第32話 初デート
おはようございます。
久々の投稿ですm(*_ _)m
「ママ。おはよう」
「おはよう。今卵焼いてるからもう少し待ってね」
「うん」
リビングに入って朝の挨拶を交わしながら、食卓につく。
そして何気なくテレビを付けた。
今日の天気予報を、そこそこ美人なお姉さんが教えている。
それによると、昼間は晴れて暑いが、夕方から雨が降ってくるらしい。
『折り畳み傘があるといいですね』とにっこり笑っている。
「そういえば、色々発達してて驚いたけど、傘はあまり変わってないよな」
「……何か言った?」
「あっ、ううん、なにも。ところで、パパは?」
「あぁ。会社の野球クラブに行ったわよ」
「ふぅん」
野球といえば、泉はちゃんと親を説得できたんだろうか。
あの母親だからなぁ。望み薄か。
「はい。できたわよ」
「いただきます。……ことは?」
「さっき一回起きたんだけど、また寝ちゃったのよ。あとで食べさせるわ」
「まだ離乳食なの?」
「そうねぇ。来月あたりもう少し歯応えがあるようなものを出すつもりよ」
「そっか」
なんて会話しながら、食パンにかじりつく。
チーズが良い感じの伸び具合で大変よろしい。
「うまい」
「ふふ」
その後も、ふたりで向かい合って朝食を摂りながら、色々な話をした。
幼稚園で泉と大悟が野球チケットを取り合った話から最近雅があまり来ないなぁなんてどうでもいい話etc。
そしてなんとなく会話が途切れたので、今日の話をする。
「今日、大悟ん家で遊ぶ約束してるから、昼過ぎに出るね」
「あら。ことの面倒見ててほしかったのに」
「え?どっか行くの?」
「ただの買い物よ。デパートだから迷子になるといけないと思ったんだけど」
「モグモグ…ゴックン。何買うの?」
「服とか、調理器具とか、アクセサリーとか、眼鏡とか、食材とか………」
「え待って。そんなに?」
「そうよ。消耗品がいくつかダメになってねぇ。パパが帰ってきたら一緒に行こうと思って」
今日、件の拳銃の元を断ちにいく予定だったのだが……今度の休みでいっか。
俺は琴那とお出かけができることに思い至り、今日の予定を変更することにした。
「ママ。ボクも行くよ。もちろん、こともね」
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
ついこの間まで朱美が入院していたこともあって、家族四人でのお出掛けは久しぶりである。
琴那とデートを想像すると、知らぬ間に顔がにやけてしまう。
いかん、昔の友人知人に見られたら笑われてしまうっ。
俺は必死に顔を取り繕い、琴那を抱えて車に乗った。
だがその際に、にっこり微笑まれてしまうとつい破顔してしまい、さらに溺愛度が加速してしまう。
自宅から車で20分ぐらいの距離にある大きなデパートに到着した。
この辺りの交通の便は良い上に、日曜日とあってかなり混んでいる。
まぁ一応今世は都会っ子なのでそこまで気にはならないが、今琴那が乗るショッピングカートを蹴った奴には軽く呪いを掛けてやった。
今日だけトイレに駆け込みやすくなる恐ろしい呪いである。
ざまみろ。
「うぅ~」
俺が内心で黒い笑みを零していると、琴那の可愛いらしい声が俺の耳に飛び込んできた。
それに従い視線を落とすと、まるで太陽を目視するかのような眩しさがあり、直視し難い光景があった。
なんと無垢な笑顔か……。
「ど、どうしたんだ、ことー?」
何気なく琴那の頭を撫でようと手を伸ばすと、触れる前に袖を掴まれた。
このちっちゃい手からは想像もできないような力強さである。
「あっほっ(抱っこっ)」
「………いいぞー」
琴那の小さな両脇に手を差し入れ、自分の胸に持ってくる。
むぎゅううううぅぅ。
「ことは俺が一生守ってやるからな」
これ以上ない癒しに逆らえず、つい口をついて出ていた。
そして、そんな恥ずかしいセリフを後方で聞いている大人が二人。暖かい目をして優しく笑っている。
「ふふ。よろしくね、お兄ちゃん」
「ほんとに仲良しだなぁ」
俺が琴那と熱い抱擁を交わしていると、恭介がショッピングカートを持ち、「さぁ、買う物多いんだから行こう」と前を歩いていった。
俺は琴那を抱えたまま、様々なお店を回る。
洋服店では、主に俺と朱美の服を買い、キッチン用品店では、朱美があれやこれや籠に入れていき、あっという間に満杯になってしまう。
2つ目の籠の出番である。
「そんなに食器いるのか?」
「可愛いから」
「今度はコップか?」
「誰かさんが割ったからね」
「……すまん」
「それなんだ?」
「クッキーを型抜きするやつよ。色々種類があって可愛いのよね」
「へぇ。家にも何個かあったな」
朱美は楽しげに調理器具を物色していて、恭介はそれに付き合っている。
………つまんないな。
ふたりが買い物に熱中しているので、俺は店から出てきた。
胸元にある妹の顔を覗き込むと、大人しくしながらも周りをキョロキョロしている。
そして、一点で視線が固定した。
「ん?」
ピンク一色の派手なお店を凝視していた。
ランジェリーショップである。
「あそこは、ことにはまだ少し早いなぁ」
俺の呟きの意味を理解しているとは思えないが、そこからはすぐに興味を失ったようで俺の胸に顔を埋めた。
「んー?眠いのか?」
琴那を軽く揺らしながら適当に歩いていると、『迷子センター』と書かれた看板がぶら下がっている受付のような場所に来てしまった。
どうやら琴那の寝顔に夢中で、いつのまにか結構な距離を歩いていたらしい。
戻るかと思いその場でUターンしようとした刹那、たまたま奥から出てきたカジュアルスタイルのお姉さんに見つかった。
小さく「あら」と呟いて近寄ってくる。
間違いなく迷子だと思われている。
まぁ、適当に歩いてきたからフロアマップを見ないとさっきの場所に戻れないし、親の居場所が不明という点では迷子なのかもしれないが。
「ボク、お父さんかお母さんは近くにいる?」
「子供扱いしないでよ。もう五歳なんだから」
とか言ってみる。
子供扱いも何も完璧子供だが、なぜかこう言うガキが結構いるのだ。
大人なんて面倒で、子供の方がよっぽど気楽だと思うのだが、そういうことではないのだろう。
「あら。ごめんなさい。じゃあ、お名前聞いてもいいかしら?」
クスクス笑いながら、俺の名前を聞いてくる。
「自分の名前を名乗ってから聞くのが筋じゃないの?」
うん。こんなこと言う五歳児はいないと思う。
事実、お姉さんは驚いている。
初めての経験なのかもしれない。
「えっと。お姉さんは足立真琴っていうの。君のお名前を聞いてもいいかな?」
「僕は白井祐也。と、ここで眠ってる天使は妹の琴那だよ。なんか名前似てるね」
「(天使?)そうね。ことって字が入ってるね」
「うん。お姉さんきっと良い事があるね。ことと似てる名前なんだから。…じゃあ、僕いくね」
俺は片手を琴那から離して手を振ると、来た道を戻る。
だが、俺の通り道にお姉さんが割り込んできた。
「ちょっとっ。お話はまだ終わってないわよ」
「僕は特にないけど」
「………お父さんとお母さん。近くにいるの?困ってない?」
やたらしつこく心配してくるお姉さん。
気持ちはわかるのだが、正直うざい。
あまり戻るのが遅いと、朱美に怒られるし。
「困ってないよ。あっ、今困ってるかな」
「ほんとっ!?」
「うん。道を塞いでるお姉さんがいるから、お父さんたちのとこに戻れない」
「…………」
ススッと道を譲ってくれたお姉さんに「ありがとう」と言って歩いていく。
「気をつけてねー。何か困ったことがあったらまたここに来るのよー」
後ろをチラッと伺うと、ずっと手を振ってくれているお姉さんがいた。
その後も琴那とささやかなデートを楽しみ、何気なくメガネショップに入ったところで恭介と朱美に見つかった。
特に怒られることもなく、そのままメガネショップで朱美に似合う緑色の眼鏡を見繕い、それを購入した。
かなり知的な印象の出る、中々のセレクトだった。
次にキッズショップに到着すると、計ったようなタイミングで琴那が目を覚まし、可愛い洋服やおもちゃを購入した。
琴那がキラキラした目で見本として置かれているおもちゃを弄っていた。
きゃっきゃと笑っている姿が、頗る可愛ええ。
楽しそうにはしゃいでいる琴那を見ながら思った。
この天使の笑顔は、俺が一生守ると。
……は?将来騎士が現れるかもしれないって?
HAHAHA。俺より弱い奴のYOMEにはやらん。




