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第20話 拠点製作

ちょっと前に日間1位を頂きました。

ありがとうございます。

 

 お婆ちゃんや大伯父さんたちと談笑しながら、昼食をとった。

 俺の成長記録として写真は送っていたみたいだが、実際に会うのはこれが初めてである。

 その為、皆から結構可愛がられた。


 そして、なぜか大伯父さんの膝の上で食べることになり、それでも特に気にせずに、俺は黙々とそうめんを食べていた。

 きゅうりとナスの味噌汁に浸けて食べるのは初めてで、かなり美味しかった。

 これはおすすめだな。



 昼食を食べ終えて少し駄弁った後、マザコ……恭介に連れられて小さな部屋に入った。

 そこでは、全て本棚が壁を塞ぎ、ぎっしりと漫画が綺麗に整列されていた。

 ざっと見ても千冊以上はあるかもしれない。


「どうだ?ここが、パパ自慢の漫画部屋だ」

「すごいねー。早速読んでもいいの?」

「おう、いいぞ。ただし、ちゃんと元の場所にしっかり戻すことが条件だ」

「わかった」

「よし。じゃあ、パパのおすすめを──」


 そこで、恭介のスマホが着信を告げた。


 間の悪いタイミングだとか愚痴を溢しつつ、画面を見た恭介の表情が一瞬で引き締まったものとなる。

 そして、俺を一瞥して「仕事の電話だ。好きに見てていいぞ」と言ってから、すぐに部屋を出ていった。


 ああいうのを見ると、普段とのギャップが大きくて見直した感じになる。

 一度、仕事中の恭介を見てみたいもんだ。


 そんなことを思いながら、目に入った漫画を手に取る。

 好きに見ていいと言うなら、そうさせてもらおう。

 俺は〈速読+++〉スキルをenable(有効)にして、ひたすら読書に耽った。

 一巻につき、平均一分もかからずに読み進めていく。


 それでも、恭介が夕飯の準備が出来そうだという報告にくるまでに、全てを読み終えるには足りなかった。


「祐也、面白かったのあるか?ていうか、ちゃんと読めたか?」

「うん、大丈夫だよ。全部面白くて、パパと趣味が合うのかもね」

「そうかッ。やっぱりパパの子だな」


 そんなことを話ながら、漫画部屋を出た。



 そしてこれは言うまでもないことだが、3歳児が平仮名も漢字も読めるのは普通におかしいのである。

 恭介や朱美が、祐也を特別視している証拠だった。

 その認識は、二人目の()()()子供が産まれることによって、さらに顕著になるのであった。





 ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~



 畳の大部屋へと至る襖を開けると、パンツ一丁で歩き回っている男の姿が目に飛び込んできた。


「……………」


 暫しフリーズする。

 しかし、後ろから恭介に話しかけられハッとして我に帰る。


 その声が聞こえたのだろう。

 パンツ一丁の男は、こっちに気付くと満面の笑みを浮かべて近寄ってくる。


 還暦を迎えたかどうかという年齢だろうが、178cmの恭介よりも背が高く、なんと言っても筋肉が凄い。

 昔は、ボディービルダーでもやっていそうだと思った。


「ボクがゆうちゃんかぁ。とても恭介の子供とは思えんなぁ」


 頬を緩ませながら俺の目の前にしゃがみこみ、優しげな手つきで撫でてくるパンツ一丁のマッチョ。

 なんとなく想像は付いているが、念のため恭介に聞いてみる。


「パパ。この人、だれ?」

「……祐也のお爺ちゃんだ。帰って30分ぐらいはいつもこの格好なんだよ。祐也は絶対に真似しちゃダメだぞ?」


 するかーーーー!!

 俺は自宅であっても絶対に服は着る派だ。

 中年親父じゃあるまいし。


「お爺ちゃん。祐也だよ」

「お~よしよしっ。ほれっ」


 お爺ちゃんに抱っこされそうになり、慌てて回避する。

 すると、目に見えて落ち込み始めたので、服を着てもらってから自分の体を委ねた。


「ほんとごめんよぉ。婆ちゃんが遠出するの難しくてなぁ。全然そっちへは行けんで」

「ううん。全然平気だよ。また遊びにくるからっ」

「ゆうちゃんはええ子だなぁ」


 初孫にデレデレの様子のお爺ちゃんに、周りの人たちも少し呆れぎみだ。

 普段はこんな感じではないのかもしれない。


「ねぇねぇ。お爺ちゃん」

「んぅぅー?なーにかなぁ?」

「今日どこ行ってたの?」

「山へ柴刈りに行っとったなぁ」


 ………ガチだったらしい。



 その後も、皆と夕飯を食べてワイワイしながら、夜は更けていった。






 ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~



 翌日──。

 俺は朝食を摂ってから、こっそりと家を抜け出した。

 一応、『散歩に行ってくるから気にしないで』と書いたメモを残してきたが、帰ったら絶対怒られる。

 かと言って、その旨を伝えれば誰かが付いてくるだろうから、メモを残してくるしかなかったのだ。



 民家が並ぶエリアを抜けて、人が疎らな商店街も脇目も振らずに通りすぎてから、木が鬱蒼と茂る森林に入っていく。

 周りに人っ子一人いないのを確認してから、自分の体に冷気を纏わりつかせ、スキルを併用して地を駆ける。


 氷属性の中位魔法、アイスウェアー。

 冷気の衣を被るような感覚で、暑い場所でも快適に過ごすことができる。


 消費魔力が多ければ多い程、纏う温度も下がり、大量に魔力を注ぎ込めば、マグマの中でさえ水中のように泳ぐことが可能になる。

 ただ、魔法を維持するのにも魔力を使うので、膨大な魔力量が必要となってくる。

 今の俺では、マグマの中はさすがに魔力がゼロになりかねないが、日本の夏に対応するぐらいなら何の問題もない。


「アークス」での幼少期よりは断然魔力があるので、魔力増加の訓練はかなり良好といえる。

 俺はひとまず前世を越えることを目標にして、これからも魔法の訓練を続ける。




「ここまで来れば大丈夫か。さて、とりあえずは……」


 森の中をかなり深くまで進んできたところで、立ち止まる。

 そして、無詠唱で魔法を発動する。


 魔法名は、ウィンドスライサー。

 直径1m程の円状の風刃が、俺の掌の上数cmのところで、“キイィィィィン“という高音を響かせながら高速回転している。

 これは、風属性の上位魔法に相当し、ウィンドカッターとは比較にならない切断力を持つ。


 充分に魔力を注ぎ終わり、さらに回転速度が増したのを確認した俺は、野球のサイドスローのようなモーションで魔法を投げ放つ。


 俺を中心にして螺旋状に空を舞い、周りに乱立している木や植物をバッサバッサ切断していく。

 どんどん円状に空地が出来上がっていくが、次々に邪魔な木が倒れてくるので、都度都度“亜空間収納“に仕舞っていく。



 やがて、半径30mぐらいの開けた空間が出来上がった。

 俺は真ん中付近まで移動して360度見渡し、満足げに頷いた。


「うん、スッキリしたな。ここを、今後の魔法訓練の拠点としよう」


 そう呟いた俺は、その場で“亜空間収納“に仕舞っていた大木を幾つか取り出して一ヶ所に置き、地面に手をついて大量の魔力をその魔法に注ぎ込む。



「アース・クリエーション」


 俺の呟きを合図に、地面が一気に数m以上隆起し、置いておいた幾つかの大木を飲み込みつつ、頭でイメージしたものへと形成されていく。


 やがて、即席にしては立派過ぎる木製の小屋が出来上がった。

 ガラスに使われている材料は、全て土に混ざっている石や砂の中にあるため、この魔法で窓ガラスも一緒に作り上げているのだ。

 もはや、小屋というよりは小さな一軒家である。


 さすがは──火、水、風、土の四大属性を丸ごと融合したカルテットの超位魔法だ。

 立派な拠点が出来たのはいいが、もう魔力が底をつくほどである。

 よって、魔法の訓練は後日することにした。



「あとは、結界を張ったり、感知センサーを付与したりだな」


 俺はひとり呟きながら、小屋の中や外でスキルを使用してどんどん魔改造していった。




 ──この地に、ひっそりと日本最高の拠点(要塞)が出来上がりつつあった──






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