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162話 トラクの過去

 【二つ名】の一件から数日経った。俺達は金策の為に商人やドワーフ達武器職人に頼まれた材料を集めたりした。

 名が売れたのが影響か、依頼はどんどん来た。


 だがエルフのトラクが提示した金額にはまだ届かない為、もう暫くは金策活動をしないといけない。


 今日は金策活動をする前に一度武器の製作状況を知りたいとロピが言い出したので一度トラクの所に寄る為に出店が立ち並んでいる長い一本道を歩いている所だ。


「どれくらい出来上がっているかなー?」

「まだ、数日しか経ってないし全然出来てないんじゃないか?」

「姉さんは楽しみなんだね」

「うん!」

「ほっほっほ。でもお金が無いと引き取れませんぞ?」

「「「……」」」


 リガスの言葉に声も出なくなった俺達は黙って歩き続ける。

 すると、ドワーフ達に声を掛けられた。


「お! お前ら良かったら俺の依頼も受けてくれねぇーか?」


 どうやら依頼の話らしい。


「どんなのだ?」

「ん? よく分からない奴か」


 ──ッひどい! 


 ドワーフは俺の顔を見ると先程までの笑顔が、苦笑いに変わったのを俺は見逃さない!


「実は小型のとある部位を材料にしたいんだが、頼まれてくれねぇーか?」


 ここに来て話を聞いたが、どうやら武器や防具の材料にモンスターを使用している事は多いらしい。

 モンスターの頑丈な外皮を利用して防具を作ったり、モンスターの歯などを研いで加工したりして武器にしたりするらしい。


「分かった。討伐したら持ってこよう」

「ありがとうな! 鉄壁と剛腕、雷弾が居れば安心だな」


 ……俺は?


 依頼の詳細を聞いて俺達は再びトラクの店に向かう為歩き出した。

 

 そしてトラクの店に着き進捗を確認する。


「メガネさーん、来たよー!!」


 ロピが店の前で大きな声でトラクを呼ぶ。しばらくすると、奥からメガネに煤を付けたトラクがやって来る。


「皆さんお揃いで」

「どれくらい出来上がったか見に来たよー」


 それから俺達はトラクに店の中に入れてもらい武器を見せて貰った。


「いやー、ロピさんに頂いた材料の加工が思ったより進まなくて、まだ完成してません。すみません……」


 メガネをずり下げながら頭を下げるトラクに対してロピは慌てた様に言う。


「い、いいんだよ! 全然気にしないでメガネさん。ただ待ち遠しかったから様子を見に来ただけだし」

「そうだったんですね」

「うん! 魂を込めた一品を作ってくれるなら、私待つよー!」

「その点はお任せ下さい、全身全霊を持って武器製作に挑みます!」


 それから話はトラクの過去話になり、何故エルフであるトラクが武器職人を目指しているのかロピが聞いている様だ。


「私には小さい頃に親友の女の子が居ました。その子とは毎日、日が沈むまで遊び回っていましたね」


 子供の頃は皆そんな感じで遊ぶのが普通だな。むしろロピやチルの幼少期時代が過酷過ぎたな……。


「その女の子はエルフ族の村で偉い家系の子でしたので成長するに連れて村を守る為に戦闘訓練をする様になりました」

「私達と一緒だねー」

「ん? ロピさん何歳なんですか?」


 トラクはロピの年齢を聞いて驚いたらしい。

 まぁ、見た目はどう見てもトラクより大人ぽいしな……。

 それに種族によっては同じ年月生きていても成長の度合いは違うらしい。


 どうやら、トラクの親友である子が戦闘の為訓練を始め、遊べなくなり疎遠になったらしい。


「ある日村に人間族が攻め込んで来たんです」

「え、なんで?」

「何故か人間族から見たらエルフは魅力的らしく、奴隷にする為にエルフの村を探し回っていたらしいです」


 俺が前に居た世界同様、ここでもエルフ族はとても綺麗である。トラク以外にもこの村には何人ものエルフが居るが、男女共に整った容姿をしており、人間族ならば誰でも惹きつけられる存在である。


「村全体が混乱しましたが、親友の親族達が率先して村人を安全に逃げられる様誘導し、自分達は最期の最後まで人間族達に抵抗していました」


 村で偉いと、そういう事も責務に入るのだろう。


「ですが、それが悪かったんですかね……。親友の子と親族達は捕まってしまい人間族に良いように弄ばれたと母から聞かされました……」

「ひどい……」


 トラクの話を聞いたロピは過去の自分と重ねたのだろうか、悲痛な表情を浮かべている。


「人間族は三日三晩楽しんだ後に、応援を頼んでいたエルフ達が来て、殺されました……。ですが親友の子はその事がショックで塞ぎ込んでしまい親族と一緒に他のエルフの村に行ってしまいました」

「その親友の子は大変だったんだね……」

「姉さん……」


 ロピも同じように人間族に酷い事をされて居た時があり、それが妹のチルの為だった事をチル自身は覚えている。

 そしてロピとチルはトラクの話を聞いて色々昔を思い出してしまったらしい。


 微妙な空気を感じ取ったのか、トラクは元気に話し出す。


「ですから、私はどうにかしてその子の役に立ちたいと思ったんですよ!」


 会えなくてなっても親友の為に何かしてあげたい! ……いい話だ。


「そこで、私も強くなろうと思い木刀を振り回したり走り回りましたが、そっちの方はからっきしでしてね」


 あはは、とトラクは乾いた笑いをする。


「だから昔から手先が器用でしたので、違った形でサポート出来ればと思い武器職人を目指したんですよ!」

「なるほどー。メガネさんは友達の為に武器職人になったんだね!」

「はい! ですが子供の頃に会わなくなって結局そのまま一度も会ってないので、今では武器作るのが楽しいので親友の子の為に武器職人を目指しましたが、今では自分自身の為にやっています!」


 最後は笑顔でトラクは話を締めくくった。





読んでくださりありがとうございます!

お気に召しましたら、感想や評価をいただけると作者が泣いて喜び、感謝します!

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