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引きこもり少女に幸あれ  作者: motto
違う自分と引きこもり
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5.家族会議

「それでは第1回家族会議を開催します。議長父さん、司会俺、書記母さん、議員ユキでよろしく」

「わかった」

「ええ」

「はーい」


 あれから家族との仲もずいぶん解消されてきて、とあることを兄に相談した結果、本日、食卓を囲んで夕食後の家族会議が開かれることになった。


「それじゃ、議題提出、ユキ議員どうぞ」


「えっと、私、今の自分を取り巻いている事がいろいろあって難しいことは少し理解しました。でも・・・・・みんなにも迷惑かけてしまうかもしれないけど、社会に復帰したいんです。一人で考えてもわからないから一緒に考えてくれるとうれしいです」



「それじゃ、俺から、何らかの形で復学をするのはどうだろう?」


 兄が挙手して発言する。


「そうだな、夜間学校もあるがユキの事を考えるとしばらくは通信制でやるのはどうだ?資料もあるぞ」


 父がその案にのって付け加える。どうやら以前から調べてくれていたようだ。


「うん、やってみる。やっぱ小学生くらいからやらなきゃだめなのかな?」

「一応、確認はするが、そうなると思う」


 学校自体は以前の私が行っているので、教育面では苦手教科はあるくらいで高校入学レベルまではなんとか大丈夫なんだが、ここでの私はまともに教育受ける前に引きこもったからしょうがないか。


「わたしとしては、教育面もあるけど、健康面での心配があるわ。社会に出ていく為にも体力をつけることとは必要と思うわ」

「そうだよね・・・体力かぁ」


 家事や部屋の探索、イラスト作成にしてもあまり疲れは感じないが、長期にわたる引きこもり生活ではかなり筋肉の廃用が進んでいるのが自分でも心配ではある。


「なにか持久力のつきそうな健康器具でも買うのはどうだ?」

「うーん、それもいいけどまずは基本的な筋トレとかストレッチのがいいんじゃないか」

「そうね、とりあえずはダイエットも兼ねて時間決めてみんなでやるのはどう?この頃、お父さんのお腹が気にるし」

「・・・わかった」

「そうする」

 

 母の意見に父と私は頷いた。


「あとは世間の目だな・・・」

「うん、やっぱりなにかあると思う?」


 父の言葉に、不安になる。


「もう十年は昔の事だが、未解決事件で謎だらけだからな。おもしろがってTVやネットなんかじゃ時々特集してるし、まだ警察に捜査本部もある。騒がれかたは当時に比べれば落ち着いて生活できてはいるけど、お前が外に出て話題になれば『あの事件の女の子』って思い出すやつがいるさ、近所なら特にな」

「そうだよね・・・こんな髪だし目立つよね」

「ユキちゃんが目立つのは、妖精さんみたいに可愛いからよ」


 兄の表情から、当時の苦難が読み取れて軽く落ち込む私を慰めてか母がすかさずよくわからないフォローを入れて、兄を軽く睨んだ。


「あ~カワイイ・カワイイ・・・・身内びいき無しでそうだろと思います。」


 母に言わされている感があるが兄もそう言った。


「話をもどすが、隣り近所の事は、あの時にあることないこと言われて正直関係性は良くない。最終手段でここを売って引っ越しをするのもいいだろうとは思う」

「お、いいね!じゃあ都内にしようぜ!」

「最終手段だ!いざという時の手段として挙げたまでだ」


 父からの意見に兄の能天気な答えを言って窘められる。まぁ、せっかく買った一戸建てをそうそう手放せないよね。わたしもなんだかんだで、この町にも愛着あるし。


「専門家の力を頼るのが良いと思うんだが、どうだろう母さん?」

「・・・そうね、実はあの事件でお世話になった病院で担当してくれた先生に、今でも色々とユキに関して相談させてもらっているのよ。主治医の久保埜先生ってユキは憶えているかしら?」

「・・・ううん、全然」

「何回かは会っているのだけどね・・・このところのユキの回復具合を知って、訪問でカウンセリングを受けてみたらどうかって勧められていたのよ」

「そうなんだ・・・・・・・・・・わかった、受けてみる」


 どうやら、事件後の私を見てくれていたお医者さんのようだけど、当たり前だが記憶に残ってない。だけど、もしかしたらあのトラウマを軽減できるかも相談できるなら、いいのかもしれない。


「あとは、いつでも家族に連絡を取れるように携帯を持たせましょう」

「おおっ、ナイスアイディアだよ母さん。少しは社会交流の練習になるんじゃね」

「ユキは携帯持ちたいのか?」

「・・・・・・・外に出れるようになってからでいいけど、持っておきたいかも、色々楽しそうだし」

「わかった」


 母のアイディアが父に採決されて、どうやら私の携帯所持は許可されそうだ。


「とりあえず、できる事からやっていこう。」


 そう父が締めて、みんなが頷く。


「ありがとう、お父さん、お母さん、孝太兄さん」


 私は心から感謝を述べた。


「それと、俺からも、一つ議題いいか」

「?」

「明日の朝、俺の彼女がくるから!」

「「ブフッ!!!!」」


 兄の発言に父と母がリアルに茶を吹いた。

 そんな相手がいるとは家族全員初耳です。


「ごほっ!?・・ってお前お付き合いしている娘がいたのか!!まさか男とかじゃないよな?」

「・・・・・・・それって現実の子なの?」


 わが兄ながら、ひどい言われようだ。

 

「ひどいな、れっきとした女性だよ」

「「本当にっ!!」」


 いまだかつてなく、両親が嬉しそうだ。前も含めて、女のおの字も見られなかったもんね。

及ばずながら私も応援しよう。


「本当だよ!来年には結婚するつもりだ」

「「「は?」」」

「ついでに明日、6時には家に来るんで朝飯一緒によろしく」

「「「・・・・」」」


 もとい、何言ってるのこの兄は・・・


「・・・・・おどろきました」

「言ってなかったからな・・・お前の事も彼女に少し相談したりした。わるかったか?」

「ううん別に気にしてないよ・・・でもお父さんとお母さんにも、もう一度謝っておいたほうがよいと思う」

「だよな、そうする」

「・・・いい人なの彼女さん?」

「ああ、俺と一緒になれるのはあいつしかいない」

「そう、なら私も協力するよ」

「おお、ありがとうなユキ!きっとあいつもお前も気が合うさ」

「そうなれたらいいね」


 兄の爆弾発言から、急遽明日の朝の用意をすることになった母は、朝の下ごしらえにかかり、私たちは各自で父は玄関・私は居間・兄はトイレ等の掃除を言いつけられる。

 

「どんなひとだろ・・・・」

この兄の彼女がどんな人なのか私は興味をそそられた。



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