142話 反撃開始?
ガルル、ググガを攻撃しようとしていた小型はロピの雷弾により仰け反った。
「おい、大丈夫か?」
「アトス助かった!」
「アトスさんありがとうございます」
かなり危ない所だったがなんとか間に合って良かった。
「二人とも大丈夫ー?」
「ロピ助けてくれてサンキュー」
「ロ、ロピさん……」
ガルルは泣きそうな顔でロピを見ていた。
「ん? どうしたの?」
「い、いえ。助けて頂きありがとうございます」
「無事で良かったよー」
ガルルとググガが俺達の登場で安心したのか笑みを浮かべている。
「アトスさん小型は二人捕食しています」
「俺達二人で攻撃しても傷一つ付かねぇーぜ」
「二人捕食してそんなに成長を……」
「お兄さんどうするの?」
二人捕食しただけで、ググガ達の攻撃が通らなくなったのか……。流石にチルの攻撃でも何発も入れないと倒せないかもな……。
「とにかくここから少し移動するぞ」
「オッケー」
「わかったぜ!」
「分かりました」
俺の言葉に頷き移動を始めようとすると、他の者から異議が唱えられた。
「おい、ちょっと待ってくれよ」
「お客としてウチの商品を買う分には良いが、命が掛かっている状況で、人間族の指示なんて聞きたくねぇーよ」
「そうだそうだ。俺らはガルルさんだから指示に従ってただけだぜ?」
商人の中に居た獣人族達が騒ぎ始める。周りにはピタみたいに人間族の商人達も居て、そっちの方は特に反論などは出てこなかったが獣人族達は納得出来ないでいるらしい。
「むー。お兄さんの指示に従ってればいいんだよ!!」
ロピは怒気を込めた口調で言うが聞く耳をもたない。
「おい、こんな状況で言っている場合じゃねぇーだろ!」
「ググガの言う通りだ。俺はアトスさんが纏めるのに異議など無いし逆に任せたい」
ガルルとググガが言ったことにより納得はして無い様だが大人しく移動する事になった。
「アトス、どこまで移動するんだ?」
「すぐそこだ。付いて来てくれ」
こうして俺を先頭に商人達も移動を始めた。もちろん俺達を捕食する為に小型も付いてくる。そして少し移動した所にはリガスが居て冒険者パーティと一緒に戦っているのが見える。
「魔族さん、来たよ!」
「ほっほっほ。お待ちしておりました」
「状況は?」
「どうやらこの小型も先程倒した奴と同様少しおかしいですな」
「そうか……」
俺達が連れて来た小型が二人を捕食した事も伝えてリガス達に合流し、即席で編成をする。
「よし、これからチルがもう一体小型を連れてくる」
「チルも無事なのか! 良かったぜ……」
ググガが安堵する。
そうしていると、二体の小型はお互い餌を目の前に縄張り争いを主張し合う様にモンスター同士で攻撃している。その間にチルがこちらに到着する。
「チルちゃん平気?」
「うん。それよりアトス様大変です!」
「どうした?」
「私が連れて来た小型は五人捕食しています!」
チルの言葉に俺だけでは無く周りの冒険者や商人達までも驚愕する。そして更にもう一体小型が現れて三体で争いを行なっている。このまま同士討ちして欲しいが多分無理だろう……。この時間で少しでも作戦を考えないとな。
「五人って事は、あの冒険者パーティは全滅か?」
「はい。私が到着した時には既に……」
あのチームワーク抜群だったパーティが殲滅かよ……。
「おい、アトスどうするんだよ」
クソ! 計算が狂った。まさか五人も捕食しているなんて思っていなかった。一体どれくらい強くなっているんだ?
「パーティを三つに分けようと思う」
「ふむ。それしかありませんな」
「小型一体を俺達パーティで担当する」
「よーし、やるぞー!」
「頑張ります!」
ロピとチルが気合を入れる。
「更にもう一体をイケメン達に任す!」
俺はハーレムパーティにいるイケメンの方を見て言う。
「も、もしかしてイケメンって僕の事かい?」
「ふふ、当たり前じゃない。この中の誰よりもカッコいいわよ」
「おう! ババァの言う通りだぜ」
「アナタ以外居ないですね。ですがあの紳士も素敵……」
「カッコイイ……」
む、ムカつくー! イケメン野郎め!
「そして最後の一体を商人達で相手を頼む」
「任せてください」
「おう! 任せろ」
五人捕食した小型を俺のパーティで相手をして、二人捕食した小型をイケメンパーティ、一人も捕食してない奴を商人達に相手して貰うように指示を出す。だが、それに又もや反論をする者が居た。
「ケッ! 結局さっきまでと何も変わってねぇじゃんかよ!」
先程、俺に反論した獣人の商人だった。それを見たチルが歩き出す。
「アトス様。アイツ消して来ます……」
「ちょ、ちょっと大丈夫だから! 消さないで問題無いから!」
「チルちゃんやっちゃえ!」
「ロピ、お前も煽るな!」
「ほっほっほ。チル様手を貸しましょうか?」
なんなんだよコイツら。こんな危ない状況なのに何を考えているんだよ!! 俺はなんとかチルを抑えて商人に理由を説明する。
「今までとは違うぞ?」
「何が違うんだよ。結局各パーティが対応するだけじゃねぇーかよ」
「いや違う。俺だけは全パーティの戦闘に参加するから」
俺の言葉にロピ達以外は首を傾げた。それはそうだよな、何を言っているか分からないか……。
「俺のスキルである、能力上昇を使って全パーティのサポートをする」
俺が自分のスキルを打ち明けると商人達だけでは無く冒険者達までもが一斉に大笑いする。
「あはははは。お前こんな危ない状況で良く冗談言えるな!」
「能力上昇なんて珍しいだけで、ただのハズレスキルなんだから、リーダー面するなよ!」
笑いは直ぐに止むが、周りからは馬鹿にする様な視線が降り注ぐ。
「アトス様小型を殲滅する前にコイツらを先に殲滅しましょ」
「1……2……3……」
「さて、チル様、どいつからいきましょうか?」
「ストップ、ストップ! そんな場合じゃ無いから! ロピもカウント止めろ」
本当に脳筋な人達怖い……。
「能力上昇が弱くて馬鹿にする気持ちは分かるが今はそんな場合じゃない。どうか今だけは我慢して欲しい」
俺は深々と頭を下げる。すると何人かが話し出す。
「ぼ、僕は良いと思う。この執事さんに助けてもらったし、その執事さんのパーティの方なら安心だし……」
イ、イケメン……。お前はなんて良い奴なんだ……。
「ふふ、なら私達も賛成ね」
イケメンパーティからは賛同を得られた。そして商人パーティからも賛同する声が上がる。
「私は先程も言ったがアトスさんが纏めるのに賛成だ」
「兄貴に同じく」
「私も賛成でございます。皆さん今は種族間の問題を忘れましょう!」
ガルル、ググガ、ピタの言い分と危機的な状況だからなのか商人達もなんとか納得してくれた。表情を見る限り俺の事を認めた訳では無さそうだが……。
そして小型達の争いも収まっていた。結果はやはり五人捕食した奴が圧倒し、一番最初に選ぶ権利を得たのか他の二体は大人しく待っている様だ。
「それじゃ、各自担当の小型を頼む!」
俺の掛け声と共にそれぞれのパーティが散らばり小型の前に行き構える。
さて、ここからは総力戦といきますか!! 俺は自分の頬を叩き気合を入れた……。
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