしょう。」

 そう言いながら一つの封筒を魔理沙に渡すアリス。

「おいアリス、これはなんだ?」

「手紙よ。魔界に行くのなら役立つでしょう。おか・・・んん!神綺さまにそれを渡しておいて。もし幻想郷に霊夢が帰ってきたなら魔力を通じてあなたに連絡を入れるわ。」

「さすがアリスだぜ。悪いな、いろいろ気使わせて。」

「いつものことでしょ。もう慣れたわ。霊夢の自由さも、あなたの自由さにも。」

そう、いつものこと。霊夢に、魔理沙に出会ってから彼女たちに振り回されてばかりだった。でも、アリスはそれを悪いこととは思わない。彼女たちは人間。魔法使いの自分より刹那の時を生きる彼女たちに振り回されるのも悪くない日々だった。むしろ刺激のある楽しい日々だった。

あれから何年か経ち、いつの間にか魔理沙の身長も自分より少し高くなっており魔力も高まっている。

「だから早く霊夢を連れて帰ってきなさい。帰る場所は用意しておくから。」

「おう。任せとけ。幻想郷のことは任せた、アリス。」

言うなり箒にまたがり飛び出していく魔理沙。それを見送りながらアリスはつぶやく。

「まだ幻想郷には霊夢も魔理沙もいないとつまらないわ。頼むわね、魔理沙。」

 言いつつ魔理沙の家に入るアリス。その視界に広がったのは。

「汚い!魔理沙!相変わらず片づける癖がついてないのね!!」

 時がたっても変わらないものがあると実感するアリスであった。




 霧の湖の中心に座する館、紅魔館。館にはとある悪魔が住んでいる。当主であるの吸血鬼、レミリア・スカーレット。かつて幻想郷にて『紅霧異変』を引き起こした張本人であり、当時初であるスペルカードルールによって霊夢と魔理沙に解決された。そんな彼女たちも幻想郷に馴染み、今は紅魔館周りを散歩している。

「霊夢がいなくなってからどれくらい経ったかしら?咲夜。」

「一カ月ほどでしょうか。そろそろ出てきてもいいと思いますが。」

 答えたのはレミリアの従者。紅魔館のメイド長、十六夜咲夜。『紅霧異変』時には霊夢や魔理沙と戦い、異変解決後に起こった別の異変時には異変解決側に回るなど、霊夢や魔理沙と共闘することもあった。

「私も空いた時間に探してみてはいますが・・・」

「霊夢がいなくなったらつまらなくなるわ。多分幻想郷にいる楽しみも減ってしまうわね。」

 博麗霊夢が周囲に与えた影響は大きい。本人は否定するだろうが、妖怪でも人間でも分け隔てなく接する彼女によって来る者が多かったのだ。

「霊夢も人間。いつかいなくなることは考えていたけど。まだ早すぎるわね。咲夜、貴女もそう思うでしょう?」

「・・・はい。そうですね。」

 十六夜咲夜。彼女は人間だ。しかし人間に非ざる力を持ち、その力ゆえに以前は人間を拒んでいた。しかし霊夢や魔理沙に出会い、力をもった人間は自分だけじゃないと、咲夜自身の考えを大きく変えた。

「あなたもさらに美しくなったことだし、よりよく輝くためにもうひと手間ほしいところだけれど。」

「・・・うぅ・・・」

 小さなうめき声。聞こえたのは一瞬だが吸血鬼には聞き取れる。

「あら、こんなところに人間が落ちてるわ咲夜。」

「そのようですね。最近にしては珍しいです。」

「・・・ぁ・・・」

「さてどうしようかしら?金の髪に全身に包帯、それに・・・」

レミリアの言う通り、倒れていた少女は金の髪に、全身に傷を覆っており包帯を巻いていた。

「お嬢様、この娘・・・」

「不思議ね。いつもなら食料にしようかしらと思うのだけれど。」

「このように傷だらけの人間を食されてもお嬢様がたの身体に障ります。」

「わかっているわ咲夜。この娘、数奇な運命を持っていそう。咲夜、連れて帰るわ。貴女の運命もさらに輝きそうだわ。」

「かしこまりました。」

咲夜は倒れていた少女を背負い駆けていく。心なしか、その足取りはいつもより早く。

「似ているからかしら?自分と重ねているのね、咲夜。」

 先に戻った自分の従者を見つつ、これからの運命を楽しみに待つレミリア。行く末は幻想の果てか現の夢か。


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