閑話 ⌕ꮺꮺǂഒ
ツバコさん、レビューありがとうございます!
そこまで力はないと思ってますが、めちゃくちゃ嬉しかったです。
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WBCめっちゃ良いですね~
というわけで、今回はあっしーのお話です。
23話の後の話になります。本編焦らしてすみません汗
外から食い込むような高速スライダーがキャッチャーのミットに収まり、芦原風李のバットが空を切った。
『三振~!なんということでしょう!これで三打席連続三振です!いやー、浅井投手は絶好調ですねー、本多さん』
『というよりも、風李の方が絶不調やな。この二人の対決はプロになってからも何度かあったけど、こんな一方的にやられる風李は初めて見たわ』
『確かに。芦原選手の三振自体珍しいですね』
高校時代からのライバルである浅井太郎に三打席連続で討ち取られた風李だが、特に表情を変えること無くバッターボックスを退いた。これには、流石のふうりファンの女子たち──界隈では<ふうり女子>と呼ばれている──も心配そうに見守っている。いつもの自信満々で強気な態度が鳴りを潜め、今はなんだか心ここに在らずという雰囲気を彼女たちは鋭敏に感じ取っていた。
「ふうり君……」
「ふうり様。何かお悩みが……?」
「でも、三振してもかっこいいのは反則」
「次に期待します。ふうり君なら最後に逆転してくれるはずです。なんたって、わたしたちの王子様なんですから」
「「「「「「うんっ!!」」」」」」
一層盛り上がりを見せる風李チーム側の観客席。なぜか、選手たちよりもその一体感は凄まじい。
しかし、今の風李にその期待は届かなかった。
8回から交代した相手ピッチャーの立ち上がりを上手く捉えた。ツーアウト満塁、一発出れば逆転の場面。打席には今日全く良いところの無い芦原風李。いつもであれば、こういう場面で必ずと言っていいほど決めてくれる怪物スラッガーだが、彼が打った後、球場が一瞬沈黙に包まれた。
初球の外角に外れたボール球を打ち上げ、ピッチャーフライに倒れたのである。そしてその直後、ふうり女子のみならず多くの観客が目を疑う出来事が起きた。バットの先端を掴んだ風李は、荒々しく地面に叩きつけたのである。これには解説席にいる者たちも驚きの表情を浮かべた。
『あんなアイツは初めて見たなぁ』
『……今まで凄く順調でしたが、ここにきてスランプでしょうか?』
『わからんな。でも、自分で立て直せる選手やと思うし、2日後の交流戦に期待せなな』
『相手は……なるほど。日本のエース、神崎ですか』
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試合後、ロッカールームで着替えをしている俺のもとに、今日の先発ピッチャーだった錦さんが近寄ってきた。
「よぉ、俺を敗戦投手にしてくれた風李君」
「……錦さん、すいません」
「マジでどうしたお前。『六回で四点も取られた錦さんに言われたくない』ぐらい言わないのか。今日の打席といい、本当に頭でも打ったか?」
「酷い言い草っすね」
「この二年、同じチームでプレーしてきて四打席出塁なしってのは初めて見たもんでな。なんか悩み事か?よかったらこの頼れる先輩に聞いてみい」
「……いや、いいっす」
「なんでだよ!」
俺は、錦さんに頭を乱雑に撫で回されながら、つい昨日のことを思い出していた。
雅が女優として花開いた影には、祐也の貢献が大きかったという話を聞き、今度開催されるオーストラリアとの親善試合のチケットをプレゼントしに行ったのだ。内に秘めて蓋をしていた雅への想いを祐也にあっさりと看破された昨日のこと。マスコミに変な記事を書かれないためにも雅を先に帰らせようと、マンションのエントランスまで送っていたとき──
「ゆうやくん、予想以上に喜んでたね。来た甲斐があったじゃん」
「あ、あぁ。そう、だな」
「何そっぽ向いてんの?……照れてる?」
「なっ!そんなわけないだろ。ていうか、何にだよ」
「ゆうやくんに喜んでもらえて」
「ま、まぁ。野球が好きみたいで嬉しかったよ」
一人で勝手に気まずくなって、雅の方を見れなかった俺だが、彼女と話してるうちに気にならなくなった。いつもの幼馴染との会話、これが俺は落ち着く。
だが、それは〝ふいに〟だった。
「……私も好きだよ」
「知ってるよ。雅も中学の途中までは女子野球をや──っ」
そこで気付いた。
立ち止まってこっちを真剣な目で見つめている雅の姿に。
「…………」
「…………」
心做しか雅の顔が赤い。俺もなんか少し熱っぽい気がした。明日も試合だというのに、ここで体調を崩す訳にはいかない。だが、なぜか彼女から目を離すことができなかった。
「それはどうい」
「あ、タクシー待たせてるんだ。早く行かないとっ」
「みっ──ッ!!」
俺の横を通りすぎた雅を慌てて振り返る。
その瞬間、入ってくる視覚の情報より早く、俺の頬に柔らかい感触が襲ってきた。雅がそこにキスを落としたのだと脳が一拍遅れて処理する。雅の顔が目の前にあり、彼女の匂いが鼻腔を刺激した。胸がトクンと波打ち、急激な息苦しさが襲ってくる。だがそれは決して悪いものではなく、むしろ──
この場での主導権は彼女が握っていた。
俺が勢いに任せて抱きしめようとした刹那、彼女の唇、そして体が離れる。
「つ、次の試合も勝ちなよ」
すぐに背を向けた雅はその言葉を残し、足早にマンションを出ていった。取り残された俺は、ゆっくり五分ぐらい硬直していた。
とまぁ、そんな記憶だ。
それから雅のことが頭から離れない。勝つどころか無様な敗北を喫し、合わせる顔がない。それ以前に、彼女は俺にキスを──夢だったのかとさえ思うほどにナチュラルなキスだった。そして、告げられた『私も好き』という言葉。
それって、つまりそういうことか……?
でも、話の流れとして野球のこと……?
いやでも、キスもしてきてるし……?
そんなことを悶々と考えていたら、いつの間にか試合が終わっていた。プロとしてあるまじき失態だった。
俺はそれから他のチームメイトにも心配されつつ、球場を後にして帰宅した。しかし、何をしてても雅の真剣な顔やキス顔、去っていく後ろ姿が脳裏に張り付いて剥がせない。
元々考えるのはあまり得意ではない俺は、思い切って雅に電話をかけてみることにした。何を話せばいいかわからない。こんなことは初めてだった。だが、このまま一人で考えていても埒が明かないと思った。
結局雅は電話には出なかった。その代わりに、就寝直前ひとつの意味深なメッセージが届く。
○八代雅
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俺の頭には無数のクエスチョンマークが飛び交い、その夜、俺は一睡も出来なかった。
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次の日。俺は恥も外聞もなくチームメイトや監督にこの謎の文字列について聞いて回った。しかし、誰も知らなかった。まさか他言語かと思い、三ヶ国語を話せるトレーナーのマイケルにも聞いてみたが、結果は同じだった。
何かの暗号ではないかということだが、俺にそんなもの解ける訳がない。いや、雅の作った暗号なら俺が解けてもおかしくはないのか?
だが、半日ぐらいそれだけを考えていたが、一向に答えが出ずに頭を抱えていた。そんなとき、一人の男からLINEが届いた。
○牧野和一
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┃祐也君喜んでたか? ┃
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俺はうっかりしていた。
むさ苦しいチームメイトたちなんかよりもよっぽど頼りになる友人が、雅の他に二人もいたことに気付く。
と同時に、俺は雅との出来事をぼかしつつこの謎の文字について聞いてみた。
○牧野和一
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┃やっとか。 ┃
┃これも祐也君のおかげなのか…… ┃
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┃PS.恋愛記号って調べてみ? ┃
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何がアイツのおかげなのかわからないが、言われた通り『恋愛記号』という言葉を調べてみた。なんでも、好きな人の名前を暗号化することがSNS等で流行っているらしい。
道理でオッサン連中が知らない訳だ。俺は早速変換サイトなるもので恐る恐る確認した。
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その瞬間、俺の中の何かに火がついた。
翌日。
日本のエースを相手に、芦原風李は3打数3安打2本塁打2打点を記録した。その圧倒的存在感を見せつけ、新聞の一面をデカデカと飾った。
『yakyuubaka』が良かったけど、aにあたる文字が使えなかったので渋々『fuuri』に。。。




