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136話 急造パーティ

 そこには商人達が固まったいた。人数にして二十人いかないくらいだろう。どうやら商人達はモンスター二体を纏めて討伐しようと思っているらしい。


「おい、ピタ! この人数でいけるか?」

「おぉ……、ガルルさんとググガさんご無事でしたか!」

「おう! オッサンも無事で何よりだぜ」


 人間族の商人と獣人族の商人が話をしているらしい。人間族の商人であるピタという者はアトス達がここに来て最初に話し、色々状況などを教えてくれた商人である。


「商人達の人数は大体二十人居ます」

「うむ。それなら十分だろ」

「まぁ、兄貴と俺が居れば余裕だぜ」

「ですが、その中には商人達の弟子も含まれて居ますので戦闘として役に立ちそうなのは十人程かと……」

「半分か」

「だ、大丈夫だって!」


 三人の話を聞いていた別の商人達の表情が若干曇る。それを察したのかググガは直ぐに大声で話し始める。


「皆! 恐れるな! 攻撃は俺とググガが行う!」

「おう、任せとけ!!」

「だか、それだけでは倒せない可能性もある。この中で攻撃に参加してくれる者はいるか!?」


 ガルルの応募に対して何人かの商人が手を挙げて参加の意思を示した。


「うむ。商人でありながら勇敢な者達よ、良く手を上げてくれた! お互い死なない程度に頑張ろうじゃないか!」


 ガルルの鼓舞により先程まで曇っていた商人達の表情が今では覚悟を決めた顔付きになる。


 理由はそれぞれだろう、単純に戦闘が好きな商人、自分達の荷を護る為に戦う商人など様々だ。だが誰一人逃げない理由としては、ここで逃げて無事に生き残ったとしても、商人としては生きていけなくなるからだ。商人とは信用が命。ここで逃げたとしたら他の商人達から一気に噂が広がり物資を売れなくなるからだろう。


「よし、後衛でサポートする者、モンスター達を惹きつける者達も死ぬな!」

「よっしゃー! 血が騒ぐぜー」

「み、皆さん! モンスターが来ます」


 ピタの掛け声で他の商人達が各自配置に着く。


「戦闘準備!!」


 そしてググガの掛け声で皆が武器や盾を構える。


「へへ、どうやら来たらしいぜ!」


 ググガが呟くと同時に小型二体がジャングルの茂みから姿を現した。小型は我先にと人間を捕食する為前衛で盾を構えている者達に突進をしてくる。


「前衛よ、この一撃どうにか耐えてくれ!」

「「「「「おう!!」」」」」


 大きな盾を持っていた複数の前衛が腰を屈めて小型からの攻撃を待ち構える。良く見ると商人達の腕や足、体全体が微かに光っているのが見えるが、恐らく各自スキルを使用しているのだろう。


 そして二体の小型が盾にぶつかった。その拍子に何人かは耐え切れず後ろに飛ばされて、また何人かは骨が折れたのか鈍い音が鳴り響く。小型による一発の突進で前衛は壊滅的な状況だ。


「やはり受けきるのは無理か……。だが突進は止めた!」

「おう、攻撃担当の出番だな!! 行くぜー!!」


 ググガは小型に対して勢い良く走り出す。それに続き先程攻撃担当として手を挙げた者達も遅れずに走り出す。


「フンッ!」

「オラッ!」


 ガルルとググガはスキルで強化した足を使い小型に対して飛び蹴りを食らわした。そしてそれに続くように剣であったり斧、槍などを持った他の商人達も同じ箇所を攻撃した。


「よっしゃー! 急造パーティにしては上出来なチームワークだぜ!!」


 そう言ったのはググガであった。そしてその言葉は確かに事実でもある。商人達が一斉に攻撃を仕掛けた小型は倒れており動く気配が無い。どうやら連続攻撃に耐え切れず絶命したと思われる。そして先程の飛ばされた者や骨を折った前衛達はピンピンとしている。


「ガルルさん、こちらの回復も終わりました」

「ピタ、良くやってくれた」

「オッサン、ナイスサポートだぜ!」

「我々商人達にしか出来ない戦い方もあるのですよ」


 ピタが言う商人達にしか出来ない戦い方というのは、ポーションの事である。先程小型の攻撃で怪我を負った者達にポーションを使用して回復させたのだ。


 この世界ではポーションで回復する事が出来るがとても高価で数が少ないのだ。殆どは金持ちか上位の冒険者くらいしか所持出来ない。だが商人である彼らは商品として常に何個かはポーションを持ち歩いているらしい。


「よっしゃ! 兄貴、一体倒したぜ!」

「よし、皆!! あと一体をこのまま倒すぞ!!」


 残り一体の小型を二十人程の商人達が取り囲む。


「この人数なら余裕ですね」

「オッサン、確かに余裕だが油断禁物だぜ?」

「ググガの言う通りだぞピタ」

「も、申し訳ございません」


 一体の小型を倒された事により、もう一体は警戒しているのか、こちらの様子を見ているようだ。


 そしてそんな時に商人達の中では衝撃的な出来事が、別で戦闘している場所で起きていた。


「アイツすげーぞ!?」

「一人で小型の攻撃を?!」

「あのジジィやっぱりすげ……」

「リガスさんか。小型の攻撃を一人で受け止めるなんてな」

「あれなら我々と違ってポーション要らずですな」


 小型との戦闘中だというのに商人達は魔族に注目していた。だがそんな場合ではない事は誰もが分かっている状況である。


「戦いに集中だ! あと一体倒したら他の場所をサポートする」

「早く倒しちまおうぜ!」

「ポーションは、まだまだありますよ」


 商人達が再度戦闘に意識を切り替えた。そして小型も何か察したのか攻撃を仕掛けて来る。


「盾を構えろー!!」


 ガルルの掛け声と共に前衛の複数が腰を下ろして構える。そして小型が複数の盾に向かって突撃してきた。今回は一体分の突撃の為なんとか受け止める事が出来た。


「よっしゃー、一体相手なら受止められるな!」


 ググガが走り出す。だがそれをガルルが慌てて止めた。


「待て、ググガよ!」

「あん?」


 ググガも含めて攻撃担当達は小型を見る。すると小型は一度突進して終わりでは無く、なんと連続で攻撃をしてきた。盾を構えていた者は次々に飛ばされる。


 飛ばされた商人達は、あまりの衝撃に動けないでいる状況だ。


「不味い! 小型の注意を惹きつけろ」

「「「「おう!」」」」


 この先どの様な展開になるかは全員が察知したのであろう、他の者は攻撃を主軸にした行動では無くあくまで注意を惹きつける行動に移したが小型は一目散に飛ばした盾役の所まで行き捕食し始めた……。


「グァァァァー!」

「──ッ師匠ー!! い、今助けます!」


 一人の商人が食べられている。そして一人の若い男が助けようと小型に攻撃をしている。他の者も攻撃を試みるが小型の捕食は止まらず、商人を食べ切ってしまった。


「!?」

「!? 兄貴、どうやら成長が始まった様だぜ……?」


 小型は捕食が終わると動きを止めた。そして微かにだが光を発している。


「捕食による成長ですか……。ですがこの人数ならまだ平気でしょ」


 いくら成長したとしても二十人程居る為まだ討伐人数としては余裕があると商人達は考える。


「よ、よくも師匠をー!!」


 ここは、一旦冷静になって態勢を立て直すのが良いはずなのだが、親しい人が食べられた恨みなのか若い男は小型に対して突っ込み剣を振り回す。小型は成長中の為、今は動いていないが、いつ動くか分からない状況だ。そして無慈悲にも小型は直ぐに動き出した……。


「クソ! クソ! 良くも師匠を!!」


 目には涙を溜めて、ひたすらに剣を振り続ける。だが小型に取っては蚊に刺される程度の痛みしか無いのか、若い男を一飲みした。


「……え? 俺も食べられているの?」


 若い男が最後に発した言葉はあっけないものであった……。


 


読んでくださりありがとうございます!

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