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第1話 出戻り

なんとなくストーリーが降って湧いたので、他作品連載中ですが、書いてみることにしました。

不定期になりますが、よろしくお願い致します!

 

 俺の名は、リアン・デライシャス。

 この世界「アークス」で生きる勇者だ。

 なんやかんやあって様々な魔法やスキルを取得し、気付いたら人類最強の地位を獲得していた。


 毎日毎日ウザかった挑戦者も今ではほとんど来ない。

 女にもかなりモテてきたが、これ!という子には出会えなかった。

 ラノベのように都合良くはいかないらしい。

 だが俺はまだ26歳。これからと思っていた。

 今日までは……。



 俺は今、()()()()最大の危機に瀕している。

 至るところから出血し、魔力も底をつきてボロボロになった俺の前には、10体近くいる邪神。


 邪神とは、悪の道に進み神界から堕ちてきた神をいう。

 神とは存在そのものが災害だ。

 堕ちて力が弱まっているとはいえ、人間にどうこうできる存在ではない。

 だが勇者ならば、太刀打ちできる力を持っている。

 タイマンだったらな………。



 俺は既に約半数8体の邪神を屠っていた。

 我ながら最強だと思わなくもないが、いかんせん数が多すぎる。

 本来、邪神がこんなに沸いてくるのがおかしい。

 神界で何かあったのかもしれないが、そこはどうでもいい。

 問題は、これがムリゲーだということだ。


 正直逃げ出したいところだが、生憎魔力が空っぽで移動手段がなく、邪神軍団に囲まれている。

 その目に宿るのは敵意と憎悪であり、どう見ても逃がしてくれる雰囲気ではない。


 俺は覚悟を決めて、邪神共に立ち向かっていった。











 ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~



「おぎゃ~おぎゃ~おぎゃ~」


「はい。男の子ですよ。よく頑張りましたね」

「ありがとうございます」


 目を覚ました俺の視界に入ってきたのは、ピンク色のナース服を着ている女性だった。


 ん?俺はこの人に抱えられているのか?

 なんか似たようなことが前にもあったような気がするが……。


 俺はベッドに横になっている女性の隣に寝かせられた。


「ふふ。かわいい。よろしくね、祐也(ゆうや)


 その言葉(日本語)を聞いて、俺の頭は一気に覚醒した。

 ま、まさか、日本に戻ってきた!?




 俺は、元々日本で生まれ育った。

 だが高校生の時に、事故で死んでしまったのだ。

 運良く、『アークス』の世界に転生し勇者となったが──。


 結局あの後、邪神を2体倒したところで力尽きてしまった。

「神様、2回の人生をありがとう」とか祈って死んでいったんだが、またこの世界に戻ってくるとは思わなかったな。

 因みに一応言っておくと、俺が言った神様とは、あの邪神共を産み出した()()()()神のことではなく、俺が心の中で信じている()()()()()神様のことである。


 それにしても、再び転生するとは──自分で言うのもなんだが、波乱万丈すぎじゃね?






 その後数日間、母──朱美(あけみ)とベッドの上で過ごした。

 なんか表現がいやらしい気がするが、俺は今赤ちゃんなのであしからず。


 母の名前を知ったのは、毎日見舞いにくる父──恭介(きょうすけ)が呼んでいたからだ。

 父の名前もその逆で知った。

 名字はどうやら白井(しらい)というらしく、ナースや医師が呼んでいた。

 俺は今回の生では、白井祐也(しらいゆうや)というらしい。


 朱美は綺麗な黒髪を肩の位置で切り揃えている大和撫子のような美人さんだ。

 対して恭介は、こちらも黒髪だが少し茶色が混じっていて青年って感じだな。

 恭介は元ヤンキーとみた。




「おぎゃ~おぎゃ~」


 退院の日、俺はまた泣いている。

 心は冷静で成熟しているのに、体は動かしづらいし泣き声も止められない。

 赤ちゃんの生理現象みたいなものだと既に諦めている。


「祐也はよく泣くな」

「ええ、ほんとね。元気な子に育ちそうね。あ、ちょっとお医者さんに挨拶してくるから祐也抱いててくれる?」

「わかった!」


 朱美の腕の中から恭介の腕の中へと移った俺は、早速スキルを使ってみた。

 こっちの世界で使えるか一応実験だ。

 もし使えなかったとしても、また命を貰っているだけでありがたいので然程気にしないとは思うが、はたして。



 サーチエンジン。


【お久しぶりです。マスター。何を検索されますか?】


 おぉ、でた。やっぱりスキルは使えるのか。

 向こうの世界では、魂にスキルが付随するって聞いていたから半信半疑だったが、こいつは便利だ。

 日本でこんなスキルあったら、人生約束されてるようなもんだろ?


【どうでしょうか。約束されている人生などありません】


 うわお。反応しちゃった。オフ!スキルオフだ!


【では、また何かありましたらお呼びください】


 ふぅ。

 今のは大抵何でも教えてくれる超便利スキルだ。

 機械的な女性の声なので、寂しいときの話し相手にもなる。

 前の世界でもなんだかんだ1番使ったスキルかもな。


 俺はその後も恭介にバレないようなスキルをいくつか試してみた。

 特に使えなくなっているようなものは無くて一安心。

 魔法も使えるかどうか試してみたいが、これはバレない魔法が思い付かないので今は却下だ。



「ほんと可愛いなぁ。おぉ、ぷにぷにだ。これは……癖になるな」


 左腕ですっぽり俺の身体を収めながら、右手で頬を触ってくる恭介。

 なんだか、むず痒く感じる。

 前世でも、産まれてすぐに意識があったはずだが、どうやっていたかあまり思い出せない。

 何もせずに、ただ笑ったり泣いたりしていただけのような気がするが、記憶が曖昧になっている。


「う~、ぅぅぅ~、うっ(赤ちゃんって、退屈なんだなっ)」

「おおぉ。今、パパ遊ぼって言ったのか?賢いなぁ」

「ううぅ、うう(なんでだよ)」

「そうかそうか。よしよし」


 まったく会話が成り立っていない。


 ……ふふ、良いことを思い付いた。


『パパ。遊ぼっ』

「───っ!?」


 念話で話しかけてみた。

 恭介は、目を丸くして俺のことを凝視していたが、やがて悪戯とでも思ったのか周りをキョロキョロと見出した。

 しかし、これは腹話術の類いではない。

 恭介の脳内に直接話しかけているのだ。


『どうかしたの?パパ』

「なっ!?ま、まさか……祐也、なのか?」

『…………』


 俺は眠くて瞬きをした。

 それを、同意のウインクか何かと捉えたのだろう。


「祐也ッ!お前、話せるのか!?」

「俺がお前のパパだぞっ」

「ママ、もうすぐ来るからなぁ~」

「祐也が大きくなったら、キャッチボールしような」


 興奮した様子で色々話しかけてくる。


 失敗したかもしれん。

 煩くなってしまった……。



「なに興奮してるのよ?」


 医者との話しが終わったようで、朱美が戻ってきた。

 その言葉には、多分に呆れが含まれている。


「朱美ッ。祐也が話しかけてきたんだっ。パパって」

「………そう。よかったわね」

「おう。祐也は天才かもしれん」

「そうね。さぁ、帰るわよ」


 恭介。朱美は全く信じていないと思うぞ。

 それどころか、良いようにあしらわれている。


 まぁ、恭介が幸せそうだからいっか。






 新しい家族。久々の日本。そして、新しい体。

 ありがたいことに、俺の第3の人生が幕を開けた。




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