死と僕と。
どうも。はじめまして。
真夏日と申します。
こちら、初投稿になります。
マイペースな更新になるかと思いますが、
よろしければお付き合い下さい。
『死』ーーーーーーー
この言葉が意味することは、宗教、哲学、あるいは法律などによって様々な定義づけがなされている。
そしてほとんどの『死』に共通して言えることは、死は1つの区切り、終わりを意味している、ということである。
生命に死が訪れると例外なくその生命は終わる。逆に言えば、生命が誕生しなければ死は訪れない。生と死は対義の関係ではなく、生があるから死が訪れる、つまるところの因果の関係ではないだろうか。
『死』の反対は生ではなく、死の否定、『死なないこと』あるいは『死ねないこと』なのかもしれない。
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2月に入ったばかりのある夜。1人の青年が独り暮らしをしている8階建てマンションの屋上全体を囲っている金網を越えて、下にるあるアスファルトで塗装された道路を見つめていた。
時間は午前4時にさしかかろうとしている。
彼はまさに今、若くにして自らその命を絶とうとしていた。
2月の冷たい風を感じてか、恐怖を感じてか、青年の手足は小刻みに震え、渇ききった口の中で歯と歯が何度もぶつかりガタガタと音を立てる。―――
かれこれ4時間以上、青年は数歩足を出せば、即座に落命するであろう位置に突っ立っていた。
決意を固めたはずなのにいざ、この場に立つと足が棒になったかのようにただ震えるだけで、前には出なかった。
青年は目線を少しあげ、からからの喉にゴクリと口にたまった唾を通す。息を小さく吐き膝に手をついた。
結局何に対してもこんな中途半端なことしかできないんだ。僕は。彼は心の中で今まで何度もつぶやいた台詞に辟易する。
しかし、再度目線を落としアスファルトを見つめるとそこには自分のことを気にかけてくれて、心配してくれて、応援してくれている人たちの顔が、うつしだされていた。
それを見るとその人たちに会わせる面目がない自分自身にあらためて心の底から嫌気がさした。
青年は膝から手を外し前屈みのまま、小さく一歩歩いた。
そして次の一歩を宙に向かい踏み出そうとするが、すぐにその
踏み出した足が引っ込もうとした。ーーーーー
その時だった。
後ろから不意に突き落とすかのような力が加わった。ーーーー
ー―ー青年は ぅうわぁぁ!?!? っと情けない声を上げ、恐怖と疲労で固まってしまっている足では踏ん張りもきかず、態勢を崩し体を半回転させるかたちでアスファルトへと落下する。ーーーーー
半回転したことにより空を見上げた状態で落ちていく彼が見たものは星1つない真っ黒の空に佇む白い月と、その月の光に薄く照らされている屋上から自分を見下ろす人影だった。
思わぬ形で目的を果たした青年であったが、落ちる瞬間、彼が
心に抱いたのは、死を直感し背筋からゾッと広がる恐怖と、
この場所にきてしまった強い後悔であった。ーーーーー
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『死』とは終わりである。
しかし、この青年の『死』が、彼の新たな物語の
『始まり』になるということは、今の彼には
知るよしもなかった。
読んでいただきありがとうございます。