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22話 人間族四人組

 ジャングルの薄暗い中を、四人の冒険者が歩いている。


 「木偶の坊。本当にここら辺なのかしら?」

 「俺を木偶の坊って言うんじゃね! 俺には立派な名前があるんだよ!」

 「そんなのどうでもいいのよ。薬草なんてどこにあるのかしら?」


 チクショ、俺にはデグって言う立派な名前があるのによ……。


 「やれやれ、デグはからかわれやすいですねー」

 「バカだからしょうがない……」


 俺を木偶の坊と言ったナイスバディはリサだ。そして、やる気の無い間延びした痩せ男はカール。俺をバカと言った小生意気なチビ助がベムだ。


 俺達は冒険者としての依頼の為、ここまでやってきた。


 「人の悪口を散々言ってくれるぜ……」

 「木偶の坊が弱いから良い依頼を受けられないから文句を言われるのよ?」

 「うるせ! お前だって弱いだろ!」

 「やれやれ、二人とも弱いじゃ無いですか」

 「「お前が言うな!!」」

 「みんな弱いと思う……」

 「「「……」」」


 俺達は食べる物に困った時は、よく薬草取りなど雑用系の依頼を受ける。


 「そういえば、四年前にも食べる物に困って、ここら辺に来た事あるな」

 「あー。あったわね」

 「あの時は本当に大変でしたね」

 「モンスターが居た……」

 「あぁ、あの時は小型が居て焦ったが、俺達にかかれば余裕だったな!」

 「余裕は無かった……」

 

 四年前にも依頼で薬草を取りにここまでやってきた。

 その際に小型モンスターが居たので挑んだら、案外簡単に勝てたぜ。


 「余裕とか言っているけど、木偶の坊単体だと、全く攻撃が通って無かった気がするわよ?」


 リサがこちらを向いてニヤリと笑っている。

 確かに、あの時は身体強化をして攻撃したがモンスター相手に傷を付けるのが精一杯だったな……


 「そういえば、あの時の小型は僕達以外に注意が逸れていましたね」

 「ベムもそう思った。何か別の獲物?を追っている様な感じがした……」

 「そうだったかしら? なんか大きい木に体当たりしていたけど、気にし過ぎよ」


 今思い出すと確かに、小型は木を次々と倒していた。

 だがあの時、周りに何かあったりしたか?


 「まぁ、いいじゃないですか。こんな任務さっさと終わらせて帰りましょう」

 「そうね。こんな所でモタモタして婚期を逃したくないわね」

 「もう遅いと思う……」

 「ベムー? 何か言ったかしら?」

 「な、何も……」


 リサに婚期の話は禁句だな。


 今回は薬草探しでここまで来たが本来こんなに遠く来る必要は無い。

 だが、人間族の国に近い場所だと他の冒険者達が居るので競争になり、それなりの量を採取する事が出来ない為、今回はかなり遠出をした。


 「それにしても、こんなに遠い場所まで来る必要あったのかしら?」

 「無い。絶対に無い……」

 「僕もそう思います」


 出発する前から、ずっとこの調子だ。


 「だから言っただろ? 近場だと取り尽くされているし、ここまで遠出すれば取り放題じゃねぇかよ! 見ろ! あっちにもこっちにもあるぞ」

 「だからと言ってこんなに遠出する必要ないわよ。ただでさえ、モンスターに遭遇する危険性だってあるのよ?!」

 「モンスターなんて前に俺達四人で倒したじゃねーかよ。大丈夫だって」

 「あれは小型一体だけじゃない。複数の小型だったり中型なんて来たらアウトよ?」



 女達はこの文明が無い所で一夜を過ごすだけでもキツイらしく、更に命の危険がある為物凄い御立腹である。


 だが、そんな危険な依頼でも来る理由としては、報酬が良いからだ。

 ただの薬草採取だが、ポーションに使う材料という事もあり、いつも品薄状態だ。


 ポーションは冒険者には必須アイテムであり、モンスターとの戦闘や、他種族との戦闘で怪我を負った際に重宝される為、冒険者はもちろん軍や一般人までも常にストックを持っておくのだ。

 基本人間族の住処でしか販売はされてないと聞く。そんなわけで、たかが薬草ではあるが、一房あたりの報酬が破格の為、危険を顧みず、ここまで来るわけである。


 「わ、悪かったよ。帰ったら酒奢るから」

 「料理もよ? 高いコースが良いわ!」

 「分かった、分かった」


 ふぅ。なんとか落ち着いてもらった。


 この薬草のオアシスは俺達しか場所を知らない為取り放題だ。

 四年前はかなり稼がせてもらったぜ。


 そんな時、地面からの振動が足に伝わった気がした。


 「今揺れたか?」

 「そうね。何か揺れた感じはしたわね」

 「ベムも感じた……」


 俺を含め三人が揺れを感じていたらしい。


 「みなさん、少しお静かに」


 そう言ってカールは地面にしゃがみ込んで手を地面に当てて目を瞑り始めた。


 しばらく、そうしていると足からの振動がどんどん大きくなってくる。


 「不味いですね……」

 「カール、どうしたのかしら?」

 「するなら、あっちの茂みで見えない様にしてね……」


 ベム……。可哀想な子だ……


 「恐らくモンスターです」

 「「「?!」」」

 「こちらに向かってきていますね」

 「カール、どっちの方向だ!」

 「多分ですが、南からです」

 「……迎え撃つぞ」


 俺の言葉に、さっきまでふざけていた連中は真剣な表情に切り替わり、頷く。

読んでくださりありがとうございます!

お気に召しましたら、感想や評価をいただけると作者が泣いて喜び、感謝します!

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