第一話 上
第一話
人は、常に誰かと一緒じゃなければいけないらしい。
自分の席を見ながら、宮本ヒナタは思った。
「あ、あの…そこ、私の席なんですけどぉ…」
クラスメイト達はそんなヒナタに見向きもせず、延々とおしゃべりを続けている。かれこれ五分ほどそのような状態なのだが、まるで存在自体が認識されていないように思えてきてしまう。
「まぁ、認識してないんだろうけどね…」
そんなことを呟きながら、クラスメイトの背後から手を伸ばし、必要なものを取り出す。教科書の角が体に引っかかると、そのクラスメイトは無言で腰を軽くひねり、つかえないように取り出させてくれた。
全く、そんなちょっとした気遣いはいらないから、早く私の席からどいてくれればいいのに。
昼休み、トイレから戻ってくると、ヒナタの席はクラスメイトの手によって占拠されていた。
そのクラスメイトは、クラスの中でもかなり目立つグループで、授業中でも関係なくおしゃべりを続ける。
服装もいかにもギャル(?)という感じで、髪の色を抜いたりしてよく叱られている。無論、占拠などといってもただ席に勝手に座られていたというだけなのだが。
「気づいてるんだったらどいてよ…」
自分にしか聞き取れないほどの大きさで呟く。
ヒナタはこのクラスに友達というものがいない。このクラスだけにとどまらず、この学校、町にもいない。けれど、決して話し相手がいないとか、一人ぼっちだとか、そういうものでもない。ただ単に、ヒナタが心から友達と思える人間が居ないのだ。
友情だとか、好敵手だとか、そういうものはいらない。
ただ、平穏であればいい。
そう思っていた。その考えは今でも変わらない。
今、ヒナタの席に座っているクラスメイトも、ただ「クラスメイト」という存在なだけであって「友達」ではない。
例えその「クラスメイト」が女だろうが男だろうがオカマだろうが、「クラスメイト」という枠からは絶対に出てこられないのだ。ならば「クラスメイト」という存在があろうが無かろうが大した差にはならない。
いくらでも代わりがきく。実際にクラス替えで何度も替わっているのだ。ヒナタを無視しているあたりから、あっちもそういうことなのだろう。その方がいい。楽だ。
故に名前も知らない。いや、知ってはいるのだが覚えていない。そんなことを覚えているぐらいなら、英単語でも覚えていた方が実に有意義だと思う。
話しかけるときが来たら、その時にまた思い出せばいい。
予冷が鳴ると、クラスメイト達は自分の席へとしぶしぶ帰って行った。仕方なく、そのクラスメイトの手(否、尻)によって暖められていた椅子に座り、一息つく。
その後は、いつも通りに授業を受け、いつも通りに掃除をして、いつも通り帰り
の会なんていうふざけたものにもちゃんと付き合って、早々と帰宅した(帰宅部)。いつも通り。全ていつもと同じ。