114話 アトスの不調
「それでは召し上がれ」
「「「いただきます！」」」
「うーん！ やっぱり魔族さんの料理最高」
「あぁ。旅の途中でこのレベルの料理が食べられるのは本当に贅沢だよな」
「リガスの才能に嫉妬さえ覚える……」
「あれ？ お兄さんあまり食べてないけど？」
「少し食欲が無いだけだな」
「大丈夫ですか？」
「あぁ、平気だ」
村を出立してから数日間が経過した。ロピの為に作ろうとしている武器の材料を探し回りながらなので距離的にはあまり進んでいない。そして材料の方もまだ見つかって居ない。
「もっと南に行かないと無いのか？」
「この辺りを探して見た限り、その様ですな」
「未だに何を作ろうとしているのか教えてくれない！」
「リガスには教えたのに酷いです！」
二人はいつもの怒っているアピールで口を膨らます。見た目は完全に大人だが、こういう事をすると年相応だな。
「お楽しみは取っといた方がいいだろ？」
「「ブーブー！」」
「ほっほっほ。お二人共まだまだ子供ですな」
リガスの言葉に二人はハッとして表情を作り直す。だが澄ました顔を作っているつもりなのだろうが、全然作れて居ない。
「ほっほっほ。次は珍妙な顔付きになりましたな」
二人は黙って立ち上がり、お互いに顔を見合わせて頷きあう。そしていきなりリガスに向かって鋭い攻撃を仕掛けた。
「ほっほっほ。お二人共なかなかの攻撃ですな」
そう言ってはいるがリガスは余裕で攻撃を捌き当たる気配を見せない。
「チルちゃん！」
「うん！」
二人は闇雲に攻撃しても無駄と思い連携を使った攻撃に切り替えた。チルが攻撃している間にロピはチルの後ろから石を投げつける。普通ならチルに当たるかもしれないという不安が出てくると思うがロピは相当な自信があるのか躊躇いも無く次々と投げる。しかも全てがリガスから見え難い様にリガスから見てチルと重なる時を狙って投げているのだから姉妹の連携の良さが見受けられる。
「ふむ。チル様はこの三ヶ月で大分格闘技が強化されましたな。そしてロピ様のサポートもタイミングなどが絶妙ですな」
リガスの褒め言葉も二人の耳には入って無いらしい。
「くっそー、魔族さん凄過ぎ」
「リガスに一発も当たらない」
それから三十分程全力で連携攻撃をして居た二人だが流石に体力を消耗したのか今は攻撃の手を止めている。
「はいはい、二人共終わりー」
「でも、お兄さん！ 魔族さんが！」
「そうです、リガスが！」
「気持ちは分かるが、三十分も攻撃し続けて当たらないんだから今のリガスに当てるのは無理だな」
「「うー」」
「ほっほっほ。お二人共とても良かったですよ？」
「「ぬー！」」
リガスの追い打ちに二人は声にならない声を発する。俺から見たら相当完成度の高い攻撃に見えたが、それは俺が戦闘素人だからか？
少し休憩して俺達はジャングルを歩く。
「あれ？ また雨だ」
「最近多いね……」
「村を出てから毎日だよな」
「ふむ。雨季ですかな？」
ここ最近毎日降っており、弱い時もあれば強い時もあるが、一日の大半は雨が降っている。前世みたいに傘なんて無く雨が降ったら被り物を着るだけだ。だが基本水を弾く物でも無いので雨に当たり続けると結局は濡れて身体が冷えてしまう。
「あれ？ だけど俺がシクと前に住んでいた場所は雨季とか無かったぞ？」
「ふむ。特定の地域に見られる現象らしいですな」
「なるほど」
「アトス様、寒くはないですか？」
「あぁ、心配してくれてありがとうな」
「お兄さん大丈夫ー？ 身体弱いんだから気をつけないとだよ」
俺をどんだけひ弱だと思っているんだよ！ だけど実際寒いんだよな……。
「ふむ。アトス殿少し具合が悪そうですけど、大丈夫ですかな？」
「え！？ やっぱりそうなの？」
「た、大変です！ アトス様直ぐに休む場所を作ります。姉さん手伝って！」
「うん！」
ロピとチルは慌てて近くの大きい木を探して雨宿りが出来る様に準備をしてくれた。そしてリガスも直ぐに乾いた着替えを用意してくれた。自分ではそこまで具合が悪いとは思ってなかったが他から見たら相当悪く見えるのか皆がテキパキと準備を進めて俺は直ぐに寝転ぶ体勢を取らされた。
「アトス様、何か不都合な事があれば何なりと！」
「お兄さん食べたい物とかある？」
「とりあえずこの辺りで取れる薬草とかを煎じたものです、お飲みください」
凄い至れり尽くせりだな……。このまま進行し続けても俺的には問題無いとは思うんだけどな。
「俺なら大丈夫だぞ？」
「いえ、いけません。最初を疎かにすると後が大変です！」
「そうだよー。お兄さんはただでさえ身体弱いんだから無理したらダメだよ」
「そこまで弱くねぇーよ！」
「「「……」」」
「いやいや、お前達が強過ぎるたけだよ！？ 俺が普通だからね？」
「まぁまぁ、無理せず休んでてよ！」
「では、私は夕食の獲物でも捕まえてきます」
「リガス私も行く」
二人は獲物を狩りに行ってしまう。
「よし！ お兄さんは私が守る！」
気合いを入れたロピが辺りをキョロキョロと見回し始める。まぁ、ここまで用意してくれたなら素直に休むか。この世界に来てから体調を崩すのは初めてかもしれないな。皆に心配かけない様に早く治すようにしよう。
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