人事異動
ある日、日本に突如出現した亀裂により異世界と繋がった。世界的なニュースとなり日本を始め各国の政府も異世界との交流を活発に進めていた。日本では異世界でビジネスを行なうことが許可される法案が可決され日本の企業は異世界市場展開を試みていた。
17:30 オリオン定時 商品企画課
「あー、やっと仕事終わったー」
空は背もたれいっぱいに体を伸ばし定時の開放感に酔いしれていた。
「先輩、ダラシないですよ。言われてた資料の作成終わったので確認お願いします。」
そんな空の様子を見て星は呆れ顔で資料渡す。
「相変わらず早いな、少しは先輩を休ませてくれよ。」
「休んでばっかじゃないですか。そういうセリフは私より仕事してから言ってください。」
「可愛くない後輩。」
空は露骨に面倒臭い表情をしながら資料を受け取り目を通し始めた。
「先輩、その確認終わったら飲みに行きません?」
「おー、いいぞ。よし、終わり。」
確認し終わり、そそくさと会社を出た。
2人の勤めるオリオンの近くに赤い看板で「楽蔵」という
居酒屋がある。元々、空が常連で新人で配属された星を連れて来た際、とても気に入ってた店だった。
「先輩、もうすぐ人事異動の季節ですね。」
「ないことを祈るだけだ。」
「今回、全体的に動きがあるみたいですよ。父が電話で話してる時、言ってましたから。」
「お前が言うとガチじゃん。来週が怖いわ。」
空は溜息をつき一気に飲み干し、ジョッキを開ける。
オリオンは定期的に人事異動があり新規案件やプロジェクト立案に際し行われることが多い。そのためこの時期に空は憂鬱になるのである。
土日休み明けの月曜。空と星は会議室へ呼び出された。
会議室に入ると上司の青柳が複雑な表情をして待っていた。
「青柳さん、どうしたんすか?そんな顔して。」
「水野、城音寺、人事異動だ。」
「えっ、2人同時に聞くんですか?」
「どうせ、同じ部署だ。この際、そこは問題じゃない。本題に入る。」
「君たち、2人には異世界に行ってもらう。」
全てはこの一言から始まった。
登場人物
主人公 水野 空(30)
ごく普通のサラリーマン。平凡をこよなく愛する。
ヒロイン 城音寺 星(26)
2人が勤める大手企業オリオンの社長の娘。
空は星が新入社員時、教育係だった。
優しい性格だが負けず嫌い。
青柳 流(45)
2人の上司で商品企画課長。