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引きこもり少女に幸あれ  作者: motto
違う自分と引きこもり
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プロローグ

初めての投稿なので、なにかあればコメント等を頂ければありがたいです。

プロローグ


 誰にでもあるだろう。

 アイドルに憧れ、ヒーローに胸弾む事が、

 自らを卑下し、他者を妬むことが、

 不可能とも思える自らの可能性を考え、夢をみることがある。



 だが、夢は打ち消されていくものだ・・・



 元木 ユキは今の生活を納得して過ごしていた。

 小さな問題はあるがおおむね安定した家庭。

 仕事熱心で厳しい父がいて、子煩悩で明るい母がいて、少し頼りないが優しい兄がいて、自分がいる。

 健康な身体で、容姿は今一つでも顔はメガネを取れば10人並みにギリギリ入ると自己評価している。

 身長は150cmを少し超えた位で中肉中背な健康体、胸や尻や腰はでかくもなければしまってもいない、ある意味均等な肢体。

 無理なく入った公立高校も無遅刻無欠席とはいかないけどそれに準じた出席率で通っている。

 スポーツも勉強も一長一短。

 持久走が嫌いで球技が好きだが特技というほどでもなく、国語と歴史と理科が好きで数学と英語は苦手だけど足して割れば丁度平均的な成績だ。

 社会生活に問題ないだけの社交性はある。

 親友といえる存在は2人だけだが、それ以外の人ともそれなりに仲良くやれている。

 恋人はいらないと強がってみる。

 問題行動ととらえられる事は若気の至りで一度家出したくらいで、だれにでもオープンにできることの方が多い。

 趣味はネットサーフィンと言えばかっこいいかもだが、何を見ているかは想像に任せる。あとは比較的関係の良好な兄の影響で昔から絵を描くことが好きで、美術部に所属している。ネットでもアニメイラストを描いてそこそこの評価をえられていたし、美術部で出展した作品は、賞は取れなかったものの有名な画家先生からはお褒めの言葉をいただくなどほどほどの画力はあった。


 悩んでいることは進路の事・・・。

 絵の道で食べていくには地力や才能が足りないことは理解できているが、しかしなんとか好きな事を活かせる職の道はないものかと悩み中であった。


 つらつらと述べたが、平凡ながらも他愛もない夢を持ち、それでも平凡でいることを受容する。

 元木ユキは探さなくてもそこらによく居る平凡な女子高生であった。


 しかし、その状況が始まった瞬間から、元木ユキは平凡さとは遠く離れたところへと転がり落ちていったのだった。


 それは夢の始まり、それは現実の始まり・・・


 カーテンの隙間から光が射し、おもむろに瞼を開けていつもかけているメガネを手探りするがない。

 メガネがどこかに落ちているのかわからないが、とりあえずは時間を確認するため壁かけの時計を確認するのに目を凝らす。


「6時13分・・・まだ寝れる~♪」


 んん・・・・?

 違和感に再度、壁掛けの時計を注視する。

 その時計はいわゆる鳩時計で、憶えてはいないが5歳の頃にサンタにねだってもらった由緒正しきアナログ時計である。

 いつも寝ている私のベッドからでは視力0.1のマイアイでは短針はギリギリだが長針や秒針なんて見れたことなかったはずだ。


「6時14分13秒・・・・・・・これはマズいかも」


 憶えはないが前日にコンタクトを入れたまま寝てしまったか、つけっぱなしであれば瞼や目どうなっているかが心配だ。

そう布団の中で考えをまとめると、のろのろとベッドから這い出て、学習机の上に伏せて置かれた鏡を手 に持つ。


眼は赤くはなっていなかった。


瞼も綺麗なものだった。


が、鏡を視た瞬間に私は驚愕に動きを止めた。


大きな瞳は抜けるような青空の色、頬は薄く赤みが射して、口と鼻は程よく小ぶりで全体とよく調和している。さらにサラサラの銀髪が彩りを添えており、神話か漫画に出るほど綺麗で神秘的なお姫様がいた。


「・・・・・はへぃ!?」


我ながら変な声が出たが、鏡の中の少女は声に合わせて美しいながら目を見開いて少し間抜けな顔をした。

天井をみる・・・特に何の変哲もない蛍光灯が目に入る。

床をみる・・・愛用のスリッパが無残にひっくり返っている。

窓をみる・・・太陽の光を透かす厚手のカーテンの間から見慣れた街並みが見える。

間違いなく私の住む街で、自分の家で自分の部屋だ。

だがそこに居るのは私ではなかったりする。


「え~と、どういうことなのかな、これ・・・」


華奢な指・・・・・私の手はこんなに綺麗じゃなかった。

腕も足もこんなに細くはない。

ついでに背も少し縮んだ気がする。


「・・・・・・どういうことなのこれ」


もう一度つぶやくと、考えてもわからない自分の急激な変化に気が遠くなりポスっと再びベッドに腰を下ろした。

頭を両手で挟むと、サラサラと銀髪が視界に入る。


「夢・・・夢よね!!かつてないほどリアリティのある変な夢だけど・・・寝ればどうにかなるよ!!!」


自分でもよくわからない理論で無理やり納得して、毛布を頭からかぶる。


大混乱の頭で物が考えられなくなり、だんだん眠気が増す・・・


ギシ・ギシ・ギシ・・・・


「!?」


誰かが階段を上がってくる足音がして飛び起きる。

聴きなれたその足音は母のものだ。

はっきり言って母に今の自分が元木ユキであると説明できる気がしない。

というか泣くしかない。


「ど、どうしよ・・・と、とりあえず」


もう一度、しっかりと毛布をかぶり直す。いつもの母ならこんな事をしてもひっぺがされてしまうのが目に見えているが、そうするしかなかった。


トントン


私の部屋の前で足音が止まり、しばらくするとドアをノックする音が部屋に響いた。


「・・・・・・・はい」

「ユキちゃん、起きてる?」

「?・・・うん」


少しの違和感、いつもなら豪快にドアを開け放ち3秒で毛布をはぎに来る母がどこか元気がない。


「開けてもいい?」

「?」


いよいよもってなんだか変だ。あの母が私にわざわざ許可をもらおうとしている。


「・・・・」

「体調は大丈夫?」


戸惑って少し無言でいるとダメだという意思表示と捉えたのか、ドアの前に立つお母さんは入るのを諦めたのか別の話題に変えてきた。


「・・・うん、大丈夫」


なんか、これではまるで私がひきこもりの娘への対応みたいではないか・・・・


「そう・・・・いつも通り朝ごはん、ここに置いておくから、温かいうちに食べてね」


・・・・・って、なにその引きこもりへの対応!?

母が去ってから、廊下に置いてある朝食を茫然と見つめる。


ガチャッ・・・


急に私の隣の部屋のドアが開き、兄が出てきた。


や、やばっ・・・この姿だと不審に・・・


「あっ・・・お早う・・・」


全て遅いが急いで閉めようとする私に兄が挨拶をした。少し遠慮がちな、だけど私と認識して挨拶をした。

驚いてドアを閉めようとする手を止め目を向けると兄は気まずそうに眼を逸らす。


「あ、えっと・・・・おはよう」


とりあえずそう返すと兄のほうが驚いている。

まるで、返ってくるわけはないと思って投げかけた言葉が、不意に返ってきたような反応だ。


「あっ・・・えと、ユキ、調子よさそうだな・・・・あ、俺、出かけなきゃ・・・ゴメン、それじゃまたな」

「うん、いってらっしゃい」

「!!・・・・・・・・・い、いってきます」


どこか茫然とそれだけ言うと兄は何度かこちらを振り返りながら階段をおりて行った。


めちゃめちゃ不審がられている。


これはやばい・・・・何だか知らないがやばいぞ、


 ある日、起きたら美少女で、引きこもりになっていました。





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