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第15話 お手軽爆弾処理

 

「羽賀ッ!さっさと吐けぇ!どこに隠しやがった!」


 若い刑事が羽賀の胸ぐらを掴み、前後に激しく揺さぶる。

 かなり切羽詰まっているために、事情聴取がかなり荒っぽくなってきていた。


「フフフ。だから、私を解放すれば教えてあげると言っているだろう」


 それでも、羽賀はニヤニヤ笑いながら目の前の刑事を挑発する。

 胸ぐらを掴んでいる若い刑事が激昂し、右拳を振りかぶって殴ろうとする。


「てめぇっ!」



 だが、たった今ドアから入ってきた人物のよく通る声が、その刑事の暴力を中止させた。


「よせ!」

「…………須崎さん」

「そいつ相手にカッとなっても無意味だ。少し頭を冷やしてこい」

「……わかりました」


 若い刑事は、掴んでいた羽賀の胸ぐらを力任せに突き放すと、取調室を出ていった。

 須崎は軽くため息をついて椅子に座ると、羽賀に視線で座れと訴える。


 かなり冷静で鋭い眼光を羽賀に向けている。

 先程までの彼とはえらい違いだった。


 羽賀はそう感じて訝しみながらも、とりあえず向かいの椅子に腰を下ろした。



「お前を解放することはない。たとえ、警察の動きを察知して捕まる直前に仕掛けた爆弾が爆発したとしても、お前は死ぬまでムショ暮らしだ」


 羽賀の眉が一瞬ぴくつく。

 これまでは無かった羽賀の反応を見て、亜垣の情報の正確性を再確認した。


「フフフ。警察は無能だからな。爆弾は諦めたか」

「誰が諦めたと言った。既に捜査員を"レインボーモール"へ向かわせた。正午までには見つかるさ」

「──ッ」


 須崎はそのまま数秒程羽賀を凝視していたが、やがておもむろに立ち上がり、記録を取っていた所轄の刑事に「後は任せる」と言った後、素早く取調室を出た。



「さすがに完全なるボロは出さなかったが、サインはあった。嘘を吐くときというか、都合が悪いときでしたけど」


 亜垣から言われていたことを思い出し、苦笑いを溢しながらも急いで捜査本部の扉を開けた。








 ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~



「みんなー!怪人が現れたよー!どうしよう!」

「どうすればいいかな?」

「そうだっ!ヒーローに助けを求めよう!」

「みんなー!準備はいいー?」

「せっーのっ、「「「ヒーロー助けてぇーー!」」」」



 子供達に人気のヒーローショーにやって来た俺。

 もちろんイベントを楽しむためではない。

 周波探知の反応では、この先にある倉庫を差していたのだ。


「こんなところで爆発したら、被害がえらいことになるな。割りと離れてたのに危機感知が反応したってことは、結構ヤバいやつか?」


 俺は人混み(大半が親子)を掻き分け、決して子供ではあり得ない素早い身のこなしで倉庫に侵入する。

 そして、あまり埃の被っていない置かれたばかりのような箱を開けた。


 その中に入っていたのは、30cm四方程のコードが無数に付いているTHE爆弾だった。

 その中央には、時間を表示させているディスプレイが貼り付いている。


「おぉ、リアル爆弾だ。これは、あと25分で爆発するってことか?」


 時間の表示は25分を切ったところだった。

 逆算して、俺が危機感知したのは30分前ってことになる。

 随分余裕を持って教えてくれたわけだ。


「よし!爆弾の解体をしよう!………これ、赤と青以外は全部切ればいいのか?」


 映画やドラマの影響で、『最後は2択』というのが爆弾だと考えていたが、実際はそんなに単純ではなかった。

 なので、爆弾の解体は早々に諦めることに。


「なんでこれ、赤も青もいっぱいあるんだよ!"2択にドキドキ"がやりたかったのに!」


 爆弾に向かって子供のように文句を言いながら、「やーめたっ」というような声が聞こえそうな感じで地面に腰を下ろした。



 どうしようかと思いながら、爆弾の時間が進んでいくのをじーと見ていた時、外から人が近付く気配を感じて、耳を澄ました。


「クソッ、もう30分もないのかッ」

「おい!愚痴ってる暇があったら、足を動かせ!俺はこっちの倉庫を捜索する」

「は、はいっ!自分は向こうを見てきます!」


 人がくる。

 今邪魔されるのは困るな。


 俺は素早く振り返り、右手を倉庫の入口へ向けスキルを発動した。


疎遠領域(リーブフィールド)


 そして、爆弾を抱えて奥に隠れる。



 大道具に隠れて様子を伺っていると、扉を開けて入ってくるひとりの男がいた。


 スーツを着ている強そうな男だった。

 俺は直感で刑事だと覚った。

 さっき聞こえた会話からも、恐らくこの爆弾を探しているんだろうと思う。

 だからといって素直に渡す程、俺は善人ではない。

 これはもう俺のオモチャなのだ。


 その男はその場から一歩も中に入ろうとはせず、鋭い目つきで倉庫内を見渡して軽く舌打ちを溢すと出ていった。


 "疎遠領域"は、一定空間内に人や動物などを寄せ付けない効果のあるスキルだ。

 無意識にそこから先に入るのを拒み、自分は入ったと錯覚する。

 ゆえに、今の刑事はろくに探していないにも関わらず、外から見ただけで捜索したと思い込んだ(、、、、、)のだ。

 ある意味で、精神にすら作用する使い勝手の良いスキルである。

 俺はこんな様々なスキルを時と場合で上手く使い分け、いくつもの修羅場を潜り抜けてきたのだ。



 刑事が遠ざかっていったのを確認して、爆弾に視線を移すと、残り時間は15分を切っていた。

 俺はさらにそこからボーとしながら、時が経つのを待っていた。


 そしてついに、残り時間が5分になったところで、俺は呟いた。


亜空間収納(ディメンションストレージ)


 刹那、俺の横の空間に穴が開く。


 術者が生成した別空間にモノを収納しておけるファンタジーではお馴染みの超便利スキルである。

 ただ、このように空間に歪みを作り亜空間と繋げればいけない為、向こうの世界とは違い人前ではできないのが難点だ。


 俺は爆弾を抱えると、その空間の穴に放り投げた。

 すぐに穴が閉じる。


 この亜空間内は、時間も温度も自由自在だ。

 時を止めて、爆弾を収納したのである。

 もちろん時を動かして、空間内で爆発させることも可能だが、いつか使い道があるのではないかと思い、残しておくことにしたのだ。


「さて、これで一件落着か。お腹も空いたし戻るか」


 独り言を呟きつつ倉庫を出たところで、アナウンスが聞こえてきた。


『迷子のお知らせです。お母さんが探しております。3歳の『ちょっといいかしら。なによ、私が言った方が早いわよ。……祐也、ママたちはこれから2階のキッチン用品のお店に行くわ。そこに来てね。はい、ありがとう』………えー、申し訳ありませんでした──ピンポンパンポン♪』


 お母さん………恥ずいわ!

 どこの世界に迷子アナウンスを待ち合わせの連絡に使う親がいるんだよ。


 朱美の珍行動に辟易しながら、文句を言ってやろうとキッチン用品店に向かった。





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