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漫才脚本シリーズ

漫才脚本「グルメリポート」

作者: 山田結貴

A……ボケ担当。B……ツッコミ担当。

コンビ名は考えていないので☓☓としました。

   A・B、ステージに上がる。


A「どうも~☓☓です!」


B「よろしくお願いしま~す!」


   A・B、観客に向かって軽く頭を下げる。


A「B君。ちょっと相談があるんだけど」


B「何?」


A「俺さ、芸人っていうのは、この世界で生き残っていくためには漫才やコント以外のことも巧みにこなしていかなきゃいけないと思うのね」


B「まあ。確かに、芸の幅は広いに越したことはないですからね」


A「その中でも特に重要だと思ってるのが、グルメリポート」


B「あれは難しいですよ。食べた料理の美味しさを的確にお茶の間に伝える必要があるから、相当腕が問われますしね」


A「だから俺、将来グルメリポートの仕事が来た時に備えて練習しておきたいんだよね」


B「なるほど。A君の言いたいことがわかってきましたよ」


   B、観客に向かって確認するようにうなずく。


A「俺、今からグルメリポーターをやるから」


B「よしっ。じゃあ……」


A「B君は、それを温かな眼差しで見守って」


B「何でお前を見守らなきゃならないんだ! 普通、ここは俺に何らかの役を頼むところだろ!」


A「(すごく嫌そうに)えー……? 役、やりたいのお?」


B「何故にそこまで不快そうにするかね。俺は君の練習に付き合ってやろうと、善意で申し出ているだけなんですがねえ」


A「なるほど。ではそのありがた迷惑、丁重に受け取るとしましょう」


B「ありがた迷惑なら、受け取らなくて結構なんですけどねえ」


   B、Aのことを睨みつける。

 

   A、Bからの視線を全く気にしない。


A「では、俺はグルメリポーターをやるので」


B「はいはい」


A「B君は適当に、ラーメン屋の店主でもやって下さい」


B「適当に、は余計だよ」


   A・B、それぞれの立ち位置につく。


A「さて、今日は巷で隠れた名店と噂されるラーメン店『孤高のラーメン・時孤龍(じこりゅう)』に来ております。早速、中に入ってみましょう」


   A、「ガラガラガラ」と口で言いながら扉を開ける動作

   をする。


B「はい、いらっしゃいませ!」


A「あの~。すみませんが、店長を呼んできていただけますか?」


B「あの。店長、俺ね? さっきそういう設定で行くって話したばかりだと思うけど?」


A「そうだったけ?」


B「そうだったよ。頼むからちゃんとしてくれ」


A「了解。では、店長。いきなりですが、いくつか質問をしてもよろしいでしょうか」


B「(不機嫌そうに)ええ、まあ。どうぞ」


A「あなたの存在意義って、一体どこにあると思われますか?」


B「質問がヘビー過ぎるわ! ラーメンのことを聞け、ラーメンのことを!」


A「ははあ、ラーメンのことですか。最初からそう言って下さいよ~」


B「普通、言わなくてもわかると思うけどねえ」


A「では、店長。あなたにとって、ラーメンとは?」


B「それは最後にとっておこうか! 番組の終わりに、店長のラーメンに対する思いの語りでしめる。それ、常識!」


A「(爽やかな笑顔で)あははっ。客よりも注文が多い店長さんですね」


B「(どすをきかせて)てめえ、店から叩き出すぞ?」


   A、Bからの視線を全く気にしない。


A「じゃあ、注文に移りますか。あちらにかかってるのがメニューですか?」


   A、壁の方を眺めるように動作する。


   B、その視線に合わせてうなずく。


B「ええ、そうですよ」


A「(少し視線をずらして)では、あそこにかかっている、『孤高のラーメン・時孤龍様へ。とびきりおいちかったでぴ~♡』を一つお願いします」


B「それ、メニューじゃなくてサインだから! この間来た、アイドルの奴ね。何でいきなり視線をずらすかな?」


A「では、店長。おすすめは?」


B「当店のおすすめはですね。やはり、自慢の特濃味噌ラーメンですよ。何せ、食材一つ一つにこだわって作ってますから……」


A「なるほど、なるほど。じゃあ、醤油ラーメン一つ」


B「お前は何のためにおすすめを尋ねたんだ? ここは普通、店長が勧めているものを頼むのがセオリーではないですかねえ?」


A「(胸を張りながら)チャーハンセットを頼まなかっただけありがたく思いなさい」


B「何でありがたく思わなきゃいけないんだよ! とにかく、味噌ラーメンを頼め。店長が勧めてんだから、何が何でも頼め」


A「ほほう。つまり醤油ラーメンは、テレビに出す自信がないくらいまずいということでしょうか?」


B「醤油も美味いの。でも、特に勧めたいのが味噌なの。いい加減理解してくれ」


A「でもそれって、やっぱり味噌より醤油の方がまず……」


B「醤油がまずいんじゃなくて、味噌がより美味しいんだよ! さっきから食ってもいないものをまずいまずい言いやがって。営業妨害も甚だしいだろうが」


A「わかりました。今度から、きちんと食べてからまずいと言わせていただきます」


B「そういう問題じゃねえんだよ! まあいい。その減らず口、今に黙らせてやるからな」


   B、怒り狂った表情でラーメンを作る動作をする。

   手つきや動作は、かなり乱暴。


A「(のんきに)ずいぶんと気性の激しい方でいらっしゃる」


B「お前のせいだ、馬鹿タレが」


   B、気を取り直してAの前にラーメンを運ぶ動作をす

   る。


B「こちらが、当店自慢の特濃味噌ラーメンです」


   A、目を輝かせる。


A「うっわあ、いい匂いですね。食欲が若干そそられます!」


B「若干は、余計ね」


A「見て下さい、この深みのあるスープ。まるで、氾濫した川のように濁っております!」


B「例えがおかしいだろうが! 何だよ、川が濁ったようなスープって。誰が飲みたいか、んなもん」


A「さらに見て下さい、この麺。まるでしなびたゴムのようにちぢれていて」


B「失礼過ぎるだろ!」


A「これが噂の、殺人ラーメンですか~」


B「どんな噂が流れてんだよ!」


A「では、まずは大事をとって店長。毒見の方を一口」


B「いい加減にしろ! お前さあ、もう全然駄目じゃん。全くグルメリポートになってねえよ」


A「うーん。じゃあ、やっぱり漫才をとことん極めて生き残るしかないか。B君、これからも頼むね」


B「じゃかあしいわ。もういいよ」


A・B「どうも、ありがとうございました~!」

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