131話 何かの異変?
小型が二体現れた日から数日が経過した。その後も何回か出現したが全て冒険者や商人達が討伐した。残念ながらロピやチルは毎回訓練に出掛けていたので小型との戦闘は行なっていない。また、雨も常に降り続いていた。
「ねー、この雨いつ止むの?」
「どうなんだろうな」
「他の人に聴きますと今年は長いらしいです」
「ほっほっほ。急ぐ旅でもありませんし良いではないですか」
「でもこんなに雨が降り続いていると気が滅入る!」
「姉さん、私は雨音好きだよ?」
「えー?! 私は太陽の下で駆け回りたいの!」
犬かよ……。だがロピの言いたい事は分かる。この休憩所に来てから雨が降り続いている。なので最近は太陽の陽を浴びてないせいか気が滅入る事が多くなって来た感じはするな。
まぁ、ジャングル内だから直接太陽を浴びる事も無いし、木々が遮って昼間でも薄暗いが、それでも太陽が出ているのと、出ていなとでは大きな違いがある。
「てか、こんなに降り続いて大丈夫なの?」
「ふむ。ジャングルに取っては水は貴重ですし問題ないでしょう」
「そうなの? 絶対の飲み過ぎだよー! 飲み過ぎ注意だよ!」
そんな風にロピが騒いでいるとガルル達が訪ねて来た。
「おーう、来たぞー」
「アトスさん、これをどうぞ」
「毎日ありがとう」
俺はガルルから食べ物を貰う。今日は珍味だと言うが貰った時点で相当な異臭を放っているので、食べたいという意欲は失せている。そしてガルルはロピにググガはチルに話し掛けている。
「ロピさん、それでは特訓に行きますか?」
「嫌! 今日は中止。私ストライキするの!」
「す、ストライキですか?」
「ロピ、それ意味違くないか?」
「いいの!! 今日は訓練行かない!」
雨のせいでロピは機嫌を損ねた。今来たばかりのガルルは状況が飲み込めないらしく、オロオロとロピの周りをうろちょろしている。
「なぁ、アイツどうしたんだ?」
ググガもロピの様子がおかしい事に疑問を持ちチルに聞いている。
「姉さんは偶にああなるから気にしない方がいい」
「そ、そうなのか?」
「うん。どうせご飯食べれば治る」
「あいつ単純そうだもんな」
「そこが姉さんのいい所でもある」
「な、なんで自慢気なんだよ……」
そして、チルのよく分からない姉自慢に戸惑うググガ。
「ほっほっほ。ロピ殿はお腹が減っているんですね。今用意致します」
「子供扱いしないで! 私はお腹が減っているから機嫌が悪い訳じゃないの!」
そう言った後にロピのお腹から大きな音が鳴る。
「「「「「「……」」」」」」
「ち、違うの! 確かにお腹は減っているかもしれないけど!」
「ロピさん、誰でもお腹は空いたら不機嫌になりますから気にしないで下さい」
「本当に違うの! あ、雨のせいなの!」
「まぁまぁ、兄貴の言う通りだぜ。腹減っているんだから多少イライラしてもしょうがねぇーよ」
「姉さん、私もリガスの手伝いしてすぐ用意出来るようにするね」
「チルちゃんまで!?」
各々ロピはお腹が減って不機嫌と納得してご飯の準備を始める。ガルル達も食べて無いとの事なので一緒に食べる事になった。
「わ、私の事を誰も信じてくれない……」
ロピは驚いた様な表情をしてから勢いよく俺の方を向く。
「お兄さんなら分かるよね!? 私は雨に対して不機嫌って事を!」
「まぁまぁ、とりあえず飯食ってから話そう」
「お兄さんまで酷い!!」
「あはは」
「笑い事じゃない!」
ロピはいつも通り子供がやる様に顔をパンパンに膨らめせて怒っているアピールを俺にする。
「あはは、可愛い顔が台無しだぞ?」
「ぶー! そんな事言っても許さない」
俺は指でロピのホッペを押す。すると口に溜めていた空気が抜けて普段の表情に戻る。
「ほらご飯も出来たし食べようぜ」
「皆んな本当に失礼しちゃうよ!」
プンプン怒りながらもロピはしっかりとご飯の前に座る。
「ほっほっほ。それでは食べましょう」
「「「「「「いただきます」」」」」」
掛け声と共に一斉に食べ始める。
「ウマー! 魔族さん美味しい!!」
「ほっほっほ。それは良かったです」
そしてロピの機嫌は案の定治っていた……。
「おいチル、アイツもう、ご機嫌だぞ?」
「それが姉さんのいい所」
「また自慢気なのはなんでだ……?」
ガルルはロピの機嫌が直った事に安堵したのか自分に用意されていたご飯までロピにあげていた。
「え? いいのー?」
「ロピさんに食べて貰いたいです」
「ありがとうー!」
ロピの最高の笑顔にガルルは顔を真っ赤にしながらも、とても嬉しそうだ。そしてロピも先程とは雲泥の差だ。
「ロピさん訓練はどうしますか?」
「うーん、今日はお休みにしよ!」
「そうですか……」
ロピとの時間が過ごせない事を残念に思ったのかガルルの表情は暗くなる。
「なら久しぶりに私達も中止にしよ」
「お、おう……」
そしてチルの方も今日の訓練を中止したらしく、ググガの表情が暗くなるのが分かる。
「ほっほっほ。そう言う事だ若造、さっさとご飯を食べて帰るが良い」
「ック!」
「とりあえず飯食っちまおうぜ」
「そうだねー!」
「リガス、ご飯が冷める前に食べよう」
「ほっほっほ。私の料理で良いならいくらだって作りますよ」
「本当に美味しいな……」
「兄貴が言うなら本物だな! 年寄りの癖にすげーな」
皆んなで楽しく朝食を取り戦闘の事や他の村、種族、風習などをリガスや獣人商人達を中心に話を聞いたりして、とても有意義な朝食になった。
だが、そんな和やかな雰囲気はある男の一言で突然変わった……。
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